オペラ・ブッファ
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ロッシーニの『セビリアの理髪師』(1816年)が純粋に喜劇的な作品である一方、モーツァルトの『フィガロの結婚』(1786年)には劇的効果や悲哀感が加えられている。『コジ・ファン・トゥッテ』も同様であり、『ドン・ジョヴァンニ』となると、音楽面、ドラマ面ともに、もはや喜劇と呼び得るかすら微妙なところまで来ている。モーツァルトの三作品はイタリア語作品ながら作曲者、初演場所などを含めて神聖ローマ帝国で育まれてドイツオペラの歴史に強い影響を及ぼし、今日もなお非常に高い人気を誇る。結果として、ロッシーニ作品やドニゼッティ作品などとともに、オペラ・ブッファは今日の歌劇場レパートリーで重要な一角を占め続けている。

その後、19世紀前半からは、製作の拠点に新たにミラノが加わりながら、ファリネッリ、ヴィンツェンツォ・フィオラヴァンティ、ロッシーニ、モスカ、パヴェージ、そしてドニゼッティによって、ブッファの第3の黄金期を迎える。その後、イタリア統一運動の中で社会が混乱すると、特にブッファを上演していた民間劇場ではそれぞれ愛国的な喜劇オペラが好まれ、統一派に対する文化的な砦となっていたが、その他興味深いのが、この時期の「パロディ・オペラ」である。ヴェルディの『トロヴァトーレ』や『アイーダ』が宮廷劇場で上演される一方、近くの民間劇場では、これらをパロディにした喜劇オペラが上演されている。しかし、これらの研究はいまだ進んでおらず、今後の研究に期待される。その後、ポンキエッリなどを最後に、このジャンルは19世紀後半には衰退し、一般には1893年に発表されたヴェルディの『ファルスタッフ』が最後のオペラ・ブッファであると見なされているが、20世紀前半の新古典主義音楽の時代にはブッファのスタイルを取り入れた近代的オペラも書かれている。

オペラ・ブッファの重要な様相の一つは、18世紀後半には宮廷での地位も確立したことであり、これによりオペラ・セリアもまたオペラ・ブッファの様式から影響を受けることになった。とりわけ、1780年代以降のオペラ・セリアには、ブッファの語法であった「イントロドゥツィオーネ」、「アンサンブル・フィナーレ」が導入されているが、その勢いはイタリアで上演されたセリア作品の総数の半分以上にまでおよんでいたことが、ロレンツォ・マッテイによる浩瀚な博士論文(ローマ大学、2003年)により実証されている。これは、ブッファの人気に反比例するかのように斜陽となっていた宮廷劇場の経営改善のために、興行師が意図してブッファ様式を導入させたものと推測され、作品、作曲家の側からの研究だけでなく、劇場経営の動向から研究を進める必要がある。

フランスの百科全書派はオペラ・ブッファを、当時用いられていた不可避の体制への明確な反発であり、作曲の自由の象徴となったと見なしていた。実際、オペラ・ブッファの製作の拠点であったナポリの例では、喜劇オペラを振興したマリア・カロリーナ王妃をはじめ、民間劇場の予約者たちの貴族の多くは「自由、平等、博愛」を標榜するフリーメイソンに参加しており、そこで上演される作品群にもまた「自由、平等、博愛」というサインが示されている。1768年から1780年代にかけて、ナポリのヌォーヴォ劇場で「異国オペラ」が数多く上演されたのも、それがジェームズ・クックタヒチ到着など社会の反映だけでなく、さらには東洋を意味する「オリエント」という言葉がフリーメイソン的には「」を意味するからとも考えることができる。これは、収支バランスをとるべく、観客の意向が重要であったオペラ・ブッファにとりわけ必要となる観客のニーズに応えようとする、興行師の方針だったものと推測されるが、さらに、あるケースでは興行師そのものがフリーメイソン貴族によって「雇われていた」という事実も発見できる。
オペラ・ブッファを作曲した主な作曲家

本文に記載のある人物を除く。

ニコロ・ピッチンニ

パスクァーレ・アンフォッシ

ジョヴァンニ・パイジエッロ

ドメニコ・チマローザ

アントニオ・サリエリ

ビセンテ・マルティーン・イ・ソレル

エルマンノ・ヴォルフ=フェラーリ - 20世紀の作曲家であるが、オペラ・ブッファを思わせる作風を特徴とした。

出典

Opera buffa by Piero Weiss and Julian Budden, in "The New Grove Dictionary of Opera", ed. Stanley Sadie (London, 1992)
ISBN 0-333-73432-7

関連項目

ジングシュピール

典拠管理データベース: 国立図書館

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