エリア・カザン
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同作品は大成功を収め、ピューリッツァー賞、ニューヨーク劇評家サークル賞、ドナルドソン賞などの演劇賞を受賞した。

また同年にカザンは、演出家のリー・ストラスバーグなど先述のグループ・シアターの同窓生らと共に、俳優養成のための学校「アクターズ・スタジオ」を創設する。アクターズ・スタジオは、スタニスラフスキー・システムに基礎を置いた演技法「メソッド」を教授し、マーロン・ブランドジェームズ・ディーンなどの他、名優と評価される俳優を数多く生みだしていった。

メソッドを習得した俳優たちを用いたカザンの監督映画は、ハリウッドに新風を送り込み、映画俳優の演技法に多大な影響を与えていった。
赤狩りの時代

1949年、アーサー・ミラーの戯曲『セールスマンの死』を演出する。ニューヨークのモロスコ劇場で上演(初演)されたこの作品は、ピューリッツァー賞、ニューヨーク劇評家サークル賞、トニー賞などを受賞した。更に映画版の『欲望という名の電車』(1951年)でも監督を務める。主演はヴィヴィアン・リーとマーロン・ブランド。同作品は大ヒットし、アカデミー賞の4部門で受賞した。

当時米国は、旧ソビエト連邦との冷戦の時代を迎えていた。芸術家や文化人が公然と糾弾され、時にその職が奪われるような事態がまかり通っていた。共産主義者の疑いのある者を糾弾する「赤狩り」の先鋒、下院非米活動委員会によって、数多くの芸術家が非難の対象となり、創作活動の中断を余儀なくされた。米国の演劇界やハリウッドの映画界もその嵐に巻き込まれていた。

1952年、アメリカ下院非米活動委員会によって、元共産党員であるカザンも共産主義者の嫌疑がかけられた。カザンはこれを否定するために司法取引し、共産主義思想の疑いのある者として友人の劇作家・演出家・映画監督・俳優ら11人の名前を同委員会に表した。その中には劇作家・脚本家のリリアン・ヘルマン、小説家のダシール・ハメットなどの名もあった。以降もカザンは、演劇界・映画界において精力的に活動を続けることができ、名作と呼ばれる作品の誕生に数多く関わっていくが、この告発行為は、後のカザンの経歴およびその作風に暗い影を落とすこととなった。

同年には監督した『革命児サパタ』が公開。主演はマーロン・ブランド。カザンはこの映画のなかに、共産主義に対する批判のメッセージを込めたと言われている。
その後の活動

1954年に公開された監督作『波止場』は、アカデミー賞において作品賞を含む8部門を受賞。1955年公開の監督作『エデンの東』は、アクターズ・スタジオ出身の俳優ジェームズ・ディーンの出世作となる。同年、テネシー・ウィリアムズの戯曲『熱いトタン屋根の猫』を演出し、ニューヨークのモロスコ劇場で上演(初演)する。同作品はピューリッツァ賞を受賞した。

1962年に小説『アメリカ、アメリカ』を執筆、翌1963年にはこの小説を映画化し、自ら脚本と監督を務めた。1976年F・スコット・フィッツジェラルドの未完小説を映画化した『ラスト・タイクーン』を監督して以降、一線を退いた。1988年、自叙伝を出版した。
晩年 - アカデミー賞名誉賞の授与

1998年、長年の映画界に対する功労に対してアカデミー賞「名誉賞」を与えられたが[1]赤狩り時代の行動を批判する一部の映画人からはブーイングを浴びた(賞のプレゼンターはマーティン・スコセッシロバート・デ・ニーロ)。リチャード・ドレイファスは事前に授与反対の声明を出し、ニック・ノルティエド・ハリスイアン・マッケランらは受賞の瞬間も硬い表情で腕組みして座ったまま、無言の抗議を行なった。スティーヴン・スピルバーグジム・キャリーらは拍手はしたが、起立しなかった。起立して拍手したのはウォーレン・ビーティヘレン・ハントメリル・ストリープらだった。通常は名誉賞が授けられる人物には、全員でのスタンディングオベーションが慣例のため、会場内は異様な空気に包まれた。また、会場の外では授与支持派と反対派の双方がデモを行なった。反対派のデモ隊の中には、かつて赤狩りで追放歴のある脚本家のエイブラハム・ポロンスキーもいた。

問題の過去にも触れた自伝は、『エリア・カザン自伝』の題名で日本語訳もされている。カザンは『代役』、『アメリカの幻想』など小説も何冊か書いて、一部日本語訳が刊行されている。
主な作品

栄光の都
(英語版) City for Conquest(1940)

ブルックリン横丁 A Tree Grows in Brooklin(1945)

大草原 The Sea of Grass(1947)

紳士協定 Gentleman's Agreement(1947)

影なき殺人 Boomerang!(1947)

ピンキー Pinky(1949) - 日本劇場未公開作品

暗黒の恐怖 Panic in The Streets(1950)

欲望という名の電車 A Streetcar Named Desire(1951)

革命児サパタ Viva Zapata!(1952)


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