エイリアン_(映画)
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契約が成立したのは3月30日のことであり、この日から製作に加わることとなる[18]。しかし、ギーガーが描く異質な世界に拒否感を示した者もおり、キャロルは当初「ギーガーは異常だ」と酷評している[24]

撮影中のギーガーは常に黒ずくめの服を着ていたため、一部のスタッフは彼を「ドラキュラ伯爵」と渾名した[54]。彼の指揮する美術チームは150人にもなる大所帯で、「モンスター部門」と呼ばれた[55][56]

ギーガーは異星人の遺棄船やエイリアンのデザインを受け持つことになったが、徹底した完璧主義者であり、自身の作品に強烈な自負を持っていた彼は、製作現場で度々スタッフと衝突し、上層部に対しても自分の要求を曲げなかった。4月5日になってこの対立は決定的となり、20世紀フォックスはそれまでのギャラを支払いギーガーを解雇した。契約成立から僅か1週間のことであった[57]。これについてギーガー自身は、契約では彼のサインした契約書がなければセットの製作はできなかったが、必要なデザインが既に仕上がっており、サイン済みの契約書が手元にある以上もはや用はなかったのだろうと推測している。しかしギーガーは自分がすぐに必要とされることを予見して、チューリッヒでデザイン作業を続行した[45]

その予測は的中し、指揮者のいない現場は早速迷走をはじめ、本来のデザインとは程遠いセットになっていった。結局、彼の必要性を上層部も認めざるを得ず、5月末になってギーガーは現場に復帰している[58][45]。出来損ないのセットは放置されず、現場の美術スタッフのモチベーションを高めるため、そして新しいセット製作の準備が整うまでの時間稼ぎのため、あえて完成まで製作された後でスクラップ処分になった。これはギーガーにとってはまったく理解に苦しむ出来事であったという[59]

宇宙服のデザインはジャン・ジローが手がけた。彼は次の仕事のためフランスに帰るまでという条件付であり、参加していた期間は数日程度だった[12]。実物の製作はジョン・モロが担当している[33]。リプリーの衣装に限り、実際にNASAで使われていた軍用フライトスーツの古着を流用している[36][33]

冒頭におけるタイトルデザインは骨や肉を組み合わせたデザインが考案されていたが使用されなかった[60]。実際に採用された「一文字ずつ完成していくタイトルロゴ」は、広告との整合性を考えスコットが依頼したもので、スティーブ・フランクフルトとリチャード・グリーンバーグがデザインしている[41]
特殊効果
ノストロモ号
ノストロモ号の外観はロン・コッブとクリス・フォスの2名がそれぞれデザイン案を起こした。フォスの描く宇宙船は現実の要素を取り入れた物が多く、豊かな色彩と流線型が特徴だった。フォスはノストロモ号の外観や内装、遺棄船など数多くのデザイン案を描いたが、結局すべて未採用に終わった
[61]。フォスはギーガーと共に解雇され復帰することはなかったが、コンセプト・アーティストとしてクレジットには名を連ねている。名称は「スナーク」「リヴァイアサン」など変遷したが、スコットによって「ノストロモ」と命名された。一方でコッブは機能性とリアリティを重視し、直線的なデザインを好んだ。ギーガーの生物的なデザインと完全な対称性を示すことも考慮され、彼のデザインが採用された。ノストロモ号の形状は逆さの台形のような形状を経て、最終的に精製設備を備えた巨大工場のようなデザインにまとめられた。尖塔のような外観は子供のころに見た工場の風景をヒントにスコット自らが追加した[61]。船内のデザインもコッブの手によって行われ、この案を元にロジャー・クリスチャンが造形した。航空機やヘリの廃材、パレットを活用してノストロモ号の内部を作り上げた[62]。この出来はコッブを満足させ、ウィーバーも「ロケ地で撮影しているかのようだった」と賞賛した[22]。ノストロモ号のセットは意図的に天井のある状態で作られた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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