エモ
[Wikipedia|▼Menu]
歌詞

インディーロックに共通の特徴として、歌詞はアーティスト自身の経験に根ざした表現が優先されしばしば内省的であり、社会問題に触れる場合でも個人の体験からの訴えという形を取るという傾向がある[1]。英語圏での「ジャンル」の紹介ではこのことがしばしば触れられ、ティーン向けポップメディアでは自殺や自傷行為をテーマにするものがあるとしてセンセーショナルに取り上げられることもある。日本でこのジャンルの紹介の初期において、音楽的には無関係といってよいUKのザ・スミスが例にあげられたのも[注 5]、このような英米メディアの影響が考えられるが、一般的には日本では歌詞をジャンルの特徴とすることは少ない。
「エモーショナル」と「男らしさ」

エモと分類される音楽に関する議論がわかりにくい原因のひとつは、英語圏白人文化で emotional という語が単に「感情の」だけでなく、「感情的な、クールでない」という意味で、男性の女々しさを非難する語として使われやすいという事情がかつてあった。ニクソン批判を取るかマスキー批判を取るか:1972年の大統領選で民主党有力候補だったエドマンド・マスキー上院議員は、リチャード・ニクソンの罠にひっかかり、予備選で涙を流したことをメディアで大きく報道され、予備選からの撤退に追い込まれた[2]が、このときの発言は、emotionalと形容されている。1990年代半ばの「エモ」の興隆期には、女々しい「エモ」と女々しくない「エモコア」を区別しようとする試みが見られた。

ただ、21世紀には女々しいという言葉は男性優位主義(女性差別)と解釈され、新聞・テレビなどのメディアでは放送回避の対象となっている。エモだけでなく、エモコア、パンク・ロック、ハードコア・パンクも含め、放送禁止用語のタブーではなく、メディアがタブーとしている権力批判、ネオリベラリズム、ファシズム、戦争反対、ナチズム批判こそ、オルタナティブ・ロックの真骨頂と存在意義とも言える。
派生ジャンル
スクリーモ「スクリーモ」を参照
エモバイオレンス

エモバイオレンス(Emoviolence)はスクリーモ及びパワーバイオレンスから派生したジャンルである。エモバイオレンスという名称は、イン/ヒューマニティが冗談交じりに発言したものが広がったというのが通説である[3]。日本ではしばしば"激情系ハードコア"と称される。

音楽的特徴としては、フィードバック奏法ブラストビートの融合、およびハードコア的な素早いテンポによる演奏、スクリーモ的なシャウティングなどがあげられる[4][5]。Pg. 99やイン/ヒューマニティなどのバンドがこのジャンルの先駆けとされている[5][3][6]

スクリーモ的な要素の他に、変拍子の採用や、ハーモニカなどの特殊な楽器の導入、音量を抑えたボーカルなど、ポストロックとの迎合を図るバンドも散見される[7][8]。ピアノス・ビカム・ザ・ティース、シティ・オブ・キャタピラー、フューネラル・ディナー、envyなどのバンドがその好例である[9][7]。こういった音楽性から、たびたびポスト・ハードコアカオティック・ハードコアなどの近似するジャンルと混同されたり、あるいは同一視されることも少なくない。
エモ・ポップ

エモ・ポップ(Emo pop)またはエモ・ポップ・パンク(Emo pop punk)とは、エモとポップ・ミュージック双方の特徴を擁するジャンルである。従来のエモ(エモコア)に比べ、よりわかりやすく、大衆に受容されやすい趣となっている。オール・ミュージックはこのジャンルを、思春期の苦悩や煩悶に満ちた歌詞を、リズミカルなギターの演奏と共に、ピッチの高いメロディで歌い上げるものだと定義している[10]

グランジの衰退から、聴衆の関心が徐々にエモに集まり始めた1990年代中期に、エモ・ポップはウィーザーなどのバンドの出現によって発生した。2001年ジミー・イート・ワールドのリリースした『ブリード・アメリカン』(Bleed American)およびシングル曲の『ザ・ミドル』(The middle)は、このジャンルのパイオニアとされるウィーザーの『グリーン・アルバム』(Weezer)などと共にシーンの中で大きな成功を収め、「蘇った新世代のポップ・パンク」として注目を浴びた[10]

2000年代中期から現在にかけては、フォール・アウト・ボーイパニック!アット・ザ・ディスコパラモアなど、数々のバンドが登場し、シーンを盛り上げている。
エモ・ラップ詳細は「エモ・ラップ」を参照

2010年代頃からアメリカ合衆国を中心に出てきた、エモとヒップホップを融合させたジャンルである。
エモに分類されるバンド


1990年代

American Football(
アメリカン・フットボール

The Appleseed Cast(アップルシード・キャスト)

The Ataris(アタリス

At The Drive-In(アット・ザ・ドライヴイン

Braid(ブレイド)

Brandtson(ブランソン

Burning Airlines(バーニング・エアラインズ

Cap'N Jazz(カップン・ジャズ)

Cursive(カーシヴ)

Dag Nasty(ダグ・ナスティー)

Drive Like Jehu(ドライヴ・ライク・ジーヒュー

Elliott(エリオット)

Further Seems Forever(ファーザー・シームス・フォーエヴァー)

Garden Variety(ガーデン・バラエティ

The Get Up Kids(ゲット・アップ・キッズ

Hot Water Music(ホット・ウォーター・ミュージック)

Jawbox(ジョーボックス

Jawbreaker(ジョーブレイカー

Jejune(ジェジューン)

Jets to Brazil(ジェッツ・トゥ・ブラジル)

Jimmy Eat World(ジミー・イート・ワールド

Joshua(ジョシュア

Last Days Of April(ラスト・デイズ・オブ・エイプリル

Lifetime(ライフタイム

Mineral(ミネラル

Owls(オウルズ)

Piebald(パイボールド)

Portraits Of Past(ポートレイツ・オブ・パスト)

Penfold (ペンフォールド)

The Promise Ring(ザ・プロミス・リング

Q And Not U(キュー・アンド・ノット・ユー)

Rainer Maria(レイナー・マリア)

Reggie & The Full Effect(レジー・アンド・ザ・フル・エフェクト)

Rites Of Spring(ライツ・オブ・スプリング)

Samiam(サマイアム)

Saves The Day(セイヴズ・ザ・デイ)

Seaweed(シーウィード)

Sense Field(センス・フィールド

Silver Scooter(シルヴァー・スクーター)

Small Brown Bike(スモール・ブラウン・バイク)

Starmarket(スターマーケット)

The Stereo(ステレオ

Sunny Day Real Estate(サニー・デイ・リアル・エステイト

Texas is the Reason(テキサス・イズ・ザ・リーズン

Weezer(ウィーザー


2000年代

The Academy Is...(
ジ・アカデミー・イズ

The All-American Rejects (オール・アメリカン・リジェクツ

Anberlin(アンバーリン


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:63 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef