湾岸協力会議(GCC)の加盟国。小国であるが、豊かな石油・天然ガス収入を背景に、米軍基地を置くなど欧米西側諸国と関係が深いと同時にサウジアラビア等の周辺国とも距離を置いている。とりわけ巨額の資金援助を行ったムスリム同胞団を使ってアラブの春では中東各国に活発に介入した。シリア内戦では欧米と協調してアル=ヌスラ戦線等の反体制派のアルカーイダ組織を支援した。また、パレスチナのハマースにはムスリム同胞団を通じて最大の影響力を持っている国でもある。
2012年、ターリバーンの対外連絡事務所を設置[32]、ターリバーンとアメリカ両国とのパイプを持つ国となった。2020年、アフガニスタンからアメリカ軍が撤退する交渉ではカタールが会談場所となり、2021年にアメリカ軍が撤退してターリバーンが再びアフガニスタンを制圧した後は、欧州各国とターリバーンの対話の窓口としての役割を果たした[33]。同年、ターリバーンに対しては、アメリカ軍撤退後に空白となったカーブル国際空港の航空管制支援や物資の供給なども行っている[34]。
2014年、サウジアラビア、バーレーン、UAEの3か国が、内政干渉に対する報復という理由で駐カタール大使をそれぞれ本国召還し、カタールと周辺諸国の軋轢が表面化した[35]。さらに2017年6月、ムスリム同胞団への支援やイラン・トルコとの接近に対して、一部のイスラム諸国(サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプト、イエメン、モルディブ、モーリタニアなど)がカタールとの国交断絶を表明した(2017年カタール外交危機)[36]。しばらくの間、イスラム諸国との関係悪化は続いたが、2021年1月4日、カタールとサウジアラビア間で国交回復に向けた合意が実現した[37]。翌5日にはサウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトの4カ国との国交を完全に回復させることで合意した[38]。一方、この危機以降、カタールとトルコの関係が非常に深くなっており、国内にトルコ軍が一時駐留していた[39][40]。
カタールの最大の問題の一つが近隣国際関係で、オーストラリアに本部を置き、アメリカ、オランダ、メキシコ、ベルギーなどに支部を持つ経済平和研究所が2022年1月に発表した「国防経済外部効果」、「観光客数」、「国内近隣外国人平等法」、これを再定義して2022年の積極的平和指数の1項目、近隣国際関係指数は4. 41と、世界から見てアフガニスタンよりも低い国際ランクとなるほど悪いものであった[41]。
軍事詳細は「カタールの軍事」を参照
カタール固有の軍事力は、軍事予算はGNP比4.2%(1993)、総兵力1万1,800人である。
アメリカ中央軍が駐留し、首都ドーハ近郊に司令部のひとつであるアッサイリヤ基地
(英語版)がある。アメリカ中央軍は中東を責任地域とするが、司令部のある米国本土のフロリダ州タンパが遠すぎるため、イラク戦争直前の2003年に第2の司令部として設置された。イラクやアフガニスタンに展開したアメリカ軍部隊はここから指揮される。2016年、カタールをかつて支配していたトルコに軍事基地を提供する協定を結んだ[42]。
2017年6月には米海軍と、同じく8月には米軍パラシュート部隊との合同軍事演習を行った[43]。一方で同年11月からは2017年カタール外交危機での孤立に伴って上海協力機構に加盟申請し(のちにトルコと同じ対話パートナーとしての参加が認められた[44][45][46])、翌12月にはカタール建国記念の軍事パレードで中国人民解放軍による訓練で従来の英国式から中国式のガチョウ足行進に改め[47]、中国製弾道ミサイルのBP-12A(英語版)を披露し[48]、中国への接近が目立った。