オーディン
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北欧神話の原典に主に用いられている古ノルド語での表記は Odinn (再建音: [o?din?], オージンに近い)であり、オーディンは現代英語などへの転写形である Odin に由来する[注釈 1]

オーディンの名は "odr"(狂った、激怒した)と -inn(-の主 など)からなり、語源的には「狂気、激怒(した者)の主」を意味すると考えられる。またこうした狂気や激怒がシャーマンのトランス状態を指していると考えれば「シャーマンの主」とも解釈可能である[1]

アングロサクソン人に信仰されていた時代の本来の古英語形は ??den(W?den, ウォーデン)であり、これは現代英語にも Woden, Wodan (ウォウドゥン)として引継がれている。また、ドイツ語では Wotan, Wodan (ヴォータン、ヴォーダン)という。8世紀イタリアで書かれた『ランゴバルドの歴史(英語版)』では G(w)odan(ゴダン)という名前で言及されている[2]

各地を転々とした逸話があることから、本来は風神、嵐の神(天候神)としての神格を持っていたと考えられている[3]

タキトゥスは『ゲルマーニア』(97年 - 98年)において、ゲルマン人の最も尊崇する神をメルクリウスと呼んだが、これはギリシア・ローマのヘルメース/メルクリウスと同じく、疾行の神であったゲルマンの神ヴォーダン(オーディン)を指すものと推測される[4]

オーディンはメルクリウスと同様の知恵と計略に長けた神であり、ローマ暦で「メルクリウスの日」にあたる水曜日は、ゲルマン諸語では「オーディンの日」と呼ばれる[5]

水曜日は英語では Wednesday、ドイツ語では Wotanstag(通常はMittwoch)、オランダ語では woensdag、デンマーク語ノルウェー語スウェーデン語では onsdag となる。

また、オーディンが死と復活をしたとされる4月30日か5月1日に行われた風習はキリスト教到来以降も残り、中欧や北欧で『ヴァルプルギスの夜』の行事となった。
神話

ユグドラシルの根元にあるミーミルの泉の水を飲むことで知恵を身に付け、魔術を会得した。片目はその時の代償として失ったとされる。

また、オーディンはルーン文字の秘密を得るために、ユグドラシルの木で首を吊り、グングニルに突き刺されたまま、9日9夜、自分を創造神オーディンに捧げたが、このときは縄が切れて命を取り留めている。

オーディンとは本来この創造神の名前であり、最高神オーディンは、その功績から創造神と同じ名で呼ばれるようになったとされている。

この逸話にちなんで、オーディンに捧げる犠牲は、首に縄をかけて木に吊るし、槍で貫く。なお、タロットカードの大アルカナ XII 「吊された男」は、このときのオーディンを描いたものだという解釈がある。

棲処は神々の世界アースガルズにあるヴァーラスキャールヴであり、フリズスキャールヴに座り、世界を見渡している。

グラズヘイムにあるヴァルハラに、ワルキューレによってエインヘリャル(戦死した勇者)を集め、ラグナロクに備え大規模な演習を毎日行わせるという。この演習では敗れた者も日没とともに再び蘇り、夜は大宴会を開き、翌日にはまた演習を行うことができるとされる。

愛馬は八本足のスレイプニールフギン(=思考)、ムニン(=記憶)という2羽のワタリガラスを世界中に飛ばし、2羽が持ち帰るさまざまな情報を得ているという。また、足元にはゲリフレキ(貪欲なもの[6])という2匹のがおり、オーディンは自分の食事はこれらの狼にやって自分は葡萄酒だけを飲んで生きているという。

その姿は、主に長い髭をたくわえ、つばの広い帽子を目深に被り[注釈 2]、黒いローブを着た老人として描かれる[12]。戦場においては黄金の兜を被り[13]、青いマントを羽織って[14]黄金の鎧を着た姿で表される[15]

また、トールと口論した渡し守ハールバルズの正体は変装したオーディンである。ゲイルロズ王の城を訪ねて炎の中に座らされたグリームニルもオーディンの別の姿であった。

霜の巨人スットゥングが隠匿していた詩の蜜酒を略奪するため策略をこらした。オーディンは、に変身して蜜酒のある場所へ侵入し、蜜酒の番をしていたスットゥングの娘グンロズの前で美青年の姿になって3夜を共にした後、彼女から3口分の蜜酒を飲ませてもらった。しかしオーディンはその3口で蜜酒の3つの容器を空にすると、素早くに変身してアースガルズへ戻った。蜜酒は詩の才能のある人間たちにオーディンによって与えられることとなった。

最後はラグナロクにて、ロキの息子であるフェンリルによって飲み込まれる(または噛み殺される)結末を迎える。
エッダ詩「ハーヴァマール」

古ノルド語で書かれた歌謡集(群)である古エッダに収録されている型式の詩で、「ハーヴァマール(Havamal, 高き者の言葉)」は別名「オーディンの箴言」と和訳されている。
『デンマーク人の事績』

サクソ・グラマティクスが記した歴史書『デンマーク人の事績』第三の書ではオーティヌス[16](またはオティヌス[17])として登場する。息子のバルデルス(バルドル)をホテルス(ヘズ)に殺され、その敵を討つ子供をもうける為に、半ば強引な手段を使ってルテニ王の娘リンダ(リンド)と交わるが、それが原因で王位を追われた。しかし、後に賄賂によって復権した[18]
『ランゴバルドの歴史』

パウルス・ディアコヌスがイタリアで8世紀に記した歴史書『ランゴバルドの歴史(英語版)』が伝える伝説では、ゴダン(オーディン)は、ランゴバルド人ヴァンダル人の戦いの際、ランゴバルド人に勝利と部族名を与えた神として登場する。その伝承では、オーディンが「日の出の時最初に姿を見た者らに勝利を与える」としたのに対し、ランゴバルド人の族長の母ガンパラが一計を案じ、日の出の時に、髪の毛を髭に見えるように顔の前でまとめて男装した女たちの姿をオーディンに見せることに成功した。これによってオーディンはランゴバルド人に勝利を与える事になり、オーディンが「長い髭(ランゴバルド)の者たちは何者か」と発言したことからこれが部族名となった[2]
系譜17世紀のアイスランドの写本『AM 738 4to』に描かれたオーディン。18世紀のアイスランドの写本『NKS 1867 4to』に描かれた、フギンとムニンから報告を受けるオーディン。18世紀のアイスランドの写本『SAM 66』に描かれた、スレイプニルにまたがるオーディン。1899年に刊行された『ヘイムスクリングラ』の挿絵。ノルウェーの画家イェールハルド・ムンテによる。リヒャルト・ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』にはオーディンに相当する神「ヴォータン」が登場する。アーサー・ラッカムが描いた、8本脚の馬で天翔るヴォータン。

オーディンは半巨人的な存在である ボルと女巨人のベストラの間に生まれた。

兄弟にヴィリとヴェー[19][注釈 3]がおり、彼ら兄弟は3人で原始の巨人ユミルを殺し、世界を創造した[21][22]


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