2023年にはマンハッタン計画とオッペンハイマーを取材したドキュメンタリーも複数作られている。本作のブルーレイディスクにも特典として収録されたTo End All War(邦題:“原爆の父”オッペンハイマー)[注 5]にはバードとノーランが出演した[28]。 本国での公開から約8ヶ月遅れ、アカデミー賞受賞直後に公開。2024年に日本で公開される洋画として最高のスタートを切った[29]。70mmおよびIMAXのフィルム上映は無し。吹き替え版上映は無く字幕スーパーのみ。翻訳は『バットマン ビギンズ』、『ダークナイト』も手掛けた石田泰子。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』や『シン・ウルトラマン』に考証面で関わった京都大学教授の橋本幸士[30]が、監修を務めている。 日本での公開は夏期に公開してしまうと、広島市への原子爆弾投下日である8月6日や、長崎市への原子爆弾投下日である8月9日、終戦の日である8月15日と重なるため、対日感情を考慮してこれを避けたとの指摘[31][32][33]があるが、アメリカで製作された映画は本国での公開から数ヶ月遅れて公開されるのはよくあることで、本作が特別な訳ではないとの指摘[34][35]もある。 2011年のユニバーサル映画『遊星からの物体X ファーストコンタクト』のように、日本での公開が本国でのソフト発売後(本国劇場公開の約10ヶ月後)となった例も無いわけではないが、ネタバレを防ぐため話題作が複数国で同時公開され、公開から2ヶ月足らずでソフト化される作品もある時代に、興行収入1,400億円を超えるヒットを出し、かつ日本でも人気のあるノーランの作品が公開未定のまま数ヶ月動きが無いという、異例の状態となっていた。 コンサルタントの渡邊裕子は、ビジネスインサイダーのコラムにおいて、「日本語の情報にしか触れない日本人のほとんどはこの映画の存在すら知らない。そのため、本作について、日本では作品を観賞した上で問題意識や批評するのではなく、二次情報を基に意見を持ち、想像に基づいて発言されることが懸念される」と述べていた[36]。 また、広島の若者を中心に構成され、核兵器の廃絶に取り組んでいる「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(カクワカ広島)の共同代表である高橋悠太も東京新聞の取材に対して、「米国で原爆開発がどのように語られているかは、核兵器をなくし、広島、長崎の体験を普遍化していく上で大切な視点。核兵器廃絶に向けた新たな議論が生まれることが重要だ」として、本作品が日本を含む世界各国にて上映されることを望むコメントを出していた[37]。 2023年11月21日のソフト版発売直後、いずれも字幕、音声ともに日本語には対応していないが、海外盤輸入代行のオンラインショッピング「Fantasium」の週間売り上げはトップ3を本作が占め、「字幕無しでも視聴したい」という日本人の多さが窺えた[38]。この時点でも日本での公開は発表されておらず、日本語による公式サイトも設けられていない[39][40]。この事について、日本国内でのユニバーサル・ピクチャーズ作品の配給権を保有している東宝東和の関係者は、ブルームバーグの取材に対し、「オッペンハイマーの配給や公開に関する決定権はユニバーサル・ピクチャーズにある」とコメントしたきりであった[31]。 その後、当初伝えられた東宝東和ではなくビターズ・エンド配給のもと、正確なリリースの日時は明らかでないものの、2024年に日本での公開が決定したと2023年12月7日に発表された[16]。同社は「本作が扱う題材が、私たち日本人にとって非常に重要かつ特別な意味を持つものであることから、さまざまな議論と検討の末、日本公開を決定した」と慎重さの込められたコメントを出した[41]。 ユニバーサル・ピクチャーズ製作であるにもかかわらず、作品の内容が問題となり、東宝東和以外の配給会社で公開された事例としては当初は東宝東和での配給が検討されながらも、日本軍による捕虜虐待描写が問題となり、最終的には東宝東和での配給を断念し、本作と同じビターズ・エンド配給での公開に至った『不屈の男 アンブロークン』(2014年製作、2016年日本で公開)のケースがある[15][42][43]。
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