オピオイド
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依存症詳細は「オピオイド使用障害」を参照

オピオイド依存症であるかは、当初の想定よりも使用量が増加し離脱症状を呈する、薬物の使用が制御できない、またそれらによって引き起こされた機能的な状態が重症であるなどの、いくつかの診断基準を満たすかに基づいて診断されうる。

2008年のレビューでは、依存率は全体として3.3%であり、アルコールや薬物依存の既往歴のある場合に5%、そうでない場合に0.2%であった[12]。アメリカでは、2000年以降にジアセチルモルヒネ(ヘロイン)を乱用した者の75%が、処方薬のオピオイドによって乱用を開始している[13]。オピオイド使用障害は、意図しない過剰摂取による死亡だけでなく、自殺と関連しておりアメリカでのオピオイドの使用が深刻化した結果、自殺率も上昇してきた[14]

依存症の治療は、半減期の長いオピオイドであるメタドンや、より新しいものではオピオイド受容体に作用するブプレノルフィンに置換して漸減するのが標準的である。活性成分イボガインを含む幻覚剤であるイボガを用いた治療は、標準的でない治療法として実施している施設がある。
離脱症状「離脱」も参照

オピオイドによる離脱症候群には、渇望、不安、不快、あくび、発汗、立毛(鳥肌)、流涙、鼻漏、不眠、吐き気や嘔吐、下痢、痙攣、筋肉痛、また発熱が含まれる[2]

モルヒネやジアセチルモルヒネ(ヘロイン)などの短時間作用型の薬物では、離脱症状は最後の摂取から8?12時間以内に発症し、48?72時間でピークに達し、7?10日後にかけて消えていく[2]。メサドンなどの長時間作用型の薬剤では、離脱症状の発症は1?3日であることもあり、一般的により軽度の症状が長く続く[2]

遷延性離脱として、上記のような急性の離脱症状に続き、数週間から数か月にわたってあまり明確ではない症状が生じることがある[2]
ガイドライン

2014年には、アメリカ神経学会がオピオイドによる死亡の増加から声明を出しており[15]、頭痛、腰痛、線維筋痛症などの慢性疼痛状態では、薬剤使用の利益を危険性の方がはるかに上回るとした[6]。これは最良の方法を挙げており、処方を行う前に処方データ監視プログラム(PDMP)を確認することや、1日にモルヒネに換算して80?120mgに相当する場合には、疼痛管理の専門家に相談することが含まれている[6]。死亡の増加によりアメリカ疾病予防管理センター (CDC) は2016年にガイドラインを公開しており、それは慢性疼痛では運動や認知行動療法のような非薬物療法や他の薬物療法を推奨し、オピオイドは最小有効量で使用して定期的に痛みが改善しているか観察することが必要であるとしている[16]。その後、CDCのガイドラインでオピオイドの使用削減を勧告した執筆者たちは2019年のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンで、使用削減の結果が患者に「深刻な危害」をもたらしているようだと警告し、CDCは2016年のガイドラインを見直し、オピオイド使用削減の呼びかけを訂正した[17]
薬理学
作用機序

オピオイドとオピオイドレセプターの結合によりGタンパク質を介して神経細胞の過分極が生じて神経伝達系が抑制されると考えられている。しかし、その神経回路などについては不明な点が多い。Gタンパク質はそれぞれのレセプターに関与するイオンチャネルに作用すると考えられているが、その詳細は明らかになっていない。
薬物動態

モルヒネ、フェンタニル、レミフェンタニルの薬物動態における特性を示す。

モルヒネ、フェンタニル、レミフェンタニルの薬物動態の比較モルヒネフェンタニルレミフェンタニル
pKa8.08.47.1
ph7.4におけるイオン化率77>9033?
脂溶性(オクタノール/水分配係数)1.481317.9
血漿蛋白結合率(%)20?408480?
定常状態での分布容量(Vdss)(L/kg)3?53?50.2?0.3
クリアランス(mL/min/Kg)15?3010?2030?40

フェンタニルは、脂溶性が高いために定常状態における分布容積が大きいことが特徴で、血中濃度の低下には再分布が大きな意味をもつ。レミフェンタニルはエステル構造を有し、血中あるいは組織中のエステラーゼにより速やかに分解される。生体に投与されたモルヒネの約60%は肝臓で、残りは腎臓で代謝される。肝臓で代謝されたモルヒネはモルヒネ3グルクロナイド(M3G)とモルヒネ6グルクロナイド(M6G)になる。 M3Gには鎮痛作用はないが、M6Gの鎮痛作用はモルヒネよりも強いと言われている。腎不全患者ではM6Gの排出が遅れて著しい呼吸抑制をきたす可能性がある。

フェンタニルは肝臓で速やかに代謝されるが、その代謝産物にはほとんど鎮痛作用がない。レミフェンタニルは投与中止とともに速やかに血中濃度が低下するため、術後呼吸抑制の心配が少ない。そのため超短時間作用性オピオイドとして有用であるが、投与中止により速やかに鎮痛効果が消失するので、術後の疼痛対策が必須である[18]。 
薬理作用
鎮痛作用
鎮痛のメカニズムに関しては不明な点が多いが、解明されつつある。オピオイドは、脊髄後角において一次知覚神経線維末端からのサブスタンスPやグルタミン酸のような神経伝達物質の放出を抑制し、脊髄後角に存在する侵害ニューロンの興奮を抑制する。このような作用以外に、オピオイドが中脳水道周囲灰白質に作用することにより下行抑制系(ノルアドレナリン作動性およびセロトニン作動性)が活性化されることによる脊髄後角における鎮痛作用を示す機序もある。さらに、視床、大脳皮質のレベルにおいても鎮痛作用が現れる。 このように、オピオイドの鎮痛作用は中枢神経系内の1ヶ所における作用では説明できない。さらに、末梢神経におけるオピオイドの鎮痛作用も報告されている。 薬剤の種類によって鎮痛作用の力価には差がある。鎮痛作用力価の比の目安をモルヒネ:1とすると、フェンタニル:100、スフェンタニル:500 、アルフェンタニル:1 、レミフェンタニル:500 である。 鎮痛作用は個人差が大きい。また鎮痛効果と呼吸抑制や鎮静作用も必ずしも並行しない。参考値を表にまとめる。+の数がアゴニストの強さ、?の数がアンタゴニストの強さである。

物質名μ親和性κ親和性同効果(mg)最大効果(min)持続時間(hr)
モルヒネ++++1020?303?4
フェンタニル+++00.13?50.5?1.0
レミフェンタニル+++00.11.5?2.00.1?0.2
ペチジン+++805?72?3
ブプレノルフィン+++?0.3306?8
ペンタゾシン??++6015?302?3
ブトルファノール?++215?302?3
トラマドール++?100154?6


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