オーガズム
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男性は射精することなくオーガズムに達すること(「ドライオーガズム」として知られる)も、オーガズムに達することなく射精することもある。夢精遅漏、無オーガズム症(英語版)の射精などが後者の例である。
女性のオーガズム

女性のオーガズムが、恐らくは人為的に、2つの異なったものとして分類されることがあるために、女性のオーガズムを巡る議論は複雑なものとなっている――陰核のオーガズムと膣(Gスポットポルチオ)のオーガズムである。

膣オーガズムという概念を単独の現象として初めて主張したのはジークムント・フロイトであった。1905年にフロイトは、陰核のオーガズムは純粋に少女期の現象であり、思春期に到達するとすぐに膣オーガズム、すなわち陰核への刺激なしで得られるオーガズムへと移行してゆくのが成熟した女性の適切な反応であると述べた。フロイトはこの基本前提に何ら証拠を示すことはなかったが、この理論の影響は大きなものであった。フロイトの説は男性の陰茎を女性の性的満足の中心に据え、多くの女性たちは陰核への刺激がほとんどもしくは全くなしで膣での性交のみを通じてオーガズムに達することができなかった時に不適切感を覚えるようになった[23][24]

フロイトの見解とは対照的に、女性の大部分は陰核への刺激によって、もしくは何らかの形での陰核刺激の補助によってのみオーガズムに達することができ、その後の研究は陰核の刺激が女性がオーガズムに達する最も簡単な方法であるということを支持している[19][20][21][25][26][27][28][29]。ゲイル・サルツ(英語版)は「女性はオーガズムに達するまでに平均で20分間の刺激と興奮を必要とする。男性はこれより遥かに短い時間しかかからない。女性は男性よりも幅広いものを刺激として感じ、またどのような刺激が最も良く機能するかを正確に定義するのも困難である。性交だけによってオーガズムに達することができるのは女性のうち20%のみであり、大多数の女性は何らかの直接的な陰核への刺激を必要とする」としている[27] 。これは陰核に6000以上もの神経繊維があるためである[26]。陰核は蹄鉄のような形で膣を取り囲んでおり[20]、陰唇に沿い、肛門の方へと伸びる「脚」(陰核脚)を有している[30]尿道海綿体(英語版)が膣の「天井」に沿って走っており、膣を介してこれを刺激することが可能であるが、膣そのものには女性に快感やオーガズムを引き起こす機構は存在していないと考えられている[20]。膣に挿入された陰茎、指、張形などと接触するのは陰核の一部、尿道海綿体だけである。「陰核の尖端と、これもまた非常に敏感な部分である小陰唇とは、性交中には直接の刺激は受けない。」[20] グレフェンベルグ・スポット、通称Gスポット恥骨の背後にあり尿道を取り巻く小さな領域であり、膣壁の前部(腹側)から触れることができる。このスポットの大きさにはかなりの個人差があるようである。こうした膣の内側の刺激から得られるオーガズムは「膣の」オーガズムと呼ばれる。

1966年に、マスターズとジョンソン(英語版)は性的刺激の段階に関する極めて重要な研究を公刊した[31]。この著作では男女の双方が扱われており、また先行するアルフレッド・キンゼイのもの(1948、1953年)とは異なりオーガズム前後の生理学的な段階を決定しようと試みている。陰核と膣のオーガズムは同じ身体的な段階を持っているとされている[32]。どちらの種類のオーガズムも陰核の刺激が主要な源になっていると夫妻は論じた[33]。陰核の大きさに関する近年の諸発見もまた、陰核の組織が膣の内部に大きく広がっていることを示している。この発見は陰核のオーガズムと膣のオーガズムが別のものであるとする従来の主張を無効化しうる可能性がある[19]。陰核と膣との繋がりは、陰核が女性のオーガズムの「源」であるという見解を補強するものである。今日では、大半の人々が「陰核」という言葉から思い浮かべる小さな目に見える部分よりも遥かに広く陰核の組織が広がっていることが明らかとなっている。これらの研究の中心的な研究者であるオーストラリアの泌尿器科学者ヘレン・オコネルは、膣による性交時の陰核の内部部分への刺激を考慮すると、この絡み合った関係がGスポットとされている部分と膣オーガズム体験に対する生理学的な説明となると主張している[19]。「膣壁は、実のところ、陰核なのです。膣の側壁の表皮を取り除けてみれば、陰核の球状部分が現れます。三角の、三日月形をした勃起性の組織です。」とオコネルは説明する。陰核は亀頭部分だけなのではなく、「小さな丘」だというのである[19]。女性の一部は他の女性に比べより広範囲な陰核組織を持っている可能性があり、それゆえに多くの女性が陰核の外部部分への直接的な刺激によってのみオーガズムに達することが出来る一方で、性交を通じた陰核のより広範な繊維への刺激だけで充分にオーガズムを得られる女性もいるのだと考えられる[19]

無オーガズム症(英語版)は十二分な性的刺激を受けた後でもオーガズムに達するのが常に困難である状態であり、個人的な悩みの原因となる。これは男性よりも女性に遥かに一般的に見られる[34]。女性の約15%がオーガズムに達するのに困難があると報告しており、またアメリカ合衆国の女性の10%は絶頂に達したことがない [25][35]。Sexualhealth.comのロバート・バーチは「標本調査に基づく統計がしばしばそうであるように、女性のオーガズムに関する数字は誰が調査され、誰が報告を行ったかによって結果にばらつきがあります。しかしながら、女性の恐らくは15%ほどは一度もオーガズムを経験したことがなく、最大で10%ほどの女性は一人で自慰をする時にしかオーガズムに達することができないようです。」と述べている[21]。ドリュー・ピンスキー(英語版)はこう述べている――男性と女性では「配線」が違っていて、さらには女性同士でも互いに違った配線がされているのです。しばしば女性たちは、絶頂のある種の標準に達することができていないために自分に欠陥があるかのように感じるようです。男性たちは、女性を絶頂させるために何が必要なのかについて概括的な理解しかしていないためにさらに事態を悪化させています。男性たちはしばしば女性たちが皆同じであると信じていて、何かが1人の女性に対して上手く行ったと思うとその方法を親密になった他の女性全てに適用しようとし、これが大きな問題の1つとなっています。女性たちの50-60%は性交を通じてオーガズムに達したことがなく、絶頂に達するには陰核の刺激を必要とします。30%は性交を通じて安定してオーガズムを得ることができます。10%は性交でオーガズムに達し、さらに連続的なオーガズムも得られる場合があります。5%は真の複数回(マルチプル)のオーガズムを性交を通じてのみ得ることができ、この範疇に入る女性はオーラルセックスを心地良く感じないのが普通です[27]

女性のオーガズムは平均して約20秒ほど続き[36]、膣、子宮、肛門を含む骨盤領域の筋肉の一連の収縮からなると推測されている。一部の女性では、当人がオーガズムが始まったと報告した直後にこれらの収縮が始まり、約1秒の間隔で、最初は徐々に強く、後には徐々に弱くなりながら継続することがある。規則的な収縮に続いて、不規則な間隔で数回の追加的な収縮もしくは震えが起こる場合もある。オーガズムに達したと報告するが、骨盤領域の収縮は全く観察されない場合もある[37]
肛門の刺激

どちらの性においても、アナルセックスなどで見られるように、肛門周辺の神経末端および肛門自体から快感を得ることができる。男性は前立腺の刺激のみによってオーガズムを得ることが可能である[38]。前立腺は直腸に隣接しており[39]、女性のGスポットと関連していると考えられているスキーン腺の男性版の相同物である[40]。ジャック・モーリンは、「肛門オーガズム」は前立腺のオーガズムとしばしば混同されているが無関係のものであると主張している[41]。陰核の「脚部」が陰唇に沿って肛門まで伸びているため、肛門の刺激は一部の女性にとっても快感を伴うものでありうる[30]
乳房と乳首の刺激

一部の女性は、性交や前戯の間に乳房を刺激されたり、さらにはただ乳房を愛撫されたりするだけで、穏やかなもしくは激しいオーガズムに達する。女性の乳房の刺激が引き金となるが、その他の点では通常の(骨盤領域の)オーガズムと同じであるため、これは「乳房オーガズム」(breast orgasm)と呼ばれている [42]。女性の大半は乳房の刺激によりこの効果を体験することはない。213名の女性に質問した研究によると、そのうち29%が少なくとも一度は乳房のオーガズムを経験したことがあった[22]


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