エイリアン_(映画)
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「全裸のリプリーを目の当たりにしたエイリアンが己との違いに気づき、彼女に見入る」といったシーンも予定されていたものの、アイディアだけで終わった[111][33][注 18]。下着姿で宇宙服を身につけるシーンはその名残である[111]

結末は当初3種類あり、「エイリアンの存在にリプリーは気付かず(もしくはジョーンズに寄生した状態で)一緒に地球に帰還する」、「エイリアンとともに宇宙の藻屑となる」、「エイリアンを倒し地球に帰還する[注 19] 」のそれぞれが用意されていたが、最終的に3つ目が採用された。
エイリアン・フェミニズムアカデミー賞の式典に出席するシガニー・ウィーバー(1989年
それまでの「ハリウッド的な」美女ではない男性的なヒロインの登場は、当時のフェミニズム運動と重なり合う[113]

ホラーSFである『エイリアン』には、性的・恋愛要素がほとんどないにもかかわらず、妊娠・出産のメタファーを中心に「濃厚なセクシュアリティが漂っている」ことが指摘されている[114]

内田樹はこの生殖のメタファーを「体内の蛇」[115]のモチーフをもちいて考察している。それによると本作における「宇宙船のクルーがエイリアンの幼体からその子孫を体内にうえつけられ、それが体を破って外に出てくる」という流れは、ヨーロッパ全域で流布している「体内の蛇」と呼ばれる民間説話をなぞったものであり、この説話をフェミニズムに結びつけたことにオリジナリティがあるという。

本作でのエイリアンは男性社会のメタファーであり、男性器のような頭部を持ち、口から精液のような粘着性の液体をしたたらせている[116]。エイリアンは女性を妊娠させようとする男性の性欲の象徴であり、主人公のリプリーはそれに対抗するフェミニズム志向の女性の役割を果たしている(リプリーを襲ったアッシュにとどめを刺すのも女性のランバートである)。リプリーはそれまでのSF映画のヒロインのような「強い男に付き従う弱い女性」ではなく、男性クルーと対等に渡り合い、会社の陰謀を探り、1人で怪物と対峙する「強い女性」として描かれている。リプリーの姿は1970年代後半に製作された女性の自立や台頭を描いた映画『結婚しない女』『クレイマー、クレイマー』などとともに語られることがあり[116]、また、本作はそれまでのSF映画にはなかった新しい(アクションの担い手としての)役割を女性に与えた先駆的な映画としても語られる[117]

映画公開当時、男性に依存しない勇敢な女性が自力で(男性性の象徴である)エイリアンを退治するというこの映画を、女性たちはフェミニズムの勝利の物語として賞賛したのだ、と評価されることが多かった[118]。しかし内田は、本作は女性からだけでなく保守的な(反フェミニスト的な)男性からも支持されていることを指摘し、「戦闘的フェミニストの勝利」という劇的な結末を演出するために結末以前の部分では「ヒロインがエイリアンから徹底的に陵辱される」という描写で埋め尽くされていると述べている[119]。映画のクライマックスで下着姿のリプリーに襲いかかろうとするエイリアンは男社会に虐げられてきた女性の縮図であるとされる[116]

原案でリプリーにあたる役を男性から女性に変更した際、性別を意識した台詞の改変はほとんど行われなかった。ウィーバー自身はリプリーがフェミニズムに関連付けて語られることには慎重であり、「いいキャラクターはいいキャラクター、性別なんて関係ない」と述べている[120]
テレビドラマシリーズ

2020年12月、ノア・ホーリーがテレビドラマシリーズを製作すると発表された[121]。2023年5月現在、アメリカ・FXで製作が進行中で、リドリー・スコットがプロデューサーを務めると報道されている[122]。FXのジョン・ランドグラフ会長によると「地球が舞台で、21世紀末頃、今から70数年後の話が展開される」という[122]。映画版でシガニー・ウィーバーが演じたリプリーをはじめ、「エイリアン以外の過去の登場人物」は再登場しないことが明かされており、主演は『ドント・ウォーリー・ダーリン』(2022)などに出演したシドニー・チャンドラーが務めるという[122]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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