カンバセーション…盗聴…
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しかし、ブランドはコッポラからのオファーを拒絶、代わりに『フレンチ・コネクション』(1971年)でブレイクしたジーン・ハックマンが出演することになった[3]。ハリーの複雑な人格を見事に演じきったハックマンの演技は、高く評価されている。本作品でハックマンは1974年度のナショナル・ボード・オブ・レビュー賞主演男優賞を受賞した。

告解室でハリーの懺悔を聞き入れるカトリックの神父を、ジーン・ハックマンの実兄リチャード・ハックマンが演じている。リチャードは他にもハリーを取り押さえる警備員としても出演している。ただし、どちらの役も映画のスタッフロールにクレジットされない端役である。

ロバート・デュヴァルが、ハリーに盗聴を依頼する取締役としてカメオ出演しているほか、下積み時代のハリソン・フォードがその補佐役として登場している。
撮影とポストプロダクション

映画の撮影は1972年の11月26日から開始された[4]。『ゴッドファーザー』製作の時のように、コッポラの監督としての能力に不信感を持った映画会社の重役たちからの掣肘はなかったものの、撮影中にコッポラは精神的にも物理的にも様々な困難に対処する必要に迫られた。脚本は一応完成していたものの、コッポラはその出来に不満を感じており、映画の幕切れに関して最後まで頭を悩ませることになった[5]。コッポラは当初撮影監督にハスケル・ウェクスラーを起用していたが、途中で意見が対立したためウェクスラーを解雇し、代わりに『雨のなかの女』で撮影を担当したビル・バトラーを呼び戻した。そのため撮影が困難だった冒頭のユニオンスクエアのシーン以外を破棄し、再度一から撮り直すことになった[6]。映画の大半はロケーション撮影であったため、撮影費用を節約することは出来たが、その代償として照明や音響、場所の確保等の技術的問題が多く生じることになった[7]

製作期間の後半はコッポラ本人が『ゴッドファーザー PART II』の撮影準備で忙しかったので、映画の音響を担当したウォルター・マーチが編集作業にも携わることになった。映画のエンディングを現在の形にするようにコッポラに助言したのは、マーチであったとされる。マーチの映画製作における貢献は絶大であり、映画評論家のピーター・コーウィー(英語版)は、彼のことを本作品の共同製作者とまで呼んでいる[8]。映画撮影は1973年の3月に終わり、それから1年以上の編集期間を経て、1974年4月7日に公開された。
公開
興行収入

本作品の制作費は180万ドルと、当時のハリウッド製大作映画と比べて控えめなものであったが、興行成績が振るわず結局制作費を回収することは出来なかった[9]。興行的には今ひとつだったものの、批評家たちは本作品を完成度の高いスリラーとして賞賛、コッポラの監督としての評価を更に高めることになった。コッポラも後にインタビューで、本作品のことを彼のキャリアの中で最も好きな映画だと述べている。その理由は、本作品が『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』といった原作付きの映画と違い、コッポラ自身が書き上げた脚本に基づいた個人的なものだからだという[10]
評価

『カンバセーション…盗聴…』は、その興行的失敗にもかかわらず、多くの批評家たちから優れたサスペンス映画だとして賞賛された。公開当時、タイムニューズウィークニューヨーク・タイムズといった権威あるマスコミが本作品について好意的なレビューを掲載した。特にバラエティ誌の批評家は本作品のことを、「現時点におけるコッポラのもっとも完璧で、もっとも自信に満ち溢れ、もっとも価値の有る映画」であると絶賛した[11]。それらの好意的な評価の反面、ジョン・サイモンのようにこの映画を批判する者も居た。辛口な批評家として知られるサイモンは、エスクァイア誌に掲載したレビューで、作中で盗聴のエキスパートとして描写されている主人公が、何度も見え透いた罠に嵌るという本作品の筋書きを、不自然でありそうもないことだと指摘した[12]

本作品はコッポラの他の監督作品である『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』ほど一般的な知名度は高くないものの、現在では多くのコッポラ研究家や映画評論家たちから、彼のキャリアを代表する傑作だとして高く評価されている。ジョエル・シュマッカー[13]ゴア・ヴァービンスキー[14]といった映画監督たちも、好きな映画作品のリストにこの作品を含めている。

ピーター・コーウィーは、その著書『Coppola』のなかで、「コッポラの製作した作品の中で、この作品ほど熱情が込められた作品は無い」と評価した。コーウィーはまた、映画のラストシーンで自室に仕掛けられた盗聴器を発見するために部屋中を徹底的に破壊したハリーが、おそらくその中に盗聴器が仕掛けられていると疑いながらもサクソフォンだけを破壊しなかったのは、彼がその楽器の醸しだす音楽に夢と希望、罪の許しを求めていたからであると述べた[15]

ロジャー・イーバートは『シカゴ・サンタイムズ』に掲載したレビューで、本作品のことを「簡潔にまとまった知的なスリラー」であると賞賛した。作品のモチーフについてイーバートは、主人公ハリー・コールの、「基本的に悪人ではなく、自らの仕事を遂行しようとしているが、その仕事に起因する罪悪感と悪評に苛まされる」姿は、ウォーターゲート事件ベトナム戦争が齎した後遺症に苦しむ当時のアメリカ合衆国の縮図であると指摘している[16]

1995年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。
受賞

1974年のカンヌ国際映画祭では最高賞であるグランプリ(翌1975年から現在の正式名であるパルム・ドールに改称)を受賞。同年度のアカデミー賞において作品賞脚本賞録音賞の3部門にノミネートされるが、同じコッポラ監督・脚本作品である『ゴッドファーザー PART II』(作品賞と脚色賞を含む11部門にノミネート)に阻まれ受賞には至らなかった。
脚注
注釈^ 映画中で登場人物がリップセットについて言及するシーンがある。また、リップセットは技術アドバイザーとして映画にクレジットされた。
^ 映画の主人公ハリー・コールの名前は、『荒野のおおかみ』の主人公ハリー・ハラーからとられたものである。

出典^ “The Conversation”. Box Office Mojo. Amazon.com. 2013年5月8日閲覧。
^ Cowie p. 86
^ Cowie p. 66
^ Schumacher p. 142
^ Schumacher p. 143
^ Jeff Stafford、“ ⇒The Conversation: Overview Article”(参照:2009年1月31日)
^ Schumacher p. 144
^ Cowie p. 87
^ Lillian Loss (1982). Some Figures on a Fantasy: Francis Coppola.


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