カブ
[Wikipedia|▼Menu]
カブは他のアブラナ科植物と交雑しやすく、ダイコンダイコン属)とは交雑しないが、コマツナハクサイなど(アブラナ属)とは交雑する[11]。肥大した球形のを可食部として利用するが、これは発生学上で胚軸と呼ばれる部位で[9]、本当の根はその下に伸びたひげ状の部位である[10]漬物用の日野菜薬味用の遠野蕪などではこの胚軸が大根のように長く伸びるが、野沢菜ではほとんど肥大しない。胚軸と根の色は多くの場合白だが、これらが赤くなる赤カブと呼ばれるものもある。

主に春と秋に栽培が行われ、一般的な小カブで高さ30センチメートルほどになる[9]。栽培日数は小カブの場合、種まきから1.5 - 2か月ほどで収穫ができ、寒さに強い性質があるが、アブラナ科の野菜特有の連作障害もある。ヨーロッパでは主に飼料とするが、品種改良された品種が多い日本では食用野菜として利用し、根の部分(胚軸部)は淡色野菜、葉・茎は緑黄色野菜に区分される[10]。根の部分の栄養素はダイコンとほぼ同じである。栄養価は葉のほうが高く、カロテンビタミンC食物繊維が豊富に含まれている。アブラナ科に共通する苦味や辛味はあるが、カブはなかでも甘味が強く、寒い時期ほど甘味は強まる[12]
歴史

原産地については、地中海沿岸のヨーロッパ南西部を起源とする一元説と、地中海沿岸および中央アジアアフガニスタン地域を起源とする二元説がある[4][6][13]。もともと野生アブラナであるブラッシカ・ラパ (Brassica rapa) の1変種で、紀元前からヨーロッパで栽培されていた[6]中国大陸へは約2000年前に伝わったとされ[6]中国の『詩経』に記載され、ヨーロッパ系も古代ギリシャの史料に見られる。ただし、地中海沿岸から東へ伝播した中国大陸では、カブの根よりも葉のほうが主に扱われ、山東菜ハクサイへと改良されていった[11]。また、西へ伝播したヨーロッパでは宗教の考え方の影響もあり、「天からもっとも遠い地中に出来る根菜類」を低く見る嫌いがあって冷遇されていた[11]。ヨーロッパで広く普及したのは16世紀からで、飼料用途が多かった。東ヨーロッパなど寒冷地では冬場の貴重な食料源や救荒植物として活用された[13]

日本へは時期は不明であるがかなり古い時代に(弥生時代という説もある[14])、中国大陸または朝鮮半島からもたらされ、スズシロ(大根)とともに重要な根菜とされてきたと考えられている[6]。古い記録では『古事記』(712年)に記されている「吉備の菘菜(あおな)」はカブのことと見られている[誰によって?]。『日本書紀』(720年)にも[6]持統天皇が栽培を推奨したとの記述がある[14]奈良時代の朝廷が、根に養分を蓄える野菜づくりを奨励し、五穀に次いで重要視されて、各地に伝統的なカブが誕生することになった[11]。東北地方では、古くから焼き畑でつくる作物として毎年栽培されたものが、保存して冬から春の間に食べる食料にされた[6]江戸時代になってから日本各地に広まって[4]、各地域ごとに特徴ある栽培品種が多数作出された[6]
品種

種類を系統別にすると、アジア系とヨーロッパ系に分けられ、大きさでは、大中小の3種類に分けられる[15]。日本には白い丸形の小カブをはじめ、赤カブや長カブ、大型のカブなど各地で在来種が根付いており[4]、量は少ないながらも約80品種が生産され[15]、多様な品種が存在した日本の伝統野菜の代表例でもある。

日本で最も一般的に流通しているのが寒さに強い小型の白カブで、これはヨーロッパから朝鮮半島を経て渡来した系統で、中でも金町小カブが代表的な品種である[4]。カブには直径10センチメートルを超える大カブや[4]、根茎部が長さ20センチメートル以上になる長カブ[4]、赤い色の赤カブがなどあり[16]、ヨーロッパ系の品種では根茎が黄色の黄カブもある[16]。聖護院かぶなどの大型かぶは、繊維が少なくて肉質は緻密である[6]。カブの色が白色ではないものは「色カブ」ともよばれ、紅色や紅紫色、上半分は紅色で下半分が白色などになり、品種も数多く、日本海側にかけて多く栽培されている[6]。日本で産出されるカブは世界の植物学者から「カブの第二の原産地」と例えられるほど、品種が豊富にある[11]

東京近郊で栽培される金町小かぶには、数多くの系統があって、日本全国各地で栽培されている[6]。地方特産の在来種の数も多く、小カブ以外は周年生産されていない[6]。地方品種を東西(ヨーロッパ系とアジア系)に分ける線は関ヶ原付近に引くことができ、西日本のカブは葉や茎に毛があるものが多く、東日本はツルツルしたカブが多い[9]。農事関係者は、地理的に系統が分かれるこの線のことを「かぶらライン」と呼んでいる(中尾佐助による命名)。

日本国内で生産される欧米種としては、大型で黄色いゴールデン・ボール、スノー・ボール・アーリー、夏採りのパープル・トップ・ミラン(ミラン・ルージュ)などがある[12][6]

利用目的に合わせて品種改良が行われた結果多くの野菜(タイプ)が生まれた。ハクサイチンゲンサイコマツナツケナ類は全てカブの仲間であり、広義のカブ菜類に含まれる。したがって相互の交配が容易である。
主な品種

金町小かぶ(かなまちこかぶ) - 東京の在来種で、日本で最も生産量が多い代表品種。通年栽培可能で、根は白く柔らかいのが特徴。春に出回るものは、甘味があり生食に向く[15]

京小町かぶ(きょうこまちかぶ) - 丸々した小カブで、食味は柔らかくで甘味があるので、生食にも向いている[17]

聖護院かぶ(しょうごいんかぶ) - 京都の伝統野菜の1つ[9]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:100 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef