オペラ座の怪人_(1986年のミュージカル)
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アイデア

1984年、ロイド・ウェバーは『キャッツ』、『ソング・アンド・ダンス』の共同プロデューサーのキャメロン・マッキントッシュに新たなミュージカル製作について連絡を取った。ロマンティックな作品を望み、ガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』を提案した。2人は1925年のロン・チェイニー主演映画『オペラの怪人』と1943年のクロード・レインズ主演映画『オペラの怪人』を鑑賞したが、どちらの映画も舞台化への現実味を感じられなかった。その後ニューヨークでロイド・ウェバーはルルーのオリジナルの古本を見つけ、ミュージカル化のインスピレーションが湧いてきた。「当時私は他の作品を書いていたが、私は壮大なロマンティック・ストーリーを書こうとして行き詰っていた。私がこの仕事を始めてからずっとやりたかったことだ。そして怪人がそこにあったのだ」[13]
歌詞

ロイド・ウェバーは、ジム・スタインマンの暗く強迫的な歌詞を気に入り作詞を依頼しようとしたが、ボニー・タイラーのアルバムに専念するため断られた[14]。その後アラン・ジェイ・ラーナーが採用されたが、その直後病気になり降板せざるを得なかった。『Masquerade 』などの曲に関わったがクレジットされていない[15][16]。『スターライトエクスプレス』の作詞家リチャード・スティルゴーがこの公演のオリジナルの曲のほとんどの作詞を行なった。当時ほぼ無名の若い作詞家チャールズ・ハートがのちに歌詞の多くを書き直した。しかし最終版ではスティルゴーのオリジナルの歌詞もいくつか残った[17]

1976年のケン・ヒル(英語版)によるミュージカル『オペラ座の怪人』の一部から着想を得て[18]、ロイド・ウェバーの曲は時々オペラ的スタイルであるが、全体的にミュージカル的な曲が主流である。本格的なオペラ的曲は主にアンドレとファーミン、カルロッタ、ピアンギなどの脇役のために作曲された。彼らはまた『ハンニバル』、『イルムート』、怪人の作品『ドンファンの勝利』など劇中のオペラに出演している。ここでロイド・ウェバーはジャコモ・マイアベーアからヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトギルバート・アンド・サリヴァンまで様々なスタイルのグランド・オペラを模倣している[19]。これらは主にミュージカル調に使用され、劇中劇であることを明確にするため台詞が入ったりそれなりのアクションが取られたりする。後半に登場する怪人のオペラの『ドンファンの勝利』の抜粋は不協和音の現代音楽であり、当時としては前衛的過ぎることを意味しているとされる[20]
デザイン、演出、振付

マリア・ビョルンソンは舞台装置と、『Masquerade 』のシーンでの精巧なドレスを含む200着以上の衣裳をデザインした。シャンデリア、地下のゴンドラ、螺旋階段を含む彼女がデザインした舞台装置は様々な賞を受賞した[21][22]。『キャバレー』、『キャンディード』、『フォリーズ』、ロイド・ウェバーの『エビータ』を演出したハロルド・プリンスが演出を担当し、『キャッツ』の副演出および演出のジリアン・リンが舞台監督および振付を行なった。
シドモントンでのプレビュー公演

1985年、ロイド・ウェバーの家のあるシドモントンで、コルム・ウィルキンソン(のちのトロント公演主演)が怪人役、サラ・ブライトマンがクリスティン役(のちのクリスティーヌ役)、クライヴ・カーター(のちのロンドン公演出演者)がラウル役に配役され初のプレビュー公演が行われた。初期の上演だったため、改変されていないリチャード・スティルゴーのオリジナルの歌詞が使用され、『What Has Time Done to Me 』(『Think of Me 』)、『Papers 』(『Notes 』)などこの時に使用された曲名の多くはのちに変更された。怪人のオリジナルの仮面は顔全体を覆っており、役者の視界を狭め、声を籠らせるものであった。ビョルンソンは現在この作品の象徴ともなっている半分の仮面をデザインし、また仮面のない場面を追加した[17]。このプレビュー公演の模様は2004年の映画版のDVDに収録された[23]
ウエスト・エンドでの初公演

1986年9月27日、ロンドンのウエスト・エンドにあるハー・マジェスティーズ劇場にて、ハロルド・プリンス演出のもとプレビュー公演が開幕し、10月9日、正式に開幕した。ジリアン・リンが振付、マリア・ビョルンソンが装置デザイン、アンドリュー・ブリッジが照明を担当した[24]。マイケル・クロフォードがタイトル・ロールを演じ、サラ・ブライトマンがクリスティーヌ役、スティーヴ・バートンがラウル役を演じた。この公演は現在もこの劇場で上演中であり、2010年10月23日に上演1万回を迎え、ロイド・ウェバーやオリジナル怪人役マイケル・クロフォードなどが出席した。ウエスト・エンドおよび世界で『レ・ミゼラブル』に次いで2番目に長いミュージカルで、『ねずみとり』に次いで3番目に長い舞台作品となっている[25][26]

2011年10月1日、2日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールにて25周年記念公演が行われ、世界中の映画館で生中継された[27]。キャメロン・マッキントッシュがプロデュース、ローレンス・コナーが演出、ジリアン・リンが舞台監督および振付、マット・キンリーが装置デザイン、マリア・ビョルンソンが衣裳デザイン、パトリック・ウッドロフが照明デザイン、ミック・ポッターが音響デザインを担当した。ラミン・カリムルーが怪人役、シエラ・ボーゲスがクリスティーヌ役、ハドリー・フレイザーがラウル役、ワイン・エヴァンズがピアンギ役、ウエンディ・ファーガソンがカルロッタ役、バリー・ジェイムスがムッシュ・ファルマン役、ギャレス・スヌークがムッシュ・アンドレ役、リズ・ロバートソンがマダム・ジリー役、デイジー・マウッドがメグ・ジリー役に配役された。ロイド・ウェバーと、クロフォードやブライトマンなどのオリジナル・キャストが出席した。2012年2月、DVDとブルーレイがリリースされ[28]、2012年3月、PBSの『Great Performances 』で放送された[27]

2012年3月、25周年を記念してローレンス・コナー演出の新たなプロダクションがロイヤル・プリマス劇場からイギリスおよびアイルランドでツアー公演を始め、マンチェスター、ブリストル、ダブリン、リーズ、エディンバラ、ミルトン・キーンズ、カーディフ、サウサンプトンで上演した。ジョン・オウエン・ジョーンズとアール・カーペンターが怪人役ダブル・キャスト、ケイティ・ホールがクリスティーヌ役、サイモン・ベイリーがラウル役に配役された[29]
あらすじ
プロローグ

1905年、オペラ・ポピュレールにて[30][31]、舞台用小道具がオークションにかけられる。年老いたラウル・シャニュイ子爵が競り落としたロット665は猿の形をした張り子のオルゴールである。彼はそれを見て悲し気に「彼女の言った通りだ」と語る。続くロット666は古びたシャンデリアで、競売人は「謎に包まれたオペラ座の怪人にまつわる変わった出来事」と関係するものだと説明する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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