[Wikipedia|▼Menu]
なお、産み付けられた卵や幼虫は産卵誘因フェロモンを放出しており、卵や幼虫がいる水ほど他の蚊が産卵しやすい。特定の細菌も蚊の産卵誘因物質を産生している。
幼虫 (ボウフラ)
幼虫は全身を使ってを振るような泳ぎをすることから、古名の「棒振り」「棒振り虫」が訛ってボウフラ(孑?、孑孑[7])となった。地方によっては「ボウフリ」の呼称が残る。ボウフラは定期的に水面に浮上して空気呼吸をしつつ、水中や水底で摂食活動を行う。呼吸管の近くにあるは呼吸のためではなく、塩分の調節に使われると考えられている。生息場所としては、主に流れのない汚れたなどに生息するが、ハマダラカの一部などで知られるようにきれいな水を好む種や、それ以外にも水たまりや水の入った容器の中など、わずかな水場でも生息する種がいる。トウゴウヤブカにみられるように、海水が混じるため海浜部にある岩礁の窪みの、しばしば高い塩分濃度になる水たまりにも生息するものも知られる。また、水田も蚊の生息地としては重要な場である。ボウフラは環境の変化には弱く、水質が変化したり、水がなくなったりすると死滅しやすい。のような流れがあると生活できないものがいる一方、渓流のよどみを主な生活場所とするものもいる。特殊な環境で成長する種類もおり、樹木着生したアナナス類のの間にたまった水、食虫植物サラセニアの捕虫器内の水、波打際のカニの巣穴内などで成長する種類もいる。ボウフラは空気呼吸するのに尾端にある呼吸管を使用するが、ハマダラカ類では呼吸管がないため、体を水面に平行に浮かべて、背面の気門を直接水面に接して呼吸する。幼虫のほとんどは水中のデトリタスや細菌類などを食べ、ハマダラカ類では水面に吸着した微生物、イエカ類では水中に浮遊する微生物や細かいデトリタス粒子、ヤブカ類では水底に沈んだ粗大なデトリタス塊を摂食する傾向が強い。オオカ亜科の幼虫は他の蚊の幼虫を捕食する。

はオニボウフラ[1](鬼孑?)と呼ばれる。から伸びた呼吸管がのように見えることに由来する。他の昆虫の蛹と同じく餌はとらないが、蛹としては珍しく幼虫と同じくらい活発に動く。呼吸は胸の「ホルン」と呼ばれる器官を使って行う。
人間との関わり人間を殺している生物一覧(英語版)。2016年のビル・ゲイツ財団による報告によると最も人間を殺している生物1位とされた[8]
感染症の媒介者詳細は「蚊媒介感染症(英語版)」を参照

カは人類にとって最も有害な害虫である。メスが人体の血液を吸い取って痒みを生じさせる以外に、感染症の有力な媒介者ともなる。カによって媒介される病気による死者は1年間に75万人にもおよび、2位の人間(47万5000人)を抑えて「地球上でもっとも人類を殺害する生物」となっている[9]マラリアなどの原生動物病原体フィラリアなどの線虫病原体、黄熱病デング熱脳炎ウエストナイル熱チクングニア熱リフトバレー熱などのウイルス病原体を媒介する。日本を含む東南アジアでは、主にコガタアカイエカが日本脳炎を媒介する。地球温暖化の影響で範囲が広くなっている問題もある。カによる病気の中で最も罹患者及び死者の多い病気はマラリアであり、2015年には2億1400万人が罹患して43万8000人が死亡した[10]。こうしたカによる感染症はカの多く生息する熱帯地方に発生するものが多く、マラリアをはじめ黄熱病やデング熱などはほぼ熱帯特有の病気となっている。また、カが媒介する伝染病は特定の種類のカによって媒介されることが多く、マラリアはハマダラカ、黄熱病やデング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカ、ウエストナイル熱はイエカ、ヤブカ、ハマダラカによって媒介される[11]

蚊によって媒介される感染症は、感染源によって3つのタイプに分かれる。家畜や野生動物などからしか人間に感染しないもの、家畜や野生動物および感染した人間から人間に感染するもの、そして人間の間でしか感染しないものである。最初のタイプは日本脳炎などが該当し、野生動物(日本脳炎の場合は水鳥)や家畜(日本脳炎の場合はブタ)から吸血した蚊がウイルスを保持するようになり、その蚊が人間から吸血することでその人間に感染する。このタイプの場合、感染した人間から他の人間や動物には感染しない。2番目のタイプには黄熱病やデング熱などが該当し、野生動物(黄熱病やデング熱の場合はサル)およびそれらに感染した人間から吸血した蚊がウイルスを保持するようになり、その蚊が別の人間を吸血することでその人間に感染する。3番目のタイプにはマラリアなどが該当するが、これらの病原菌は動物は保持しておらず、感染した人間から蚊が吸血することによってのみ病原体が広まる。このため、周囲にマラリア感染者がまったく存在しない場合は、マラリアに感染する可能性はない。一方前二者のタイプにおいては感染経路において人は一部のみ、または全く関与していないので、感染者がいなくとも流行が起きることはありうる[12]
不快害虫

深夜の3?5時あたりでも活動しており、刺された痛み(痒み)や羽音で睡眠を阻害される事もあり、日常生活に悪影響を及ぼす面でも忌み嫌われている。
吸血宿主選択性(蚊に刺されやすい人、刺されにくい人)
血液型
よく刺されやすい
血液型と、刺されにくい血液型があると言われる。一般的には、O型が刺されやすく、A型が刺されにくいと言われている。これに関して検証した事例は世界的に見てもほとんど無いが、富山医科薬科大学で研究が行われ、論文が発表された[13]。しかし、血液型性格分類でされる批判と同じく、数ある血液型の中で特別ABO式を基準にする科学的根拠はなく、蚊の吸血行動に影響を与えそうな血液型由来の物質も、現在のところ知られていない。
二酸化炭素・温度
蚊は二酸化炭素の密度が高いところへ、周りより温度が高いところへ向かう習性がある。体温におい、周りとの二酸化炭素の密度の違いなどで血を吸う相手を探している。そのため体温が高く、呼吸回数が多い、つまり新陳代謝が激しい人は特に刺されやすい。生物の呼吸や代謝以外に、刈払機などの内燃機関の排気ガスにも寄ってくる。普段は刺されにくい人でも、新陳代謝量が増える運動をした後や、ビールを飲んだ後は刺されやすくなる。また、足のにおいを好み、足の方に集中する。吸血宿主である動物が呼気中に排出する炭酸ガス量は、ニワトリは25ml/min、ヒトは250ml/min、ウシウマなどの大型家畜は2,500ml/minであり、炭酸ガス量に対する複数の種類の蚊の反応と、これらの動物への蚊の嗜好性がよく一致することから、関連性があるといわれている[14]
湿度
蚊は湿度にも反応する。例えばをかいて、それが蒸発すると蚊が反応し、刺されやすくなる。したがって、汗かきの人は刺されやすい。汗の中のL(+)-乳酸が誘引物質として認められている[14]
肌・服の色
黒色の服はを吸収しやすいため、黒い服を着ていると刺されやすくなる。白色の服は熱を吸収しにくいので、刺されにくくなる。また肌の色についても、インド人ビルマ人、中国人(華人)の混住するミャンマーではインド人が最も蚊による感染症リスクが高く、体色の違いとともに臭いが関連していると予想されている[14]
羽音の可聴音
成人(25?30歳以上)になると可聴音の範囲が徐々に狭まり、蚊が出す高音域の羽音(およそ17kHzの低周波音。「モスキート音」と呼ばれる)を聞き取ること(“キーン” “フーン”という擬音で形容される)が困難となり接近しているのがわからず刺されやすくなる。
性別
男性の方が刺されやすい。これは発汗による水分蒸散の量が関連していると考えられる。50人の男性の平均刺咬数は50人の女性のそれより大きいことが実験されている[14]
性ホルモン
月経と関連して、平均刺咬数が多く吸血誘引性つまり刺されやすさに周期性を認めることができることが実験されている[14]
その他の誘引物質
一部の短鎖脂肪酸[14]含硫アミノ酸[14]アンモニア[15]1-オクテン-3-オール[16][17]、その他の体臭[18]
文化

俳句では「蚊」「孑孑(ボウフラ)」ともに季語とされる[19][20]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:82 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef