カムコーダ
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1984年(昭和59年)1月には、このVHS-C規格を採用した初のカムコーダ「GR-C1」が、日本ビクターから発表された[14]。このカメラは、なんとか片手でも持てるサイズとなっていた。
8ミリビデオとそのカムコーダの登場(1984年 - 1985年)

1984年(昭和59年)、家電業界の統一規格として作られた8ミリビデオが登場した。これは、VHSやベータマックスとは全く異なる、劇的に小さなカセットテープを使用し、かつ録画時間も家庭用として十分な90分(当初)を確保したものであった。

1985年(昭和60年)1月8日、SONYより8ミリビデオ規格を採用したカムコーダが発売された(CCD-V8[15])。これもまた肩乗せ式のものではあったが、重量は2キログラムを切った。VHS-Cおよび8ミリビデオの登場により、ようやくカムコーダは一般の家庭にもはいりこめる小型化を達成したといえる。

更に同年9月、SONYより8ミリビデオ規格を採用したカムコーダ・ハンディカムの1号機が発売された(CCD-M8)。これは再生機能や電子ビューファインダーを省略するなど大胆に機構を簡略化することで小型化し片手持ちを実現したもので、販売的には失敗に終わっているが、カムコーダの新しい姿を提案するものとなった。
片手保持スタイルの確立(1986年 - 1991年)片手持ちスタイル

ハンディカムの流れを受けて、1980年代後半には更にカムコーダの小型化が進み、肩乗せスタイルがすたれて片手持ちスタイルが主流になるという変遷が起きた。

小型化は徐々に進められ、ビクターのVHS-C一体型カムコーダ「GR-C7」(1986年)では「ボーヤハント」というキャッチコピーで気軽に家庭内で撮影することを強く提案していた[16]

この流れの中でもっとも成功したのは、1989年(平成元年)6月21日に発売されたSONYのカムコーダ「CCD-TR55」であろう。これは「パスポートサイズ」というキャッチコピーをつけ、質量790gという当時では画期的な軽さを実現した同機を片手で軽々と保持し、ビデオ撮影が可能だということを訴求した。実際に同機をパスポートで隠したフェザー広告や、浅野温子を起用したCMによるイメージ戦略が功を奏し発売後2日間で5万台を売り上げ、これ以降カムコーダはそれまでにもまして身近なものとして普及することになった。

ただしメリットだけではなく、欠点も顕在化することになった。「重く大きい肩乗せ式」から「軽く小さい片手持ち式」になるに従って、体力のない者でも使えるようになった結果として手ブレが生じやすくなり、撮影された映像が見苦しいものとなりやすいという問題も生じた[注釈 3]。ある程度以上マニアックな撮影者から一般市民にマーケットが広がったために三脚を使う者が極端に減ったこと、手持ち撮影でズームアップを多用する者が増加したことも、この傾向を加速したと言えよう。その後、手振れを軽減する機能の搭載が進められた。
液晶ビューカムの登場(1992年 - 1994年)

1992年(平成4年)、シャープから液晶ビューカムが発売された。これ以降、ファインダーではなく液晶を見ながら撮影する方式が主流になっていく。(VL-HL1[17])規格は、1990年代を通じて8ミリビデオの高画質規格であるHi8が主流であった。
DV規格の登場(1995年 - 1999年)

1995年(平成7年)にデジタルビデオ記録方式DV規格が制定された。同規格は発売当初はカムコーダ本体もテープもかなりの高価格であったためすぐには普及せず、1990年代後半もなおHi8(8ミリビデオ)がカムコーダの主流であったが、2000年代以降はDV規格のカムコーダ本体やテープの低価格化が急速に進み、ビデオデッキ部はデジタルのものが大半を占めるに至っている。
業務用と民生用の区別

家庭用ハイビジョンカメラの登場した現在でも、スタンダードカメラ、ハンディカメラ、ENGカメラという放送用カメラの構成や性能は変わっていない。しかし業務用ビデオ機材では、以前は業務用と民生用では明らかに画質が異なり、また価格も段違いとなっていたものの、1995年(平成7年)9月、Sonyの世界初DV規格によるデジタルカムコーダDCR-VX1000[18][19]からこの流れは変わり、ハイエンドの民生機とローエンドの業務用機の区別があいまいになってきた。この機種は、録画部にDV規格を採用するとともに、撮影部に業務用と同じ3CCDを採用することで、劇的な画質の向上をもたらした。同機や、その後継機種DCR-VX2000は、業務用の領域にも食い込んで使われている。Flip Video
Ultra HDという機種では、1280x720pモードのみ。録画媒体は内蔵するフラッシュメモリ

その後のカムコーダは、いくつかの方向に分化しつつ発展を続けている。
HD撮影と記録規格・記録媒体の多様化(2000年以降)

2000年(平成12年)に日立から8cmDVDに記録する「DZ-MV100」が登場し各メーカーも追随して発売したがDVD規格の乱立や録画時間の短さなどからDV規格を凌ぐほど普及はしなかった。日立は2007年(平成19年)に8cmBDにHD記録するブルーレイカムコーダも発売している。

2000年代後半には旧来のビデオ方式であるSD(標準画質)から新世代のビデオ方式であるHDハイビジョン)への移行が進んだ。

DVテープを用いるHDV規格が作られ、民生用機のハイビジョン・カムコーダは、2003年(平成15年)に日本ビクターから720p規格(1280×720画素)の「GR-HD1」が登場、翌2004年(平成16年)にはSONYより1080i規格(1440×1080画素)の「HDR-FX1」が登場した。これらは片手持ちで撮影するには少々大きすぎるものではあったが、2005年(平成17年)に容易に片手持ちが可能なサイズの「HDR-HC1」が登場した。

2006年(平成18年)にはH.264方式で記録する、AVCHD規格を策定。HDV規格のMPEG-2より少ないデータ容量でHD映像を記録ができ、同時にHDDメモリーカードに記録することが可能となり、記録規格や記録媒体は多様化していった。

2010年代に入ると、本体の小型化によりGoPro(ウェアラブル・デバイス)など、一部の目的に特化した製品や、3D動画4K解像度撮影ができる家庭用カムコーダ等も登場した。

その一方で、デジタルカメラ(静止画撮影目的のスチールカメラ)やスマートフォン等のカムコーダーの機能が内蔵された携帯端末でも急速な画質の向上によりHD動画撮影が可能となり、従来の動画撮影専用のカムコーダの出荷数は急激に減少している。


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