カラチ
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旧市街地は無秩序な開発が進み、1976年9月13日には築1年の6階建てのアパートが倒壊して約200人が死亡する事故も発生した[6]

さらに、1980年代から1990年代にかけて、アフガニスタンから多くの難民が流入したこともカラチの停滞に拍車をかけた(背景は「アフガニスタン紛争 (1978年-1989年)」「アフガニスタン紛争 (1989年-2001年)」参照)。ムハージル(英語版)と呼ばれるインド・パキスタン分離後にカラチに流入したムスリムと、従来カラチに居住していた住民との間で、政治的に対立が生じ、暴力事件にまで発展することもあった。現在では、この対立は沈静化している。

カラチはパキスタンの経済(英語版)の中心として、首都がラーワルピンディーからイスラマバードへ移った現在も君臨し続けている。パキスタンに占める国内総生産の大部分をカラチが占めている現状は変わっておらず、現在ではカラチを中心とするカラチ都市圏の人口は非公式では2千万人といわれている。また、パキスタンでは経済的に活況を呈しており、新時代への旗手的役割を担っている。2021年にはサウジアラビアが製油所建設計画地を西方のグワーダルからカラチに変更したほか、中華人民共和国も「一帯一路」を構成する中国パキスタン経済回廊(CPEC)のアラビア海側開発対象をカラチにすることを決めた[7]

一方で、カラチの治安は悪く、日本人が犯罪に遭ったケースもある[8]。2013年以降、イスラーム過激派によるテロが相次いでおり、2014年6月8日にはジンナー国際空港をパキスタン・ターリバーン運動ウズベキスタン・イスラム運動が襲撃し[9]、治安関係者や空港職員28名が殺害された。
地理カラチの衛星写真

カラチ市はシンド州に属するが州の西端に位置し、西はバローチスターン州に接する。市の中心部の北側をリヤーリー川が、南側をマリール川が流れ、中心市街地はこの両河川の間の三角州に発達している[10]。町の南にはアラビア海が広がり、クリフトン・ビーチやマノラ・ビーチといったビーチがあって多くの市民が訪れる。中心市街地の西から南西には潟湖が広がっている。この潟湖に接する地点に港が置かれ、その周辺には旧市街が広がっている。旧市街から東に向かうと新市街であり、サダル地区を中心に現在のカラチの中心となっている。
行政

2011年、カラチ市の地区政府は東カラチ、南カラチ、中央カラチ、西カラチ、マリール地区の5つに分割され、この5地区が現在カラチ地区を形成している[11][12][13]。市管理者はムハンマド・フセイン・サイードであり[14]、市政長官はマタナト・アリ・カーンである。このほかに、市内にはパキスタン軍によって管理される6つの宿営地(カントンメント)が存在している[15]
気候

カラチは砂漠気候に属するが、降水量は約250mmと砂漠気候としては多い。降水量は少ないものの、海に近いため、湿度は高めである。降水は、モンスーンの影響を受ける7月から9月に集中する。また、モンスーン時には、排水設備が殆ど整備されていないため、道路が冠水する。また冠水した水も、主要道路を除いて汚水処理されないため微生物が繁殖し、感染症拡大の危険性が懸念されている。

夏になると、海から涼しい風が吹き込むため、パキスタンでは割合穏やかな気候である。モンスーンの吹く前、5月から6月にかけてが最も暑く乾燥し、乾期の終わりには熱波に襲われ、1,000人以上が死亡する厳しい環境になることがある[16]。12月から1月にかけては冬に当たるため、やや気温が下がり、快適な気候となる。

カラチの月間降雨記録は、1967年7月の429.3mmである[17]。一日の最高降雨記録は、1953年8月7日の278.1mmであり、このときカラチは記録的な大洪水に見舞われた[18]。カラチの最高気温記録は1979年6月18日の47[17]、最低気温記録は1934年1月21日の0.0℃である[17]

カラチの気候
月1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年
最高気温記録 °C (°F)32.8
(91)36.1
(97)41.5
(106.7)44.4
(111.9)47.8
(118)47.0
(116.6)42.2
(108)41.7
(107.1)42.8
(109)43.3
(109.9)38.5
(101.3)34.5
(94.1)47.8
(118)
平均最高気温 °C (°F)25.6
(78.1)26.4
(79.5)28.8
(83.8)30.6
(87.1)32.3
(90.1)33.3
(91.9)32.2
(90)30.8
(87.4)30.7
(87.3)31.6
(88.9)30.5
(86.9)27.3
(81.1)30.0
(86)
平均最低気温 °C (°F)14.1
(57.4)15.9
(60.6)20.3
(68.5)23.7
(74.7)26.1
(79)27.9
(82.2)27.4
(81.3)26.2
(79.2)25.3
(77.5)23.5
(74.3)20.0
(68)15.7
(60.3)22.2
(72)
最低気温記録 °C (°F)0.0
(32)3.3
(37.9)7.0
(44.6)12.2
(54)17.7
(63.9)22.1
(71.8)22.2
(72)20.0
(68)18.0
(64.4)10.0
(50)6.1
(43)1.3
(34.3)0.0
(32)
雨量 mm (inch)3.6
(0.142)6.4
(0.252)8.3
(0.327)4.9
(0.193)0
(0)3.9
(0.154)66.4
(2.614)44.8
(1.764)22.8
(0.898)0.3
(0.012)1.7
(0.067)4.5
(0.177)167.6
(6.6)
出典1:HKO (normals, 1962?1987)[19]
出典2:PakMet (extremes, 1931?2008)[17]

経済MCBタワー(MCB銀行本社ビル)

カラチはパキスタンの経済・金融の中心都市である[20]。パキスタン最大の都市と唯一の主要港としての地位にあるこの都市は、パキスタンの歳入のかなりの部分を占めている。パキスタン連邦歳入庁によると、カラチはパキスタン全体の直接税の46.75%、連邦消費税の33.65%、国内売上税の23.38%を占めている[21]。また、関税の75.14%、輸入売上税の79%はカラチからのものである[21]。したがって、カラチからの税収は連邦歳入庁の集める税金全体の53.38%を占め、そのうち53.33%が関税および輸入売上税である[21]。(ただしカラチからの税収には、カラチやハイデラバード、スックル、クエッタ、シンド州およびバローチスターン州をカバーするカラチ地方税務署および大規模税ユニットからの税収を含む)[21]。カラチの住民からの税収はおよそ25%程度である。

パキスタンの製造業のうちカラチの占める割合はおおよそ30%である[22]。シンド州の域内総生産(GDP)のかなりの部分はカラチに負うものである[23][24]。シンド州のGDPはパキスタン全体の28%から30%を占め[23][24][25][26]、カラチのGDPはパキスタンのおよそ20%を占めている[27][28]プライスウォーターハウスクーパースは、2008年のカラチのGDPを780億ドルと推定した[29]。2025年には年平均5.5%の成長率で1930億ドルになると推定している[29]。なお、パキスタンではカラチに次ぐ大都市とされるラホールおよびファイサラーバードの2008年のGDPはそれぞれ400億ドルと140億ドルとなっている[29]

カラチの高いGDPは金融セクターに大きく依存している。世界銀行は2007年2月にパキスタンで最も企業活動がしやすい都市としてカラチを選んだ[30]

一方、繊維産業セメント鉄鋼重機製造、化学工業、食品産業、銀行保険もカラチの主な産業となっている。


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