オリコンチャート
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一方でビルボードジャパンはルックアップのデータによって握手券商法の影響を取り除いた順位がわかるという理由で[10]、複数購入による減算処理はしておらず[11]、実売はそのままカウントしている[10]。そのため販促イベントを行なっているアーティスト(主に女性アイドルやK-POP系)はビルボードより売り上げ枚数が数万枚から15万枚ほど少ない傾向にあり、時には20万枚以上少ないケースもある[12]

極端に開いたものとしては、AKB48選抜総選挙投票券付きCD売上がある。2015年の投票券付きCD 「僕たちは戦わない」はレコード会社が出荷枚数300万枚を突破と発表しているが[13][14]、オリコンの年間ランキングでは100万枚以上少なく[15]、翌年の「翼はいらない」はビルボード年間ランキングの251万枚に対し[16]、オリコンでは152万枚だった[17][注釈 4]日本レコード協会(RIAJ)認定との比較でも、AKBのシングルCDでは2ミリオン(=200万枚達成)としてRIAJ認定されたものが8件存在するが、オリコンでは2023年4月現在、0件である。
オリコンチャートの課題と問題点

音楽チャート業界では、日刊レコード特信(特信チャート)、ミュージック・ラボ(休刊)→電波新聞、ミュージック・リサーチ(休刊)、プラネットサウンドスキャンジャパンといった同業他社がいる(いた)ものの、オリコンチャートの影響力は大きく、長らくアメリカの「ビルボード」誌と同様、音楽界での評価指標として真っ先に用いられてきた。

オリコンチャートが権威をもつようになったのは、オリコン創業者の小池聰行の尽力によるところが大きい。小池は多くの音楽メディアにオリコンチャートを掲載するよう依頼し、知名度を高めてきた[18]

しかし、2010年代半ば頃からメディアがオリコンからビルボードに切り替え始める[19]。オリコンランキングの上位が特定のジャンルばかりになったためとされる(原因は下記に記述)。

2000年代後半より、特にシングルCD市場の急激な規模縮小(一方でそれを補う形での音楽配信市場の拡大)[注釈 5] に伴い、件数ベースで音楽フル配信の1/4程度、金額ベースで同6割程度まで落ち込んだシングルCDの売上件数表示だけでは、市場における実勢(音楽市場全体として、当代どの曲が最も愛好されているかという実勢)を必ずしも捉えきれなくなった[注釈 6]

具体的には、
単品音楽市場の一般的消費の大部分が、(価格の圧倒的安さ・利便性を背景に)ダウンロード、その後サブスクリプションへと移行したため、シングルCDという商品の役割も、配信にマッチしない高年齢層需要や、外装に重きを置くコアファン向けなど、補助的・ニッチ的なものへと変質した。そうした中で、コアファンをターゲットとしたシングルCDのアイテム化・おまけ等の高付加価値化や、時にはチャートインそれ自体を目的化したマーケティング[20] も推進されるようになった。さらに、2000年代後半頃から異なるカップリング曲を収録した複数の盤種やイベントなどの特典を目的とした複数枚購入させる商法が常態化していく。これらにより、かつての100万枚の売上=100万人が購入というような図式が崩壊し、音楽を聴く目的以外での複数購入が主流となり、楽曲やアーティストの人気を測るのが困難となっていった。その結果、CDランキング上位曲とは言っても、世間一般の認知が薄い(従前、コアファンにのみ愛好されてきた分野の)楽曲が当チャートの上位を占めるに至り、前世紀のような「一般消費者にとって、最も音楽の流行がわかる資料」という意味合いがなくなっていった。

送り手(アーティストおよび事業者)の販売戦略による影響。CD限定の作品(音楽配信に消極的なジャニーズ事務所系等)が当チャートの上位を占める一方で、シングルCDによらない配信中心の戦略を採るアーティストのほうが近年むしろ実需をつかんでいるため、当チャートと音楽配信チャートでは全く別の結果となることも多い。加えて、シングルCDの発売時期がフル配信よりも劣後する場合には(例:Prisoner Of Love)需要期を過ぎた後のCD発売となるため、フル配信ではミリオンヒットでも、オリコンでは年間50 - 90位以下という事例もある。参考に、2009年発売分における日本レコード協会認定の音楽配信ミリオン作品(着うたフル)は5曲存在したが[注釈 7]、同オリコン年間ランキングでは全て10位圏外であり、件数で上回る音楽配信チャートとの乖離が顕著となった[注釈 8]

2位以下 - 中位の権威の希薄化。当チャート1位となる一部のトップアイドルが30万 - 100万枚超の週間売上となる一方、2位以下は1 - 2万枚前後の推移が常態化しており[21]、10位で5千枚を切ることもある。こうして、チャート上位に入るハードルが下がったことにより、事業者による宣伝色が強まりチャートの信頼性や価値が揺らいでしまうのではないかとの指摘もある[22]

当初、オリコンはCD売上とダウンロード売上を合算した「複合ランキング」を作成することには消極的であった。2008年小池恒社長は「配信チャートはレコード会社の発表をうのみにするしかない。CDのように店頭での自主調査を積み上げるようにはいかず、統合チャートは作りにくい」と語っていた[23]2015年の小池へのインタビュー記事でも、音楽配信に消極的な事務所やアーティストがいることなどを理由に、複合ランキングの作成には「調整に時間がかかる」としていた[24]

しかし、こうした音楽消費動向の大幅な変動もあり、オリコンとしても実態を反映すべく、従来の売り上げ単独のチャートだけでなく複合ランキングを新設する旨の方針が2018年1月に新聞報道され[25]、同年8月29日付けリリースにて、「1.CDシングル、2.ダウンロード単曲、3.ダウンロードシングルバンドル、4.ストリーミング」を「換算売上ポイント」で数値化した「週間合算シングルランキング」を同年12月19日から新設することが発表された[26]。ただし、当初報じられていたSpotify売上の算入は見送られた(その後2022年に集計対象に追加)。なお、合算方式の発表は週間ベースにとどまり、デイリー・月間・週間・年間において従来のCD売上件数方式が継続されている[注釈 9]

音楽ジャーナリストの柴那典は上記の施策について、既にオリコンのCDランキングは「ヒットを可視化する」という意味では数年前から機能不全を起こしていた、と指摘している。新設されたストリーミングランキングの集計対象に世界最大手のSpotifyが入らなかったことについては、ランキングの設計を「有料会員によるストリーム数」にこだわったことが理由ではないか、と述べている。また、新たな複合音楽チャートとしてビルボードジャパンが提供する「Billboard Japan Hot 100」が注目を集めるようになってきているが、同じ複合型チャートでもオリコンとビルボードのヒットチャートの設計思想は異なっているという。流行を可視化するため音楽との「接触」も重視するビルボードに対して、「オリコン週間合算ランキング」はあくまで「売上ランキング」として設計されていると指摘している[27]

このため、複数枚購入商法が主流で単価の高いCDの比重が極端に高く、単価の低いダウンロードや近年、音楽を聴くツールの主流となっているストリーミングの比重が低いものになっている。

ジャーナリストの松谷創一郎は、サブスクリプション型のストリーミングサービスが普及したことにより、「音楽チャートもそれによって変化した。CDセールスに依存してばかりのオリコンランキングは完全に信用を失い、代わりに常に指標の調整を続けるビルボード・チャートの信用度が高まった」としている[28]
ダウンロード集計の遅れによる影響

日本国外では、米国ビルボードチャート全英シングルチャートiTunes Music Store成長期の2005年にデジタル・ダウンロードの集計を開始し、CDやレコード等のフィジカルと合算するなど、インターネットの普及に伴う音楽メディアの変化に対応した。一方で、前述の通りオリコンチャートは2017年までデジタル・ダウンロードの集計を行っていないため、着うたフルやiTunes Music Storeでの販売実績を捕捉できていない。

松谷創一郎は、オリコンの対応が遅れたことで2006年?2015年頃にかけて日本の音楽シーンが不鮮明となり“ヒット”が見えにくい「J-POPの失われた10年」が生じたと指摘している[29]
集計対象

(正式スタート - 終了)
現行

合算シングルランキング 2018年12月24日付
[30] -CDシングルの売り上げ枚数、ダウンロード配信における収録曲単曲または作品をまとめて(バンドル)の購入数、ストリーミング配信における再生数をそれぞれポイント化し、それを合算。

合算アルバムランキング 2018年12月24日付[31] -CDアルバムの売り上げ枚数、ダウンロード配信における作品購入数(バンドルのみ)、ストリーミング配信における再生数をそれぞれポイント化し、それを合算。

シングルランキング 1968年1月4日付 -


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