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巷では「DEET不使用」をアピールした忌避剤が販売されているため、DEETがさも危険であるかのように見受けられるが、DEET自体は危険ではなく、用法通りに使用すれば、安全である[29]。とくに、海外渡航への感染症対策にDEET配合忌避剤の使用が推奨されている[30]
BT
土壌微生物Bacillus thuringiensis の islaelensis 株は、蚊に対して殺虫効果を示すが、価格が高く、利用できる場面も限られているため、今後の応用が期待されている。
DDT
環境や人体への影響が大きい薬剤である。リスクを考慮してもなお、南アジアなどマラリアによる被害が遥かに大きい地域で、限定的に用いられる。
代表的な駆除器具

かつて日本においては、ヨモギの葉、カヤの木、スギマツの青葉などを火にくべて、燻したで蚊を追い払う蚊遣り火という風習が広く行われていた。また、こうした蚊を火によって追い払う道具は蚊遣り具、または蚊火とよばれ、全国的に使用されており、大正時代まではこれらの風習が残っていた。

蚊の駆除器具として使用されているものとしては、蚊取り線香がある。ただしその歴史自体は非常に新しいものであり、和歌山県出身の上山英一郎線香に除虫菊の粉末を練り込んだものを1890年明治23年)に開発したのが始まりである。蚊取線香の殺虫能力は高く、大正時代末には、蚊遣り火や蚊遣り具に取って代わった。ただし蚊取線香も火を用いることには変わりなく、安全性を高めの処理を容易にするために、蚊遣器と呼ばれる陶器製の容器(ブタをかたどった物が特に有名)に入れて使用することも多かった。

やがて1963年には、アレスリンを電熱によって揮発させ、殺虫効果を得る電気蚊取が開発され、煙や灰が出ないことから、1970年代には普及し、従来の蚊取線香に取って代わった。また、同時期にはスプレー型の殺虫剤や防虫剤も開発され、これも蚊の対策として広く使用されるようになった。

上記のような蚊の駆除器具の代表的な企業としては、上山の興した金鳥(大日本除虫菊)や、アース製薬フマキラーなどがある。
生物学的な防除
天敵用法
ボウフラを捕食するゲンゴロウ類の幼虫クモなど、 蚊を捕食する動物(天敵)で駆除を行う。ヒトスジシマカなどの昼行性の蚊にはトンボが有効。トンボの幼虫(ヤゴ)も水中でボウフラを捕食する。カエル、その幼生であるオタマジャクシも有効な天敵となる。ボウフラは肉食性の水生昆虫や小型淡水魚にとって格好の餌であることから、自然保護地域では、メダカカダヤシ(日本では特定外来生物に指定)とウナギの稚魚などによって蚊の駆除が行われている。屋外の池などにはフナなどを生息させて捕食させる。また、飼育下のメダカもボウフラより大きなヒメダカやクロメダカであれば、ボウフラ退治に有効である[31]
遺伝子組み換え蚊の利用
デング熱などへの対策として 遺伝子の組み換えによって、次の世代が成虫になる前に死ぬネッタイシマカを作り出す事に成功している。これらを自然界に放つ実験も2009年から行われているが、これには環境への影響を懸念する声もある[32]。事実ブラジルでは遺伝子組み換えカと野生カが交配して強化されたという説もある。[33]
感染病の利用
蚊を殺す伝染病を感染させることで駆除を行うことができる[要出典]。
物理的な防除
物理的忌避枠から吊るされた蚊帳

蚊の侵入を防ぎながら空気の通りを妨げない物として、窓に網戸、屋内で蚊帳がある。いずれも目が1mm程度の細かな網を蚊の侵入方向に張り巡らせて侵入を防ぐものであり、人間の寝所等の周りに吊るして防御するものが蚊帳、それを推し進めて窓に網を張り家全体への蚊の侵入を防ぐものが網戸である。この成り立ちからも推測できる通り、使用の歴史としては蚊帳の方がはるかに古く、古代から世界中で使用されていた。日本においても中国から伝来し、既に江戸時代には一般庶民の日用品となっていた。その後、昭和時代後期に入りガラス窓とそれを乗せるサッシが普及して気密性が大幅に向上し、蚊の侵入する隙間が窓以外なくなったことから窓での蚊の防御に意味が生まれ、網戸が誕生して急速に普及した。現代においては網戸は、ほぼ日本中の家で採用されていると思われるが、蚊帳は現代の日本ではあまり用いられていない。ただし日本以外の国々、とくに熱帯地域の諸国においては蚊帳は現在でも非常によく使用される。蚊帳の使用は熱帯地域における伝染病の感染を減少させる有効な手段とされ、特に2000年頃に5年間ほど効果が持続する[34]ピレスロイド系の殺虫剤を添加した蚊帳が開発されると、世界保健機関(WHO)や多くのNPOがこれを採用して無償配布や援助を行うようになった。

また蚊は風速1m以上の風が吹く環境下では飛行できない(横風を受けて飛ばされてしまう。ヒトに取り付く事も出来ない)ため、扇風機の風を当てる事でも防除はできる。

蚊の駆除を目的としたものには、紫外線で蚊を誘引し、通電した格子に触れさせ感電死させる電気捕虫機[35](電撃殺虫器[36])があり、同様に紫外線や二酸化炭素で誘引した蚊を風力で捕獲する機器も登場している[37]

侵入した蚊を駆除する方法としては、電気の流れるラケット状の器具「電気蠅叩き」が登場している。
物理的予防

ボウフラの生息場所となる「水たまり」を、可能な限り作らないことが重要である。それが困難な場合には以下の方法がある。

水面を
で覆う事でボウフラを窒息死させる事ができ、アメリカ合衆国パナマ運河を建設した際にもこの手法でマラリアの発生が抑えられている[38]

エアレーションで水面を揺らす事でもボウフラを窒息死させる事ができる[39]。これを応用して水面に浮かべる小型機器も考案されている[40]

水にファイバー、繊維状のものを入れることで、ボウフラの9割が羽化せずに死滅するとの実験結果もある[41]

簡単な加工を施したペットボトルを水源に設置してボウフラを閉じ込める罠が考案されている[42][43]

また、水源から離れた場所に設置し、敢えて蚊に産卵させた上で羽化した成虫を閉じ込めるも商品化されている[44]。同じような罠をペットボトルなどで作成することもできる[45]
蚊の生態系における役割
水の浄化

ボウフラは水中の有機物を分解し、バクテリアを食して排泄物を出す。微生物も同じように有機物を分解し排泄物を出すが、呼吸を水中で行うため、バクテリアが増えすぎると水中の酸素が少なくなり生物が住めなくなってしまう場合がある。ボウフラはバクテリアを食べ、呼吸は空気中から行うことで、水環境を浄化する作用がある[46][47]
受粉の手助けカカオの花

蚊は吸血だけでなく花の蜜を吸って生きており、結果として植物の受粉を手助けしている。なかでも、チョコレートの原料であるカカオは、が非常に小さく複雑な構造であるため、3ミリメートル未満の送粉者を必要とする。蚊の一種であるヌカカ[注釈 2][48]は、カカオの貴重な送粉者である。もしも地球上から蚊が全滅してしまったと仮定すると、カカオの生育に大きな悪影響を及ぼし、人々はチョコレートやココアを嗜むことが不可能となる[49][50]
生態系の維持

ボウフラは、数百種類にわたる魚に捕食されており、もしもボウフラがいなくなると、それらのエサが失われることから、生態系の秩序が乱れ、思いもよらぬ影響が及ぼされることが懸念される。また、トンボアリクモコオロギトカゲカエルなどにも一定の影響を及ぼすと考えられている[49]


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