カリブ海と他海域の境界となっている大アンティル諸島や小アンティル諸島のほかにも、カリブ海には多くの島々が浮かぶ。カリブ海北部にはキューバ島の南に浮かぶピノス島やケイマン諸島、ホンジュラス領のスワン諸島、同じくホンジュラス領で本土のすぐ沖合に浮かび、イスラス・デ・ラ・バイア県を構成するウティラ島・ロアタン島・グアナハ島、ユカタン半島に隣接するメキシコ領コスメル島、そしてジャマイカ島などが浮かぶ。カリブ海南部の中心海域には島はなく、西端のニカラグア近海にコロンビア領のプロビデンシア島とサン・アンドレス島が浮かび、両島はコロンビアのサン・アンドレス・イ・プロビデンシア県に属している。南端のベネズエラ沿海には旧オランダ領アンティルのアルバ島、キュラソー島、ボネール島が浮かぶ。これらの島々はABC諸島と呼ばれ、政治的には1986年にアルバがオランダ自治領となり、2010年にはオランダ領アンティルの解体によってのこる2島も単独の自治領となった。ABC諸島のさらに東には、ABC諸島に連続する形で12の島々が浮かび、政治的にはベネズエラの主権下にあってベネズエラ連邦保護領に属している。また、ベネズエラ領にはほかに、スクレ州の沖合に浮かぶマルガリータ島、コチェ島、クバグア島もあり、この三島はヌエバ・エスパルタ州を構成している。
カリブ海には、西端にありグアテマラ・ベリーズ・ホンジュラスに囲まれたホンジュラス湾や、南端に位置するコロンビアのダリエン湾、ベネズエラ西部に位置し最奥部でマラカイボ湖とつながっているベネズエラ湾などの湾がある。また、ユカタン半島とキューバ島の間のユカタン海峡でメキシコ湾と、キューバ島とイスパニョーラ島の間のウィンドワード海峡によって大西洋とつながっている。イスパニョーラ島とプエルトリコ島の間にはモナ海峡があり、これも大西洋とつながっていて重要な航路となっているが、この海峡は潮流が複雑で航行はやや困難である。
カリブ海に流れ込む河川に大きなものはほとんどない。沿岸にはほとんど小さな諸島や中央アメリカ地峡しかなく、ベネズエラも海岸近くまでアンデス山脈が迫っているためである。オリノコ川はカリブ海ではなく、大西洋へと注ぎ込んでいる。カリブにそそぎこむ川で唯一大河と言えるのはコロンビアを流れるマグダレナ川である。マグダレナ川は全長1540qで、北アンデスのコロンビア南部に端を発し、コロンビア中央山脈と東山脈の間を流れ、コロンビア北部で中央山脈と西山脈の間を流れてきたカウカ川をあわせたのち、バランキーヤでカリブ海へと注ぎ込む[20]。
海流は、カリブ海流が東から西へと流れる。この海流は暖流であり、南アメリカ沿岸を流れてきた南赤道海流がカリブ海に入ってきたものである。この海流はユカタン海峡からメキシコ湾へと抜け、メキシコ湾流となって北大西洋へと流れ込む。
カリブ海には世界の9%に相当する5万平方キロメートルのサンゴ礁が広がっており、そのほとんどがカリブ海諸島および中央アメリカの海岸に広がっている[21]。現在異常な水温上昇がサンゴ礁を脅かしている。水温が29℃を超えるとサンゴから褐虫藻が抜けてしまい、サンゴ礁の白化が始まる。
サンゴ礁はまたハリケーンの被害も受ける。北大西洋で発生した熱帯低気圧は大西洋を横断して強さを増し、カリブ海でハリケーンとなってカリブ海諸国と米国を襲うが、この強い波の作用と運ばれる砂と泥でサンゴ礁が死に至る。年平均5個のハリケーンが、とくに8月から9月にかけて発生する。 カリブ海沿岸には多くの人々が住むが、人口分布には濃淡がある。南アメリカ大陸にはコロンビアのカルタヘナ、バランキージャ、サンタ・マルタ、ベネズエラのマラカイボや、沿岸都市ではないものの首都カラカスなどの大都市が点在し人口も多い。小アンティル諸島や西インド諸島も、小島が多いものの人口は稠密である。ドミニカ共和国の首都サント・ドミンゴや、ジャマイカの首都キングストンなどの大都市もある。これに比べ、カリブ海西岸に当たる中央アメリカ沿岸部には熱帯雨林が広がり、開発がほとんど進んでいないため人口も少ない[22]。沿岸各国はそれぞれカリブ海に輸出港を構えており、パナマのコロン市、コスタリカのリモン、ホンジュラスのプエルト・コルテス、グアテマラのプエルト・バリオス、ベリーズのベリーズシティなどの都市はあるが、コロン市を除きどの都市も人口10万を超えることはなく、比較的小規模な都市が多い。このほか、ホンジュラスのカリブ沿岸は平地が多く20世紀に入ってから急速にバナナなどのプランテーションが開発され、バナナ産業を基盤とするホンジュラスのラ・セイバなどの小都市が成立しているものの、中央アメリカ諸国の中心は太平洋側の中央高原にある。 カリブ海沿岸地域の民族・言語構成は多様である。民族的には沿岸人口の多くは16世紀以降に移民してきたスペイン人や、彼らと先住民たちの間の混血が多数派を占めている。小アンティル諸島やハイチにおいては、奴隷としてアフリカから17世紀以降につれてこられた黒人の子孫が多数派を占める。先住のインディオ達はほとんどおらず、各地の辺境にわずかに残るのみとなっている。混血していないカリブ族はわずかに残っているが、多くは黒人と混血し、ブラック・カリブ、またはガリフナと呼ばれる一つの民族を形成した。また、19世紀以降サトウキビプランテーションの労働者として連れてこられたインド人たちも沿岸諸国に多数定着しており、ヒンドゥー教やイスラム教を守り独自の文化を保ち続けている。沿岸部の宗教は、ほぼ旧宗主国に準じており、大陸部においてはローマ・カトリックが圧倒的であるが、小アンティルなどプロテスタントの信仰が強い地域も存在する。 最も多く使用される言葉はスペイン語で、南北アメリカ大陸、およびキューバやドミニカ共和国など、沿岸地域の大国のほとんどはスペイン語圏である。それに対し、とくに小アンティル諸島の言語構成は複雑であり、英語、フランス語、オランダ語など旧宗主国の言語圏が島ごとに細かく分かれている。大陸部でもベリーズは英語圏である。こうしたことからカリブ海域、とくに小アンティル諸島やジャマイカなどはラテンアメリカとは厳密には呼べない。これを考慮して1948年に国際連合の下部組織として設置された国連ラテンアメリカ経済委員会が、1984年に国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会
人文
カリブ海沿岸の17の英語圏諸国は、共同で西インド諸島大学を設立している[24]。