オランダ
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オランダでは前置詞 「van」(ファン)を含んだ姓(Achternaam)が多く見られる[注釈 10]。vanは英語のofあるいはfromの意味を持ち、出身地を示すが、現代ではもとの意味はほとんど失われている。英語圏で見られるようなミドルネームは持たない。複数の個人名(Voornaam)を持つこともあるが、日常的に用いるのはそのうちの一つだけであり、ほとんどの場合はファーストネームを使う。そのため大部分の人はファーストネーム・姓の組み合わせで広く知られることになるが、フルネームでもっともよく認識されている場合もある。貴族の家系ではHuyssen van Kattendijkeなどの複合姓を持つこともあり、この場合、Huyssenはファーストネームではない。騎士に対応する称号としてはridderが知られる。

ファーストネームが複雑な場合には省略した通称で呼ばれることもあり、たとえばHieronymuschが通称Jeroenなどとなる。大きな契約や結婚、IDカードなど以外には通称を用いるのが普通である。複数の個人名を持っている場合、通称も複数個からなるものを用いることがある。
宗教詳細は「オランダの宗教(英語版)」を参照

現在のオランダ国民は世界でもっとも宗教に関心がない国民の一つとされる。過去にスペインを本拠とするハプスブルク家の領土、オランダ改革派の台頭、インドネシア占領を経験して、2015年の統計では国民の50.1%が宗教に関心がない、43.8%がクリスチャンで(23.7%がカトリック、15.5%がオランダ・プロテスタント教会Protestantse Kerk in Nederland、残りその他)、4.9%がイスラーム、残りがその他の宗教という状態であった[83]

一方で日曜日安息日とするキリスト教の思想は労働法制や国民性に影響を与えている[76]
教育詳細は「オランダの教育」を参照

オランダでは、憲法に「教育の三つの自由」という考え方があり、200人の生徒を集めれば、法律に違反しない限り、どのような学校を作ってもよい。このように、オランダでは、学校単位で広い権限が与えられているため、一概にオランダ全土の教育の特徴を一言で語ることは難しい。厳格な教育を特徴とする学校もあれば、宗教色を全面に出す学校、自由度の高い教育を特徴とする学校もある。12歳の段階で、CITOテストという全国規模での学力テストが実施され、その時点での成績に応じて進学先を決めることになる[84][85]。「オランダにおけるオープンアクセス(英語版)」も参照
保健詳細は「オランダの医療」および「オランダの薬物政策」を参照

オランダにおいてはユニバーサルヘルスケアが達成され、強制保険システムとなっており、医療保険は民間企業が引受けている。

2016年にオランダは、どの国が欧州において最高の医療システムを持っているかを調査する欧州保健消費者指数(Euro Health Consumer Index, EHCI)において、1,000点中の916点を獲得し1位となった[86]。2005年以降のEHCIにおいては毎年ベスト3を保ち、評価項目の48つにおいては、欧州37か国において6年間トップでありつづけた。
社会
多文化社会

オランダは元々柱状化社会であり、これはオランダ社会の秩序維持の象徴だった[87]。柱状化社会とは、19世紀に形成された宗教を基盤にしたサブ・カルチャーに始まるもので、宗教、階級、言語を基盤とした複数のサブ・カルチャーに分割された多元主義社会であり、オランダ、ベルギー、スイス、オーストリアの中欧四カ国の政治社会体制の特徴であった[88]

柱状化社会は、近代化に伴い伝統社会が揺らぐ中で、19世紀に教会がブルジョアジー自由主義に由来する「反権威主義」、社会主義の登場(なかでも 1848年革命)による「社会主義的な労働運動の進展」という「悪影響」から信者を守ろうと、独自に信者の組織化を試みたことに始まり、カトリック派(カトリック人民党(英語版))、カルヴァン派(反革命党(英語版))、世俗自由主義(自由党)、社会主義(労働党)という4つの柱に収斂した[87][88]。これらの集団が柱のように並立して縦割り社会を形成して平和的に共存し、各柱はそれぞれ、メディア(新聞、放送)、学校、労働組合、スポーツ・社交団体等を持っており、人々は所属する柱のなかで一生を完結することができた[87]。オランダは従来、多文化主義に基づく「寛容の王国」と見られてきた[88]

1960年代に都市化と社会移動が急速に進み、宗教に対する世俗化の波が柱の存在意義を脅かし[87]、柱状化社会は次第に崩れ、現在ではすでに解体してしまったといわれる[88]。1970年代には労働力不足を補うために移民が増加し、やがてイスラームが外国人労働者の主流となり、彼らは柱状化社会が残した信教・教育の自由といった基本原則や仕組みに支えられ、柱(集団)を形成していった[88]。1990年代から移民2世、3世の失業と社会的不適応の問題が深刻化し、労働、教育政策などの社会統合政策の強化といった対策が行われてはいたが、2004年にイスラーム社会を糾弾してきた映画監督テオ・ファン・ゴッホが移民2世の青年に暗殺される事件等を経て、国内でもオランダ・モデルへの批判が強まった[88]
労働市場OECD各国の雇用者におけるパートタイマー割合(%)[89]

ワッセナー合意を経た結果、同国はパートタイム大国であり、労働者の3人に1人がパートタイム労働者となった[90][89]。法的に同一労働同一賃金が義務づけられ、フルタイムとパートタイムを自由に切り替えることができる[90]。労働者の権利保護が強く、トラックドライバーの時間規制は国内を通過する他国のトラックにも影響を与えている[76]
サイバーセキュリティ

オランダ政府はサイバーセキュリティを重要視しており、2023年にサイバーセキュリティ相談窓口を開設した。2024年10月には、各組織におけるインターネットの脆弱性に関する私的な警告が発せられる予定である[91]
法律

オランダでは成人として正式に認められる年齢が18歳からとなっている。また、刑法第240b条に従い、実写風の架空児童ポルノへのアクセスや所持などは違法である[92][93]。2010年のある事件では、コンピュータで作成された問題の画像を閲覧したあと、裁判所は、実写風でない仮想児童ポルノ画像は刑法に該当しないとの意見を述べた[94]
平和

オランダは、他者の人権の受け入れ、汚職の少なさ、情報の自由な流れ、良好なビジネス環境、高いレベルの人的資本、資源の公平な配分、十分に機能する政府、および近隣諸国との良好な関係によって決まる2022年の積極的平和指数で世界第6位を獲得した。特に、「近隣諸国との良好な関係の構築」については、オランダが世界第1位となっている[95][11]
治安

経済平和研究所によると、2023年の世界平和指数ではオランダは世界ランキング16位であり、9位の日本と比べると安全性は劣る[96]

テロに関しては2019年3月にユトレヒト市内のトラム車内において銃撃事件が発生したほか、最近でもテロを計画したとされる者が逮捕されたなどの報告が挙げられている。最近では、右翼過激派によるテロの脅威も懸念されている[97]
人権詳細は「オランダの人権(英語版)」を参照

同国における人権は憲法(英語版)で成文化されている。また、性役割は1970年代は「男は仕事、女は家庭」だったが、その後は変化し女性も労働市場へ参加するようになっている[98]。労働者の権利が強力に保証されており、公務員にもデモの権利が与えられている[76]

移民受け入れで有名なオランダだが、オランダ人もまた他国へ移住することが多い。特に言語、文化などで共通点が多く、税金などがオランダに比べて安い隣国のドイツへ移住することが多い。同じEUということもあり、ドイツへの移住は気軽に行われている。

非明示的で微妙な差別は、明示的な差別よりもはるかに有害で[99]深刻な結果をもたらす可能性があるためか[100]、オランダ政府は非明示的で微妙な差別への対応に特に力を入れている[101]


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