オートマチックトランスミッション
[Wikipedia|▼Menu]
ハドソンカイザーなど、自力でATの開発が行えなかったビッグスリー以外の中堅メーカーには、GMから社外販売されるようになったハイドラマチックのユニットを購入して装着することでAT化への追随を余儀なくされた事例も見られた。第二次世界大戦終結後のアメリカではガソリン価格が下がり、乗用車排気量拡大・ハイオクタン仕様化によるパワー増大競争と並行してATが急速に普及、1945年に5 %未満だった乗用車のAT普及率が1965年には90 %超となった[11]
トルクコンバータ導入

フルードカップリングを発展させてトルク増幅作用を備えたトルクコンバータ(以下、トルコン)が市販車に採用されたのはGMの「ダイナフロー」で、1948年発表のビュイックに搭載された。変速機は2速の手動変速機で、通常は2速に固定され、駆動力の必要な場合に手動で1速に切り替えるというものであった[11]。1949年から翌年にかけ、同じくGM系のシボレー向けに「パワーグライド」が、またパッカードの自社開発で「ウルトラマチック」が2速ATとして市販され、1953年にはクライスラーも「パワーグライド」を導入している。この当時のトルコンは、ロックアップ機構は組み込まれず、スリップに伴って生じる伝達ロスにより、スロットル操作に対するレスポンス(ツキ)や燃費が悪かった。

1950年代中期にトルコンと組み合わされた3段以上のATが登場し、技術の進歩と共に変速段数が増やされたり、ロックアップ機構が加えられたりといった改良が加えられた。GMハイドラマチックも1950年代後期にはトルコンと3段変速を持つ第二世代に移行し、3速ATは1980年代まで市場の大勢を占めるようになった。

ATの量産化や小型化はその後も進行、やがて低廉な大衆車横置きエンジン前輪駆動の小型車にも搭載されるようになった。
ヨーロッパ

アメリカでは1960年代までにはATが一般的になったが、ヨーロッパ車日本車における普及はそれより遅れた[13]。ヨーロッパでは1950年代中期から、主として対米輸出用の乗用車にATの装備が始まった。当初はアメリカのビッグスリー(変速機の社外供給も一部で行うようになった)やボルグワーナーなどの変速機メーカーからATを購入して搭載するケースが多かったが、ロールス・ロイスは1953年以降、GMから製造ライセンスを取得した4速式ハイドラマチックを自製搭載するようになり、ダイムラー・ベンツ(現:ダイムラー)は1961年から自社製の流体継手式4速ATを開発して搭載を開始した[14]
日本

日本で四輪車に最初にATを搭載したのは、産業用トルコンメーカーであった岡村製作所が自社開発して1958年(昭和33年)に発売した、600 ccの前輪駆動車「ミカサ」で[15]、同社のトルコンは東洋工業の軽乗用車「マツダ・R360クーペ」(1960年)にもオプションで搭載された[16]

大手自動車メーカーによる自動車は、1959年(昭和34年)にトヨタ自動車商用車トヨペット・マスターラインに初めてトルクコンバーターを組み合わせた2速セミオートマチックトランスミッションを搭載し[注釈 1]、トヨグライドと称した。競合各社もこれを追うように1960年代以降、上級モデルを中心として日本国外メーカーとのライセンス契約での製造を図り、あるいはボルグワーナー製3速AT「BW35」[注釈 2]を輸入搭載するなどの対抗策を採った。トヨタは1962年(昭和37年)に小形、低廉な大衆車であるパブリカ(P20系)にもトヨグライドを搭載した。続いて1963年(昭和38年)にコロナ(T20系)、1967年(昭和42年)にカローラ(E10系)と、搭載車種を拡大し、日本の競合他社もトヨタの動きに追随した。

トルクコンバーターを組み合わせた遊星歯車式ATに関する基礎技術の多くはアメリカのメーカーが特許権を持っていたため、日本の自動車メーカーは国外のメーカーと提携してATメーカーを協同設立することで、特許技術を利用したATを生産した。

1969年(昭和44年) - アイシンワーナー(現:アイシン)設立。

1970年(昭和45年) - 日産自動車、東洋工業(現マツダ)、フォードの合弁により日本自動変速機株式会社(現ジヤトコ)設立。

一方で本田技研工業は遊星歯車式を採用せず、MTと同様の歯車機構である平行軸歯車式をトルコンと組み合わせた、ホンダマチックを採用して既存特許を回避した。変速機構は常時噛み合い式MTで用いられている噛み合いクラッチの代わりに、自動制御された湿式多板クラッチで変速した。
種類

オートマチックトランスミッションは、クラッチ機構や変速機構の違いにより分類される。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:162 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef