『カーテン』はポアロ最後の作品だが、実際には1943年に書き上げられたポアロ22作目の長編である。彼女はこの作品を書き上げた後で金庫に封印し、自身の死後に刊行するよう出版社と契約した。しかし、1975年10月になって出版社にせき立てられる形で『カーテン』は発表され、奇しくもその数箇月後にクリスティは亡くなった。『カーテン』の舞台であるスタイルズ荘は、クリスティのデビュー作にしてポアロが初めて登場した作品でもある『スタイルズ荘の怪事件』の舞台と同じ場所であり、『カーテン』というタイトルには、「ポアロという探偵の人生の幕を引く」という意味が込められている。
2014年9月、ソフィー・ハナによる『モノグラム殺人事件』が、アガサ・クリスティ社公認によるポアロ作品の続編として出版された。2016年には、続編の第2作『閉じられた棺』も発表されている。
日本では第二次世界大戦前から紹介されており、現在でも日本語でほぼ全てのポアロ作品を読める。 早川書房のクリスティー文庫を基準に挙げる。太字はポアロ物だけで構成された短編集。
長編
1920年:スタイルズ荘の怪事件
1923年:ゴルフ場殺人事件
1926年:アクロイド殺し
1927年:ビッグ4
1928年:青列車の秘密
1932年:邪悪の家
1933年:エッジウェア卿の死
1934年:オリエント急行の殺人
1935年:三幕の殺人
1935年:雲をつかむ死
1935年:ABC殺人事件
1936年:メソポタミヤの殺人
1936年:ひらいたトランプ
1937年:もの言えぬ証人
1937年:ナイルに死す
1938年:死との約束
1938年:ポアロのクリスマス
1940年:杉の柩
1940年:愛国殺人
1941年:白昼の悪魔
1943年:五匹の子豚
1946年:ホロー荘の殺人
1948年:満潮に乗って
1952年:マギンティ夫人は死んだ
1953年:葬儀を終えて
1955年:ヒッコリー・ロードの殺人
1956年:死者のあやまち
1959年:鳩のなかの猫
1963年:複数の時計
1966年:第三の女
1969年:ハロウィーン・パーティ
1972年:象は忘れない
1975年:カーテン
短編
1924年:ポアロ登場
1937年:死人の鏡
1939年:黄色いアイリス
バグダッドの大櫃の謎 - The Mystery of the Bagdad Chest
あなたの庭はどんな庭? - How Does Your Garden Grow ?
黄色いアイリス - Yellow Iris
船上の怪事件 - Problem at Sea
二度目のゴング - The Second Gong
1947年:ヘラクレスの冒険
1950年:愛の探偵たち
四階のフラット - The Third-Floor Flat
ジョニー・ウェイバリーの冒険 - The Adventure of Johnnie Waverly
1951年:教会で死んだ男
戦勝記念舞踏会事件 - The Affair at the Victory Ball
潜水艦の設計図 - The Submarine Plans
クラブのキング - The King of Clubs
マーケット・ベイジングの怪事件 - The Market Basing Mystery
二重の手がかり - The Double Clue
呪われた相続人 - The Lemesurier Inheritance
コーンウォールの毒殺事件 - The Cornish Mystery
プリマス行き急行列車 - The Plymouth Express
料理人の失踪 - The Adventure of the Clapham Cook
二重の罪 - Double Sin
スズメ蜂の巣 - Wasps' Nest
1960年:クリスマス・プディングの冒険
クリスマス・プディングの冒険 - The Adventure of the Christmas Pudding
スペイン櫃の秘密 - The Mystery of the Spanish Chest
負け犬 - The Under Dog
二十四羽の黒つぐみ - Four-and-Twenty Blackbirds
夢 - The Dream
1997年:マン島の黄金
クリスマスの冒険 - Christmas Adventure
2010年:アガサ・クリスティの秘密ノート(上・下)
犬のボール - The Incident of the Dog's Ball (『もの言えぬ証人』の原型)
ケルベロスの捕獲 -The Capture of Cerberus (『ヘラクレスの冒険』の同題短編の別バージョン)
短編集への未収録作品
1943年:ポアロとレガッタ(Poirot and the Regatta Mystery、パーカー・パインものの短編「レガッタ・デーの事件」の初期バージョン、光文社『EQ』1994年5月号に訳載)
戯曲
1928年:『アリバイ』 - 『アクロイド殺し』を原作としたマイクル・モートンの戯曲。