オルガン
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建造家としてはアリスティド・カヴァイエ=コルが特に有名である[6]
ネオバロック・オルガン

20世紀にドイツに起こった「オルガン運動」によって古い時代のオルガンが見直されるようになり、バロック時代のオルガンを模倣した「ネオバロック・オルガン」が数多く造り出された[7]。しかし、当時は過去のオルガンに関する研究が不十分であり、歴史的オルガンの修復にあたって多くの過ちを犯した。

現在は、古い時代のオルガン建造技術が尊重され、歴史的楽器の本来の音に近づくために、より慎重な修復や複製が行われるようになっている。
パイプオルガンの種類

おもに教会コンサートホールに設置される大オルガンのほかに、小型の据え置き型のポジティフ・オルガン(w:en:Positive organ)や、可搬型のポルタティフ・オルガン(オルガネット)(w:en:Portative organ)などがある。

用途や設置場所を特に意図したい場合には、「教会オルガン」「コンサート・オルガン」「ハウス・オルガン」「劇場オルガン」「シアター・オルガン」「シネマ・オルガン」などの呼び方が使われることもある。最後の3つは音楽鑑賞を主目的としないもので、録音・再生装置が広く出回る前の時代に、劇場の効果音や雰囲気づくりに使用された。たとえば映画で、音楽を奏するほか、蒸気機関車の蒸気や汽笛の音、動物の鳴き声、爆発音まで、さまざまな音をオルガンの多彩なストップを応用して模倣して出す。
オルガンの例

スイスシオン、ノートルダム・ドゥ・ヴァレール教会、1400年ごろ(演奏可能なもののうち最古)

フランスストラスブールノートルダム大聖堂、1489年

イタリアローマサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂、Luca Blasi、1599年

ドイツリューベック、聖ヤコビ教会、Stellwagen、1636年

北ドイツ・シュターデ、聖コスメ教会、B. Hussおよびアルプ・シュニットガー、1688年

北ドイツ・ノアデン、聖ルドゲリ教会、A. シュニットガー、1688年

フランス、マルムーティエ修道院教会、アンドレアス・ジルバーマン、1709年

ドイツ・ヴァインガルテン、聖マルティン教会、ヨゼフ・ガブラー、1750年

ヴァインガルテンのガブラー・オルガン(クローズアップ)

南ドイツ、オットーボイレン修道院教会、カール・ヨゼフ・リープ、1766年

ドイツ、アーモーバッハ修道院教会、Stumm工房、1774年

カナダモントリオール、ノートルダム聖堂、Casavant Freres、1891年

ポルタティフ、ドイツ、1979年

レガール、ドイツ、1978年

テーブル・ポジティフ、ドイツ、1978年

日本、横浜みなとみらいホール、1998年

日本、ポジティフ、横浜みなとみらいホール、2011年

パイプ詳細は「ストップ (オルガン)」を参照

パイプはオルガンの発音の主体であり、おもにの合金や木材で作られる。一般に装飾を兼ねて前面に配置されるパイプよりもはるかに多くのパイプがケース内部には配置されている。パイプの発音構造は大きく分けて2種類あり、それぞれフルー(英語: flue)管とリード(英語: reed)管と呼ばれる。フルー管はリコーダーと同じく歌口により発音するもので、リード管はクラリネットと同様の1枚リードの構造で発音する。またパイプの太さや、開管、閉管、半開管などの構造の違いにより多様な音色のパイプが存在する。

鍵盤に対応した一揃いのパイプ列は、それぞれに名称がつけられ、ストップと呼ばれる選択機構によって使用が選択される。またパイプ列自体をストップと呼ぶことも一般的である。パイプ列の音高はフィート律で示される。すなわち標準の音高のパイプ列は8'と表現され、それよりも1オクターヴ高いあるいは低い音高のパイプ列はそれぞれ4'、16'となる。これは一般に鍵盤の最低音であるC音のパイプの長さが、おおよそ8フィートになることに基づいている。

一般に大規模なオルガンでは、パイプ群はそれぞれが独立した小オルガンともいえるディヴィジョンに組織される。各ディヴィジョンごとに鍵盤が設けられ、それによって音色や音量の対比が可能となる[8]

パイプ3種 金属管 木製管 リード管
風箱

パイプは1つずつ風箱(英: wind chest、独: Windlade、仏: sommier、伊: somiere)と接続されている。風箱の内部は一定の気圧に与圧されており、鍵盤が押されたときに弁(パレット)が開き、パイプに風を送りこむ仕組みになっている[9]

古い時代から現在まで、もっとも多く採用されている風箱構造はトーン・チャンネル・チェストで、1音高ずつに分かれた、共通音溝に異なる管種のパイプが接続する。音高が共通する、異なる管種が同一時に発音するため、各管種が融合し、音楽的に旋律線を明確に演奏できる構造となっている。

ロマンティック・オルガンの多くには、ストップ・チャンネル・チェストが採用された。管種(ストップ)ごとの溝に分かれ、共通溝に同一管種のパイプが接続する。同一管種へ供給する風が共通の溝を通るため、ロマンティック・オルガン特有の個々の音色ごとに解け合った響きとなる。
送風装置

風箱への空気の供給は、19世紀中頃までは人力によるふいごによって行われた。小型のオルガンでは演奏者自身がふいごを操作するものもあるが、より大型のオルガンでは演奏者の他にふいご手を必要とした。19世紀後半から人力に代えて蒸気機関などを用いることが行われ、20世紀に入るころから電力式の送風装置が登場して、非常に大きな風圧も容易に得られるようになった。しかし、20世紀末からは伝統的な送風機構の音楽的な価値が見直されるようになり、電力による送風に加えて、手動のふいごによる送風が可能なものも作られている[1]
スウェル

スウェルは連続的な音量の変化を得るために、パイプ群を箱(スウェル・ボックス)に納め、可動式の鎧戸(スウェル・シャッター)を設けたものである。演奏者がペダルを操作することによってシャッターが開閉し、音量の変化が得られる。シャッターの各板は、かつては水平に設置されていたが、動作にかかる負荷が大きいため、現在では垂直に設置されることが多い。
演奏機構
キー・アクション

キー・アクションは鍵盤の動きによって風箱のパレットを開閉するための仕組みである。

トラッカー・アクションは鍵盤とパレットが機械的に直接結合しているものであり、古くから存在するもっとも基本的なものである。鍵盤の動きが直接パレットを動かすため微細なニュアンスの表現が可能である。また、風圧によってキーを押したときに独特の抵抗感を持つ感触が得られ、これが演奏者と楽器の結びつきを強める。これらの長所から、現代でもトラッカー・アクションは広く使用されている[10]

バーカー・レバー・アクションは、空気圧のモーターを用いて鍵盤操作に要する力を軽減したものである[11]。一般に大オルガンなどに組み込まれた装置で、中小規模のオルガンでは使われない。19世紀初頭のオルガンは高い風圧のために鍵盤が非常に重くなり、オルガン奏者に過大な負担を強いていた。バーカー(Charles Spackmann Barker、英)が1832年にバーカー・レバーを発明、1839年、フランスで特許を得た。カヴァイエ=コル (Aristide Cavaille-Coll) はこの発明を自身設計のオルガンに大々的に組み込んだ。バーカー・レバー・アクションはトラッカー・アクションに近いキーの感触を持つが、パレットを開閉する速度の制御はできない。

19世紀後半にはニューマティック・アクションが開発された。これは直接的な結合をすべて空気管で置き換えたもので、演奏台をパイプから離れた位置に置くこともできる。しかしトラッカー・アクションの持っていた感触はなく、しばしば反応が鈍い。

エレクトリック・アクションは電磁石を利用してパレットを開閉するものである。鍵盤と風箱の間は電線でつながれるため、演奏台の配置は完全に自由である。電気の伝達速度は瞬間的であるが、アクションの作動速度は開閉機構の品質により、必ずしも瞬間的な反応を示すわけではない。鍵盤は単なる電気スイッチであるが、トラッカー・アクションに似せた感触が作られることもある。
ローラー・ボード

ローラー・ボードは、トラッカー・アクションでキーの上下の動きを横方向に伝達するための機構である[12]。キーの上下動でパレットを開閉するためには、鍵盤の各キーの直上に各パイプが配置されるのが理想であるが、多くのオルガンでは、パイプとキーの位置が一致しないため必要となる。歴史的には600年以上も前、ゴシック時代のオルガンにすでに導入されていた。


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