エマニュエル・マクロン
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6月11日と18日に実施されたフランス国民議会選挙の結果、マクロン与党「共和国前進!」陣営が6割を超える350議席を獲得し、政権基盤を固めた[40]
反マクロン運動の高まり

2018年11月17日より蛍光色の安全ベストを着た市民が軽油ガソリン値上げや燃料税の引き上げに対する抗議活動を開始し、フランス全土でマクロン退陣を求める激しいデモ、暴動、略奪に拡大した(黄色いベスト運動)。道路網の封鎖をメインとし、都市部では自動車や市庁舎への放火、店舗略奪、破壊行為に発展した。暴動としては1968年の五月危機以来の規模となった[41]。12月5日、マクロン政権のフィリップ首相は燃料税引き上げ断念を発表した[42]

2019年4月25日、マクロンは大統領になって初の記者会見を行い、黄色いベスト運動の説得も兼ねて全国規模で行われていた大討論大会の統括と、運動への対策案を発表した。このなかで大統領は低所得者や平均的な所得者へ総額50億ユーロ規模の所得税削減と年金の増額を約束した。さらに、貧困家庭出身の学生を受け付けないため数十年来、批判にさらされた[43]フランスのエリート校で自らの母校でもあるフランス国立行政学院(ENA)の閉鎖を約束し、フランスの統治システムは変わるべきだと述べた。マクロンは自らの施政を「後悔」しているとも言い、より「ヒューマン」な政治を誓い、運動のなかで起きたユダヤ人や同性愛に対する憎悪や暴力を「道徳」と「教育」の衰退だと表現し、全力で戦うとした[44]
新型コロナウイルス感染症への対策

2020年12月17日に新型コロナウイルス感染症の初期症状を自覚したためPCR検査を受けたところ、陽性であると判明し、その後も隔離状態で公務を続けたが、7日後の12月24日には咳や倦怠感、頭痛などの症状が消失したため、隔離生活を終了した[45][46][47]

2022年1月6日、新型コロナのワクチン接種を拒否する人々について、emmerder (くそくらえ)と粗野なスラングを使い厳しく非難して国会を紛糾させ、ワクチン未接種者を公の場の大部分から締め出す法案の審議が一時中断された[48][49]
2022年大統領選挙

2022年4月24日の2022年フランス大統領選挙において得票率58.55%で前回と同様にマリーヌ・ル・ペンを破り再選した[50][51]
2023年の年金改革

2023年1月、大統領選の公約で掲げてきた年金改革法案を議会に提出。受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げるもので、約2カ月にわたって議論が伯仲したが、同年3月16日の法案の採決予定日においても、過半数を得る見込みは立たなかった。このためエリザベット・ボルヌ首相は、投票開始の数分前に憲法49条3項を適用すると表明して強行採択を行った。パリではコンコルド広場などで数千名規模の市民デモに発展、抗議は夜間に及び約120人が逮捕された[52]
内政
経済政策

財政改革では財政赤字の対GDP比率の引き下げを「マクロ数値目標」として設定している。税制問題では増税措置が先行しており、社会保障費を賄う一般社会税(CSG)を積み増した。減税措置は2022年までに段階的に実施予定で、法人税中心の施策を押し出し33パーセントから25パーセントまで下げることが計画されている。また富裕税(ISF)の減税は課税対象を不動産に限定、キャピタル・ゲイン減税には30パーセントのフラット・タックス導入など、2019年までの実現を目指した。家庭向けの減税としては全世帯の80パーセントを対象に2022年までに地方住民税廃止を実現する計画であった。公務員12万人の削減も計画し[53]、またグローバリズムを支持している。
労働市場改革

雇用と賃金の両面で労働市場の調整力を高めることを目指し、労働市場改革を訴えてきた。2018年1月時点で実現済みの施策は解雇補償額の上限引き下げ、グローバル企業の解雇要件の緩和、解雇不服申し立て期間を2年から1年に短縮するなどであった[53]
徴兵制・普遍的国民奉仕

2001年以来フランスでは徴兵制度が廃止されていたが[54]、マクロンは徴兵制復活を大統領選挙の公約に掲げた。マクロンは徴兵制について「軍や憲兵隊の下で行う。1ヵ月間若い国民が体験を分かちあい、国の結束を強める機会になる。危機に際し、国防の支えになる」と述べ[55]、「若者の国民としての義務感や団結感を強める」と論じている[56]

マクロンが掲げていた徴兵制度とは、18歳から21歳の男女を対象に約1ヵ月の兵役を課すとして、2018年1月19日までに徴兵制を復活させたい考えを示していた。しかしこれに対し、約1月という短期間では兵役を課す意味合いが乏しいとの指摘や、予算がかかりすぎるとの批判が出た[54]。大学や青年団体も10の組織が徴兵制に反対する声明を出し、その中で「押し付けには反対。奉仕活動は国民が選べるようにすべきだ」と訴えた[55]

そうした批判のため、徴兵制ではなく公共奉仕活動の義務化に変更された[55]。2018年6月27日に閣議決定された「普遍的国民奉仕」計画は、16歳の国民全員に対して4ヵ月から1年あまりの期間に、警察や消防や軍の奉仕活動、あるいは慈善活動を課すとしている[56]。これら活動の義務期間1ヵ月は共同生活を送る。その後、第2段階として16歳から25歳の若者が3ヵ月から1年にわたり、任意で奉仕活動に参加する。奉仕期間の一部に夏休みを充てて、軍の役割・人命救助を学ぶ。任意参加の第2段階は職業訓練に近いものを軍・消防・公共機関で施すと想定している[55]
移民規制

大統領就任後の移民・難民政策では規制強化の方向が目立つ[57]。2018年4月に移民法を可決させたが、難民申請の期限を早めたり、不法移民の勾留期限を倍にしたり、不法入国に対して禁錮1年の処罰を導入するなど実質は移民規制を内容としているため、人権擁護団体などから批判を受けている[58]
環境政策

就任後は2040年までにガソリン車の販売を禁止する目標を打ち出すなど他国と一線を画す環境政策を推進してきた[59]。しかしながら2020年6月の統一地方選では、環境政党の躍進に押され与党の共和国前進党が惨敗した。選挙後の演説で地球温暖化対策を憲法に盛り込む方針を発表した[60]
外交
対アメリカ外交向かって左からマクロン、アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプカナダの首相ジャスティン・トルドー(2018年6月9日)。

2012年のバラク・オバマ政権においてフランスの親米組織フレンチ-アメリカン財団(フランス語版)のリーダーを務めたものの、2017年1月に大統領に就任したドナルド・トランプに対してはそのアメリカ第一主義・保護主義的な態度を批判している[61]。2018年4月のアメリカ訪問の際には、アメリカ合衆国議会においてアメリカ政府のパリ協定離脱やイラン核合意離脱などの単独主義を批判し、「多国間主義を作り出したのはアメリカであり、これを維持して再生させる役割を担うのもアメリカだ」と論じた[62]


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