またかつては他の一般用エレベーターよりも速度が遅い仕様が多かったので(現在は最上階まで1分以内に到達できることが条件で、60 m/minが下限)、乗用として使用されることはほとんどなく、通常時は荷物輸送やビルメンテナンス要員・警備員の移動に用いられてきた。そのため用途種別はほとんどの場合「人荷用」となっており、最近の一部を除き一般客の目に触れないように設置されることが多い。一部の建物では、一般客が利用するエレベーターと非常用エレベーターを兼用している建物もある。
なお、非常用エレベーターは設置されている建物の全ての階に停止でき、かつ全階のエレベーターホールにはかご位置を知らせるインジケーターを設置しなければならず、エレベーターホールも防火戸等により煙や炎を完全に遮断することができる構造が必要になる。乗場には非常用エレベーターを示す、赤文字で「非常用エレベータ」、その下に最大定員と積載荷重を記載したプレートを掲示しなければならない。定員は最低で17名(積載荷重1,150 kg)と定められている。消防隊専用の装備として、主に1階か避難階に設置され、押すと他のかご内および、乗場の呼びを全て解除し呼び戻しボタンのある階へ直行する「かご呼び戻しボタン」、建物管理者や警備員から鍵を借りて操作すると消防隊専用に切り替わる「一次消防・二次消防切り替えスイッチ」がある。
一次消防運転では乗場呼びが無効になり、一種の専用運転となる。二次消防運転では乗場の戸閉検出装置が無効となり、かごまたは乗場の扉が閉まらない状態でも走行可能になるが、速度は最高でも90 m/minに制限される。
製造メーカー
日本の主なメーカー(大手)
三菱電機ビルソリューションズ - 三菱電機より昇降機事業を移管。2022年4月に三菱電機ビルテクノサービスから社名変更。
日立ビルシステム - 国内市場の設計開発部署を2014年に日立製作所から移行し、実質的な全面移管。海外市場は日立本体が行う。
東芝エレベータ - 2001年に東芝より昇降機事業を全面移管。
フジテック - 日本の5大 大手の中で唯一電機メーカーに属さない専業メーカー。近年エアコンを標準搭載したモデルなどを精力的に発表し、国内シェアを押し上げている。
日本オーチス・エレベータ - 過去に資本提携(持分法適用会社)の関係があったことからNational OTIS(ナショナル・オーチス)を展開。東芝資本のTOYO OTIS(東洋オーチス)ブランドも存在した。現在は貨物用エレベーターの製造は日本においては行っていない。
日本の主なメーカー(中堅・小規模)
三菱日立ホームエレベーター - 2000年に三菱電機と日立製作所のホームエレベーター事業が統合して設立した企業
パナソニック - 住宅用のみの販売(パナソニック エレベーター)となっている。過去に販売したNational OTISブランドの純正保守は日本オーチス・エレベータが担当。
三精テクノロジーズ
エス・イー・シーエレベーター - 詳細はメンテナンス(保守)を参照のこと。
横浜エレベータ
三洋輸送機工業
守谷輸送機工業
中央エレベーター工業
日本エレベーター製造 - スクリュー式エレベーター開発の経緯から、駅舎のエレベーターに強みを持つ。
⇒ダイコー
日本エレベータ工業
クマリフト - 工場向けの荷物用・人荷用エレベーターや低層階や雑居ビルなど向けの比較的小型なエレベーターに強みを持つ。[34]
⇒アイワ
ワタベ産業
朝日輸送機
⇒日東エレベーター - 防爆型エレベーターなど、自社独自開発の特殊エレベーターに特化する。
IHIトレーディング - 大手総合重機メーカーであるIHIグループ。車用輸送機を得意とする他、乗用エレベーターも販売している。
エレベータシステムズ - エステムのブランドでエレベーターを販売する。独立系保守会社としての顔も持つ。
⇒富士エレベーター工業
⇒東洋ハイドロ - 社名にあるハイドロの通り、油圧式エレベータ専業メーカーとして発足した。現在はロープ式エレベーターも製造する。
⇒日本機器鋼業 - ヘリポート用特殊昇降機や舞台昇降装置を得意とする。各種乗用や貨物用エレベーターも製造する。
船舶用の主なメーカー
潮冷熱
守谷輸送機工業
シンドラーグループ
三菱重工
コネ - 東芝エレベータに出資しており協力関係にある。そのため、同社のダブルデッキエレベーターは東芝エレベータからのOEM。
かつて存在したメーカー
シンドラーエレベータ - 旧・日本エレベーター工業。2006年のエレベーターでの死亡事故発生後は規模を縮小し、2016年秋に日本でのエレベーター・エスカレーター事業から撤退。その後、捜査・訴訟に対応する企業として存続していたが、2021年に清算された。事業撤退以降、日本におけるシンドラー社製(旧・日本エレベーター工業製も含む)のエレベーターの保守点検・修理・改修は日本オーチス・エレベータが引き継いで行っている[注釈 6]他、グループであった、シンドラーエレベータ純正兼独立保守会社のマーキュリーアシェンソーレ(現マーキュリーエレベータ)は同社に譲渡され、完全独立系となった。