エルキュール・ポワロ
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シャーロック・ホームズのような、地面に這いつくばって証拠品を集めるやり方を「猟犬じゃあるまいし」と否定する[注 1](ホームズの頃と違い、スコットランドヤードパリ警視庁には証拠調べを任せるだけの能力があると信頼している)ものの、物的証拠も尊重してこれらと心理分析を組み合わせた推理で数々の難事件を解決してきた。容疑者全員を集め、ポアロの辿った推理過程を彼らへ説明しながら真犯人をその場で指し示す。
経歴

19世紀中頃に生を受け、ベルギー南部のフランス語圏ワロン地方)出身とされている。ベルギーのブリュッセル警察で活躍し[4]、署長にまで出世した後、退職していた。第一次世界大戦中、ドイツ軍の侵攻によりイギリスに亡命することを余儀なくされる。亡命者7名と共に、イギリスの富豪夫人(エミリー・イングルソープ)の援助を受けて、スタイルズ荘のそばにあるリーストウェイズ・コテージで生活をしていた。そこで、以前にベルギーで知り合っていた友人のアーサー・ヘイスティングズ大尉と再会し、殺人事件を解決する(『スタイルズ荘の怪事件』)。その後、イギリスでヘイスティングズ大尉と同居し、探偵として活躍し、数多くの難事件を解決する。ヘイスティングズが結婚してアルゼンチンに移住後、一時田舎に隠退するが、そこで起きた事件を解決後(『アクロイド殺し』)ロンドンに戻り、再び数多くの難事件を解決する。

最後の登場作品である『カーテン』において、「探偵」としてのポアロに終止符を打ち、ヘイスティングズの前から姿を消した[注 2]
設定の経緯

クリスティはホームズとは異なる、自分の扱いうる探偵役として、身近なものや日常のことからポアロの人物像を造形した。ベルギーからの亡命者という設定は、当時のベルギーへの愛国的傾倒の他に、実際に近所の教区にいた亡命者集団から、そして几帳面な性格は自室の片付けの最中などに発想したという[8]

名前のエルキュール (Hercule) は、ギリシア神話に登場する怪力の英雄「ヘラクレス」のフランス語形であるが、クリスティは小男であるポアロにわざとこの名前をつけている[8]
家族

作中でしばしばポアロは自分の家族について言及するシーンがあるが、推理に必要な情報を引き出すための嘘が混ざっている可能性があるため、どこまで事実かは不明である。実際に作中に彼の家族ないし親族が登場したことはない。

ビッグ4』では一卵性双生児の兄弟・アシルがいるとされ、自分より頭が良いとポアロは述べている。その彼は実際に作中に登場するが、後にポアロの変装と判り、その後、ポアロはアシルは実在しない旨のことを述べている。なお、アシル (Achille) はアキレウスのフランス語読みである。その後、『ヘラクレスの冒険』では「兄弟がいたんじゃないのか?」という問いに対して「ほんの短い間のことだったがね」と答えている。またポアロの「偉大な探偵に兄弟はつきもの」というセリフは、シャーロック・ホームズの兄マイクロフトを意識したものであろう。

ポアロ自身についても、ロサコフ伯爵夫人に惚れていたような描写や、パトリシア・ガーネットによく似た「若くて美しいイギリスの女の子を愛したことがある」との発言[9]はあるものの、生涯独身を貫いたため、妻子はいない。
「ポアロ」表記

日本では Poirot について「ポアロ」と「ポワロ」の二つの表記が存在するが、フランス語でoiは「ォワ」という感じに発音するため、後者のほうが原音に近い[10][11]。以前は「ポワロ」と表記することが多かったが、「ポアロ」表記をしている早川書房が翻訳独占契約を結んだため、「ポアロ」という表記が世間に広まった。
登場作品

初登場はクリスティの処女作『スタイルズ荘の怪事件』(1920年)。以後『カーテン』(1975年)まで長編は33編、また50編以上の短編に登場(他にクリスティ自身がポアロ作品を数編戯曲化している)。代表的な作品は『アクロイド殺し』『オリエント急行の殺人』『ABC殺人事件』など。

『カーテン』はポアロ最後の作品だが、実際には1943年に書き上げられたポアロ22作目の長編である。彼女はこの作品を書き上げた後で金庫に封印し、自身の死後に刊行するよう出版社と契約した。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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