カは人類にとって最も有害な害虫である。メスが人体の血液を吸い取って痒みを生じさせる以外に、感染症の有力な媒介者ともなる。カによって媒介される病気による死者は1年間に75万人にもおよび、2位の人間(47万5000人)を抑えて「地球上でもっとも人類を殺害する生物」となっている[9]。マラリアなどの原生動物病原体、フィラリアなどの線虫病原体、黄熱病、デング熱、脳炎、ウエストナイル熱、チクングニア熱、リフトバレー熱などのウイルス病原体を媒介する。日本を含む東南アジアでは、主にコガタアカイエカが日本脳炎を媒介する。地球温暖化の影響で範囲が広くなっている問題もある。カによる病気の中で最も罹患者及び死者の多い病気はマラリアであり、2015年には2億1400万人が罹患して43万8000人が死亡した[10]。こうしたカによる感染症はカの多く生息する熱帯地方に発生するものが多く、マラリアをはじめ黄熱病やデング熱などはほぼ熱帯特有の病気となっている。また、カが媒介する伝染病は特定の種類のカによって媒介されることが多く、マラリアはハマダラカ、黄熱病やデング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカ、ウエストナイル熱はイエカ、ヤブカ、ハマダラカによって媒介される[11]。
蚊によって媒介される感染症は、感染源によって3つのタイプに分かれる。家畜や野生動物などからしか人間に感染しないもの、家畜や野生動物および感染した人間から人間に感染するもの、そして人間の間でしか感染しないものである。最初のタイプは日本脳炎などが該当し、野生動物(日本脳炎の場合は水鳥)や家畜(日本脳炎の場合はブタ)から吸血した蚊がウイルスを保持するようになり、その蚊が人間から吸血することでその人間に感染する。このタイプの場合、感染した人間から他の人間や動物には感染しない。2番目のタイプには黄熱病やデング熱などが該当し、野生動物(黄熱病やデング熱の場合はサル)およびそれらに感染した人間から吸血した蚊がウイルスを保持するようになり、その蚊が別の人間を吸血することでその人間に感染する。3番目のタイプにはマラリアなどが該当するが、これらの病原菌は動物は保持しておらず、感染した人間から蚊が吸血することによってのみ病原体が広まる。このため、周囲にマラリア感染者がまったく存在しない場合は、マラリアに感染する可能性はない。一方前二者のタイプにおいては感染経路において人は一部のみ、または全く関与していないので、感染者がいなくとも流行が起きることはありうる[12]。 深夜の3?5時あたりでも活動しており、刺された痛み(痒み)や羽音で睡眠を阻害される事もあり、日常生活に悪影響を及ぼす面でも忌み嫌われている。 俳句では「蚊」「孑孑(ボウフラ)」ともに夏の季語とされる[19][20]。
不快害虫
吸血宿主選択性(蚊に刺されやすい人、刺されにくい人)
血液型
よく刺されやすい血液型と、刺されにくい血液型があると言われる。一般的には、O型が刺されやすく、A型が刺されにくいと言われている。これに関して検証した事例は世界的に見てもほとんど無いが、富山医科薬科大学で研究が行われ、論文が発表された[13]。しかし、血液型性格分類でされる批判と同じく、数ある血液型の中で特別ABO式を基準にする科学的根拠はなく、蚊の吸血行動に影響を与えそうな血液型由来の物質も、現在のところ知られていない。
二酸化炭素・温度
蚊は二酸化炭素の密度が高いところへ、周りより温度が高いところへ向かう習性がある。体温、におい、周りとの二酸化炭素の密度の違いなどで血を吸う相手を探している。そのため体温が高く、呼吸回数が多い、つまり新陳代謝が激しい人は特に刺されやすい。生物の呼吸や代謝以外に、刈払機などの内燃機関の排気ガスにも寄ってくる。普段は刺されにくい人でも、新陳代謝量が増える運動をした後や、ビールを飲んだ後は刺されやすくなる。また、足のにおいを好み、足の方に集中する。吸血宿主である動物が呼気中に排出する炭酸ガス量は、ニワトリは25ml/min、ヒトは250ml/min、ウシ・ウマなどの大型家畜は2,500ml/minであり、炭酸ガス量に対する複数の種類の蚊の反応と、これらの動物への蚊の嗜好性がよく一致することから、関連性があるといわれている[14]。
湿度
蚊は湿度にも反応する。例えば汗をかいて、それが蒸発すると蚊が反応し、刺されやすくなる。したがって、汗かきの人は刺されやすい。汗の中のL(+)-乳酸が誘引物質として認められている[14]。
肌・服の色
黒色の服は熱を吸収しやすいため、黒い服を着ていると刺されやすくなる。白色の服は熱を吸収しにくいので、刺されにくくなる。また肌の色についても、インド人、ビルマ人、中国人(華人)の混住するミャンマーではインド人が最も蚊による感染症リスクが高く、体色の違いとともに臭いが関連していると予想されている[14]。
羽音の可聴音
成人(25?30歳以上)になると可聴音の範囲が徐々に狭まり、蚊が出す高音域の羽音(およそ17kHzの低周波音。「モスキート音」と呼ばれる)を聞き取ること(“キーン” “フーン”という擬音で形容される)が困難となり接近しているのがわからず刺されやすくなる。
性別
男性の方が刺されやすい。これは発汗による水分蒸散の量が関連していると考えられる。50人の男性の平均刺咬数は50人の女性のそれより大きいことが実験されている[14]。
性ホルモン
月経と関連して、平均刺咬数が多く吸血誘引性つまり刺されやすさに周期性を認めることができることが実験されている[14]。
その他の誘引物質
一部の短鎖脂肪酸[14]、含硫アミノ酸[14]、アンモニア[15]、1-オクテン-3-オール[16][17]、その他の体臭[18]
文化