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胃は中腸に位置しており血液を処理している[2]。中腸と後腸の中間にはマルピーギ管と呼ばれる、老廃物を尿として排出する器官がある[2]
生態
飛行速度
重量はわずか2?2.5
mg、飛行速度は約1.5?2.5km/hほどであり、通常でも1秒間に520回以上羽ばたくが、吸血後は体が重くなるため大幅に羽ばたく回数が増え、それに伴い飛行速度は落ちる。カの飛翔距離やそれに起因する行動圏の広さは種によって様々である。長崎県における調査によるとコガタアカイエカの通常の1日の行動範囲は1km程度であるが、中には1日で5.1kmの距離を飛ぶ個体もあり、また同種が潮岬南方500kmの位置から採集されている。これは風速を考慮すると高知県から24時間、あるいは静岡県から19時間で到達したと考えられている。その一方で、タイ王国バンコクにおけるネッタイシマカの調査では、24時間で37mしか移動していないことが記録されている。JICAの公表する資料によれば、ハマダラカのうちタンザニアダルエスサラーム市(最大都市)とタンガ市(北部の港湾都市)で流行している土着マラリアの主要な媒介蚊 Anopheles gambiae(真水で棲息)と An. merus(塩水で棲息)の成虫の飛翔範囲は幼虫棲息地を中心に数百mであるという[3]。また同じハマダラカ類で、一日の飛翔距離は An. funestus で800 m 程度、An. pharoensis で9kmであることが記録されている。
羽音
蚊の羽音は400Hz?900Hz程度であり、種類によって異なる。羽音を利用した誘殺駆除や忌避グッズもあるが、羽音の10倍もの倍音を持つ3?6kHzの音を発する忌避グッズもある。こういった超音波や音波で蚊を避けるグッズは、2007年11月20日、日本の公正取引委員会により、公的機関での実験の結果「効果が認められない」とされ、景品表示法違反による排除命令が出された[4]
餌・吸血
口吻と餌
全てのカはオスもメスも長い
口吻を持つ。この口吻は円筒状に巻いた上唇が食物を吸収する管となり、その下面には唾液を送り込む管となっている下咽頭、左右には針状の大顎、小顎が添えられている。そしてその全体を樋状になった下唇が鞘となって保護している。吸血対象動物の皮膚に刺針を差し込む時は、下唇を外部で「く」の字に折り曲げ、吸血後、刺針を再び被う。通常の餌は、植物の蜜や果汁などの糖分を含む液体である。
吸血
吸血に際しては下唇以外の部分が、小顎先端の鋸歯で切り開かれた傷に侵入していき、毛細血管を探り当てる。メスはを発達させるために必要な、タンパク質を得るために吸血する。吸血の対象はヒトを含む哺乳類鳥類だが、爬虫類両生類魚類から吸血する種類もある。オスはメスと違い、血を吸うことはない。またオオカ亜科の場合、メスであっても吸血を行わない。吸血の際は皮膚に口吻を突き刺し、吸血を容易にする様々なタンパク質などの生理活性物質を含む唾液を注入した後に吸血に入る。この唾液により血小板凝固反応は妨げられる。この抗凝固作用がないと血液は体内で固まり、蚊自身が死んでしまう。吸血を行う事で体内の卵巣の成熟が開始され[5]、卵の発達にも繋がる。多くの蚊は気温が15以上になると吸血を始めると言われており、26度から31度くらいで最も盛んに吸血活動を行う。通常の活動期間内であっても気温が15度以下に下がったり、35度を越えたりするようなことがあると、野外では物陰や落ち葉の下などでじっとして活動しなくなる。
刺された痒み
また、この唾液は人体にアレルギー反応を引き起こし、その結果として血管拡張などにより痒みを生ずる。唾液は本来、吸引した血とともに蚊の体内に戻される。血液を吸引し終われば、刺された箇所の痒みは、唾液が戻されなかった場合よりは軽度になるとよく言われているものの、実際には、吸っている間に唾液も血と一緒に流れていくので必ずしも軽度になるとは言い切れない[6]。また、何らかの理由で吸引を中断し飛び立った場合、唾液を刺された体内に残したままであるため、痒みが残る。中和剤は存在せず、抗ヒスタミン薬リドカインを含む軟膏の塗布により抑えることになる。
生活環幼虫(ボウフラ)

一生のうちで、幼虫成虫完全変態する。卵から蛹までの期間は種や温度によって変わる。イエカの一種 Culex tarsalis は、20℃の環境では14日で生活環を完成させる。25℃の環境では10日である。

卵はヤブカ類では水際に、オオカ類やハマダラカ類では水面にばらばらに産み付けるが、イエカ類では水面に卵舟と呼ばれるボート状の卵塊を浮かべ、数日のうちに孵化する。なお、産み付けられた卵や幼虫は産卵誘因フェロモンを放出しており、卵や幼虫がいる水ほど他の蚊が産卵しやすい。特定の細菌も蚊の産卵誘因物質を産生している。
幼虫 (ボウフラ)
幼虫は全身を使ってを振るような泳ぎをすることから、古名の「棒振り」「棒振り虫」が訛ってボウフラ(孑?、孑孑[7])となった。地方によっては「ボウフリ」の呼称が残る。ボウフラは定期的に水面に浮上して空気呼吸をしつつ、水中や水底で摂食活動を行う。呼吸管の近くにあるは呼吸のためではなく、塩分の調節に使われると考えられている。生息場所としては、主に流れのない汚れたなどに生息するが、ハマダラカの一部などで知られるようにきれいな水を好む種や、それ以外にも水たまりや水の入った容器の中など、わずかな水場でも生息する種がいる。トウゴウヤブカにみられるように、海水が混じるため海浜部にある岩礁の窪みの、しばしば高い塩分濃度になる水たまりにも生息するものも知られる。また、水田も蚊の生息地としては重要な場である。ボウフラは環境の変化には弱く、水質が変化したり、水がなくなったりすると死滅しやすい。のような流れがあると生活できないものがいる一方、渓流のよどみを主な生活場所とするものもいる。特殊な環境で成長する種類もおり、樹木着生したアナナス類のの間にたまった水、食虫植物サラセニアの捕虫器内の水、波打際のカニの巣穴内などで成長する種類もいる。ボウフラは空気呼吸するのに尾端にある呼吸管を使用するが、ハマダラカ類では呼吸管がないため、体を水面に平行に浮かべて、背面の気門を直接水面に接して呼吸する。幼虫のほとんどは水中のデトリタスや細菌類などを食べ、ハマダラカ類では水面に吸着した微生物、イエカ類では水中に浮遊する微生物や細かいデトリタス粒子、ヤブカ類では水底に沈んだ粗大なデトリタス塊を摂食する傾向が強い。オオカ亜科の幼虫は他の蚊の幼虫を捕食する。

はオニボウフラ[1](鬼孑?)と呼ばれる。から伸びた呼吸管がのように見えることに由来する。他の昆虫の蛹と同じく餌はとらないが、蛹としては珍しく幼虫と同じくらい活発に動く。呼吸は胸の「ホルン」と呼ばれる器官を使って行う。
人間との関わり人間を殺している生物一覧(英語版)。2016年のビル・ゲイツ財団による報告によると最も人間を殺している生物1位とされた[8]
感染症の媒介者詳細は「蚊媒介感染症(英語版)」を参照

カは人類にとって最も有害な害虫である。メスが人体の血液を吸い取って痒みを生じさせる以外に、感染症の有力な媒介者ともなる。カによって媒介される病気による死者は1年間に75万人にもおよび、2位の人間(47万5000人)を抑えて「地球上でもっとも人類を殺害する生物」となっている[9]マラリアなどの原生動物病原体フィラリアなどの線虫病原体、黄熱病デング熱脳炎ウエストナイル熱チクングニア熱リフトバレー熱などのウイルス病原体を媒介する。日本を含む東南アジアでは、主にコガタアカイエカが日本脳炎を媒介する。地球温暖化の影響で範囲が広くなっている問題もある。カによる病気の中で最も罹患者及び死者の多い病気はマラリアであり、2015年には2億1400万人が罹患して43万8000人が死亡した[10]。こうしたカによる感染症はカの多く生息する熱帯地方に発生するものが多く、マラリアをはじめ黄熱病やデング熱などはほぼ熱帯特有の病気となっている。また、カが媒介する伝染病は特定の種類のカによって媒介されることが多く、マラリアはハマダラカ、黄熱病やデング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカ、ウエストナイル熱はイエカ、ヤブカ、ハマダラカによって媒介される[11]


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