鍵盤のそれぞれのキーは、ステンレス製のワイヤーによる伝達システムに接続している。キーを押した力でワイヤーを引っ張り、その力を滑車を経由して他のワイヤーに伝達し、最終的にクラッパー(鐘の舌)を鐘にむけて揺れる動きに変換する。クラッパーは静止時には鐘から5cmほどの距離で停止する[27]。音の低い大きな鐘では、クラッパーは音を出した後重力によって元の位置に戻る。音の高い小さな鐘では、クラッパーを元の位置に戻すための戻りバネ (return spring) を取り付けており、一度の打鍵で何度も鳴らないようになっている[28]。大きな鐘のクラッパーは大きく重いためこの機構は不要である[29]。鍵盤のすぐ上には、ターンバックル(引き締めネジ)と呼ばれるワイヤーの調節機構を持ち、温度変化で伸び縮みするワイヤーを調節できる[21]。 カップ型をした青銅製の鐘は、塔の頂上部の鋼鉄や木製の梁に吊り下げられる。鐘の配置は設置する空間、塔の高さと構造、鐘の数とサイズ、重さによって異なる配置となる。特に大きく重い低音の鐘は、音のバランスを確保するために演奏室の下に配置されることが多い[30]。 ほとんどのカリヨンでは、演奏時にはクラッパーだけが動いて音を出し、鐘は動かない[31]。一部の楽器にのみ、一番重い鐘を揺らしてスイングベル
鐘の収容
自動演奏機構ドイツ、ゲントの鐘楼にある自動演奏のためのシリンダー
ザルツブルグの自動演奏カリヨンのシリンダー。音を出す箇所を指定するために杭を打ち込む穴が7940個開けられている
カリヨンには、単純な曲やウェストミンスターの鐘の自動演奏機構を備えているものがある[33]。ヨーロッパでは多くのカリヨンが時計に接続した大きな金属製のシリンダー状の演奏ドラムを使用している[34]。演奏ドラムの表面には金属製の杭を打ち込んであり、そのすぐ脇に鐘を鳴らすハンマーに接続したレバーを並べて設置している。時刻が来てドラムを回転させると、杭がレバーに引っかかり、さらに回転すると杭からレバーが外れ、その力でハンマーが鐘を鳴らす構造となっている[35]。杭は一時間おき、あるいは15分おきに簡単な曲を演奏するように配列されている。この機構の時計をゼンマイに、シリンダー部分を小型化、鐘をくし型の金属板にしたものが現代のシリンダー型のオルゴールである。
北米のカリヨンでは演奏ドラムのシステムはあまり一般的ではなく、代わりに紙テープと空気圧による演奏システムを持つものがある[36]。 パイプオルガンと並んで、カリヨンは世界で最も重い楽器の一つである。カリヨンの重量は鐘のみでも4.5トン?15トンほどであり、最も軽いものでも1トン、最も重いニューヨーク、リバーサイド教会にあるローラ・スペルマン・ロックフェラー カリヨンは鐘を叩くことで音を出すため、ザックス=ホルンボステル分類では打奏体鳴楽器の舌奏式釣鐘(111.242.222)に分類される[40]。カリヨンに使用する鐘は、通常の銅よりも大きな剛性と共鳴音を得るためにベルブロンズ
重量
音
調律
鋳造のみによって完全に調律した鐘を造ることができないため、鐘はやや厚めに鋳造し、旋盤で表面を削りとって調律を行う。音色の調整が完了すると、以後鐘の音色が変わることはほとんどなく、設置後に鐘を劣化させるのは火事と大気汚染だけであると言われている[45]。 古いヨーロッパのカリヨンは中全音律に調律されていた。現代のカリヨン、特に北米のカリヨンは平均律に調整されている[46]。.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}.mw-parser-output .listen .side-box-text{line-height:1.1em}.mw-parser-output .listen-plain{border:none;background:transparent}.mw-parser-output .listen-embedded{width:100%;margin:0;border-width:1px 0 0 0;background:transparent}.mw-parser-output .listen-header{padding:2px}.mw-parser-output .listen-embedded .listen-header{padding:2px 0}.mw-parser-output .listen-file-header{padding:4px 0}.mw-parser-output .listen .description{padding-top:2px}.mw-parser-output .listen .mw-tmh-player{max-width:100%}@media(max-width:719px){.mw-parser-output .listen{clear:both}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .listen:not(.listen-noimage){width:320px}.mw-parser-output .listen-left{overflow:visible;float:left}.mw-parser-output .listen-center{float:none;margin-left:auto;margin-right:auto}}カリヨンの音声サンプル北米のカリヨン(3 min 53 s)リサ・ロニーの演奏する ネーデルランド・カリヨン(英語版) 2012年ルクセンブルガーカリヨン (1 min 6 s)ノートルダム大聖堂 (ルクセンブルク)のカリヨン, 2018年カナダのカリヨン(3 min 20 s)パーシバル・プライスが演奏する ピース・タワー(英語版)カリヨン 1927年これらの音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。 カリヨンにはピアノと同等か、それ以上のダイナミックレンジを持つ楽器が存在する。演奏者は演奏時のタッチによって幅広い音量を表現できる。大きな鐘(低い音)のダイナミックレンジは小さい鐘(高い音)よりも広いものとなる。小さな鐘は質量が少ないため、大きな鐘のごく一部の音量しか表現することができない。 カリヨンの音域はそのカリヨンの鐘の数に比例し、鐘の数は主に楽器を造る際の資金で決まる。大きな鐘の鋳造コストは小さいものよりも高く、鐘を多く鋳造するにはより多くの資金が必要となる。カリヨンと呼ぶには、少なくとも23個(2オクターブ)以上の鐘を持つことが条件となり、それ未満の楽器はチャイム (en
音量
音域
23個 - 27個の鐘を持つものは2オクターブカリヨン、35個から39個の鐘を持つものは3オクターブカリヨンと呼ばれる。これらのカリヨンで演奏するには、狭い音域向けに書かれた楽譜を使用する[48]。