ガスマスク
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使用者がガスマスクを常時携帯する必要がなく、施設や乗り物などに備え付けておけばよい場合には、性能に余裕がある隔離式にはなお一定の需要がある。

吸収しきれないほど高い濃度の有毒ガスに汚染された環境や酸欠(酸素濃度が18%以下)の環境においては使用することができない。このような場合には供給式マスクを使用する必要がある。吸収缶が大型であるほど着用者の疲労は大きくなるので、作業雰囲気に合わせて適切に選ばなければならない。

吸収缶の種類には、有機ガス、ハロゲン、青酸、硫化水素、アンモニアなどの種類があり、吸収缶だけを取り替えることもできる。種類の合わないガスには効果が無いので、あらかじめ作業場所の雰囲気を確認しておかなければならない。

一般的には他の呼吸用保護具よりも軽量・安価であるため、広く用いられており入手容易である。
防塵マスク

固体の微粒子が浮遊している空気を粒子フィルターを通すことによって微粒子を除去して無害化するガスマスクである。防毒マスクに粉塵用フィルターを組み合わせて両方の役目を同時に果たすタイプのものもある。

医療用マスクとして流通しているマスクは、細菌ウイルスによって汚染された空気をフィルターを通すことによって無害化することを狙った、一種の防塵マスクである。医療用マスクは、SARSの流行がマスメディアの注目を集めたことから、近年需要が高まっている。特に一般でも手に入りやすいN95マスクは人気があるが、実質的にはDS2規格相当品であり、性能は産業用の防塵マスク(半面マスク)と同等である。

自給式加圧服消防士ボンベ

供給式
自給式

空気ボンベがなく、酸素発生缶(化学反応により酸素を発生させる器具)によって清浄な空気をマスクに供給する装備である。酸欠雰囲気や高い濃度のガス中でも使用でき、行動範囲に制限が無いが、装備が重く、空気供給源が有限なので作業時間に制限があるなど欠点も多い。ガスを通さない材質の全身気密スーツにボンベを組み合わせた自給式加圧服というものもある。またこれらは生物兵器の防護にも使用される。
送気式

コンプレッサーで発生させた圧縮空気を、チューブを通してマスクに送る方式である。作業時間に制限が無いが、行動範囲はチューブの取りまわせる範囲に限られる。ガスを通さない材質の全身気密スーツにチューブを組み合わせたものもあり、これをエアラインスーツと言う。軽量な上、涼しいので着用感も良好で、スーツの内側が陽圧になっているために万一スーツにリークがあっても外気の侵入を防ぐことができ、激しく動かなければ汚染されることは無い。
機能検査

産業でガスマスクを使用する場合、JISに定める方法によって定期的に機能を検査し合格したもの以外使用してはならない。防塵マスクにあっては、マスク着用者を塩化ナトリウムの粒子を放出した雰囲気中に一定時間置き、面体の内部と外部の塩化ナトリウム濃度を比較する方法による。昭和63年労働省告示第19号に定める防塵マスクの規格は次の通り:

DS1,RS1……粒径0.06?0.1μmの塩化ナトリウムの捕集効率80%以上

DS2,RS2……同、95%以上

DS3,RS3……同、99.9%以上

DL1,RL1……粒径分布0.15?0.25μmのフタル酸ジオクチルの捕集効率80%以上

DL2,RL2……同、95%以上

DL3,RL3……同、99.9%以上

その他

第二次世界大戦中には大規模な化学兵器戦が行われなかったが、各個人ないし部隊にかならず装備されていたため、本来の用途とは違う使い方もされた。

キャニスターのフィルターを浄水器の代わりにして飲料水を濾過する。ただし、フィルターが濡れているとガスマスクとして使用できないため、規則で禁止されていた。

顔面を凍傷から守る防寒具。

ガスマスクを携行する布または金属製のケースを、雑嚢代わりに使う。
訓練展示において、ガスマスクを着用してパンツァーシュレックを運用するドイツ軍兵士。吸収缶は外されている。

ドイツ軍において対戦車ロケット火器パンツァーシュレック発射時に射手がロケットの排気による顔面火傷を防ぐ為にガスマスクを装着していたという。後に、防御用の防楯が追加されてガスマスク装着の必要は無くなった。アメリカ軍でも同様に、携行式対戦車ロケット発射筒、いわゆる「バズーカ」の初期モデル発射時において、射手はガスマスクを着用していた。こちらも、その後の型より砲口に吹き返しがつけられたため、ガスマスクの着用は必須ではなくなった。

戦後になると、旧ソ連軍の自動車化狙撃兵機械化歩兵)がガスマスクを呼吸器として流用していた。演習で戦闘状況に入ると装甲兵員輸送車のハッチがすべて閉められるため、ベンチレーターの有無にかかわらず、車内の換気が極端に悪くなる。そこで乗車した兵士たちは隔離式のガスマスクを装着し、吸収缶を外すとホースの先端を銃眼から外に突き出して、少しでも新鮮な外気を吸おうとしていた。

このほか、現代戦や近未来戦を描いたコミックアニメゲーム[注釈 4]には、一種の「記号」としてガスマスクを装着した兵士が登場する作品も多い。これは大勢が同じ装備を装着することによる軍事的統一感やマスク装着時の非人間的な不気味さなどを演出するためでもあるが、モブキャラクターの顔つきや表情の簡略化という作画上の意味もあるとされる。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ ただし、電源を必要とするために、重量、コスト、活動時間などに制限を受けることから、採用しているのは対爆スーツなどの極一部のみである。
^ 特定の種類・濃度の試験ガスに対する破過時間を示すグラフ。
^ 試験ガスを基準に、既知のガスにそれぞれ係数をかけて破過曲線図に当てはめること。
^ ガンシューティングゲームFPSTPSなど

出典
関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、ガスマスクに関連するメディアがあります。

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