エアコン
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空気調和テクノロジーにおける技術革新は続き、近年ではエネルギー効率と屋内の空気質の改善が中心テーマとなっている。従来の冷媒の代替として二酸化炭素(R-744)のような自然に存在する物質も提案されている[11]
型式気体液化ヒートポンプのしくみ。
1:凝縮器、2:膨張弁、3:蒸発器、4:圧縮機
赤が高温、青が低温。室外機と室内機を接続する冷媒配管。断熱材で覆われる。

基本機能として冷房専用形と冷暖房兼用のヒートポンプ形がある。

また、次のような形態がある。
ユニットの形態

一体型 -
圧縮機凝縮器蒸発器が一体となったもの。冷媒配管が不要である。家庭用の窓枠取り付け型、キャスターがついて自由に移動できる冷風機鉄道車両用などに見られる。

リモートコンデンサ型 - 圧縮機・蒸発器が一体となった室内機と、凝縮器のみを内蔵した室外機を冷媒配管で接続したもの。室内側に圧縮機があるためメンテナンスが容易で、カスタマイズ(ヒーター加湿器の取り付けなど)を必要とする工場(設備)用や、業務(ビル)用の一部で使われていたが、室内に圧縮機の騒音振動が発生することや、室内機に圧縮機を内蔵する構造から室内機のバリエーションが限られ(基本的に床置き形のみ)、室内の状況に応じた機器(室内機)の配置がしにくいとった問題がある。このため近年では後述するリモートコンデンシングユニット型(家庭用のセパレートタイプ)やマルチ式(ビル用など)が主流となっている。通称「中コン(なかこん:室内機側に圧縮機 = コンプレッサーがあるため)」または「 ⇒リモコン型(一部のエアコンメーカー)」。

リモートコンデンシングユニット型 - 圧縮機・凝縮器が一体となった室外機と、蒸発器が内蔵された室内機を冷媒配管で接続したもの。家庭用のセパレートタイプはこの方式。マルチ式も含め機器が大型高出力の業務用では、設置条件に応じて異なるタイプの室内機が選択できる。

マルチ式 - 圧縮機・凝縮器が一体となった室外機と、蒸発器が内蔵された複数の室内機を冷媒配管で接続したもの。業務(ビル)用の主流。家庭用にも販売されているが、実例は少ない。

室内機の形態

床置型(スタンドスタイル) -
タンス程度の大きさ、あるいは窓際に高さ1メートル程度の上部に吹出し口を持つ室内機が、壁際にむき出しで設置されている。業務(ビル)用では1970年代頃まで主流のタイプで、現在でも古い地下鉄工場事務室などでよく見かける事ができる。室内機の分、床面積が減るため新規の建物では使用が減ったが、業務用では壁や天井の強度が問題にならないことや工事費・工期等でも有利になるため完全には廃れていない。韓国では家庭用タイプにおいても室内機が壁掛型よりも床置型の方が多い[12]。なお、圧縮機・凝縮器・蒸発器・送風機を一体として、キャスターがついて自由に移動できるものは冷風機として、業務用・家庭用共に販売されている。

壁掛型 - 家庭用セパレートエアコンのタイプ。業務用も存在するが重量面の制約が多く少数派。

天井吊型 - 倉庫などのような天井骨組みがむき出しの場合や学校などの一部公共施設に使われる。

天井埋め込みカセット型 - 通称「天カセ」。表面に吸込口・吹出し口のある蒸発器内蔵ユニットを天井内に埋め込むもの。天井面がフラットになり、床置き形のように床面積も減らないため、店舗やオフィスビルなど業務用で多く用いられている。設置工事が大がかりになるため新装開店やリフォームと併せての導入が多い。

床置型(ファンヒータースタイル) - 家庭用セパレートタイプのバリエーションの1つで、石油ストーブ類似の形態をしている。1980年代頃までは主に和室用に使われたが、冷房能力上の問題点(熱対流上壁掛型・天井埋め込みカセット型に比べて不利)から急速に数を減らした。しかし天井まわりの構造が特殊なデザイナーズ物件などの需要もあり完全な消滅には至っていない。また、同様の理由で暖房時は有利という面もある。

ダクト接続型 - ユニットとダクトを接続し、任意の場所に吸込口・吹出し口を設けられるもの。大型ビルやホテル等用。

冷房専用及び暖房専用機種

冷房または暖房のみを必要とする消費者のために、それぞれに特化した機種がある。長所は、特化することで、価格が安く、消費電力が少なく、室内機や室外機が小さく、操作が簡単なことである。機種によっては、広い場所で使用するために強力な性能を持っている物もある。

韓国ではオンドルが普及しているため、冷房専用の床置型が多い[12]
家庭用蒸発器 (暖房時は凝縮器として働く)

ルームエアコンとも呼ばれる家庭用エアコンには、形態として、圧縮機・凝縮器・蒸発器が一体となった窓型と、圧縮機・凝縮器が一体となった室外機と、蒸発器が内蔵された室内機とで構成されるセパレート型(東芝では「スプリット型」という)の2種類がある。セパレート型では、日本などの東アジア圏では壁掛型が主流である。一方、欧州では横長長方形の窓型がほとんどである。

さらに米国では、一般家庭であってもダクトを使用して各部屋に冷暖房を行うダクト方式が普及してきたが、日本のエアコンに代表されるダクトレス方式も評価されつつある[13]

能力によって、2.2 kW、2.5 kW、2.8 kW、3.6 kW、4.0 kW、4.5 kW、5.0 kW、5.6 kW、6.3 kW、7.1 kW などがある。使用する電圧も、単相100Vと、単相200Vと、動力の三相200Vがある。通常、エアコン一台に子ブレーカー一個を用意する。なお、日本の家庭用エアコンは窓型、セパレート型とも、2001年より家電リサイクル法の対象となり、廃棄の際に適正な処理が義務付けられた。

動力の三相200Vエアコンは室外ユニットや室内ユニット共外観上一般の100/200V単相エアコンと同じであるが、省令による規制があるため受電方法が異なる。電気設備技術基準(経産省令)の規定では家庭で三相200Vを使用できるのは屋外機器のみとされている[注 1]。そのため動力エアコンは室外電源のみ三相200Vであり室内ユニットの運転および通信制御は別途室内側で受電した単相100/200Vで行われる。従って一部のメーカー(ダイキン工業など室内電源を室外ユニット送り以外で受電不可能な機種)での業務用エアコンを住宅へ設置した場合、電力会社との図面協議で指摘され送電拒否や変更を求められるケースが生じる。

家庭用エアコンは、冷房・暖房・ドライ(除湿)など多様な空気調整が可能な機種が製造・販売の多くを占める。最近はトップランナー方式による省エネ化が進み、内部の改良とも相まって以前のものよりも消費電力が少なくなっている。日本国内で発売されるセパレート型のエアコンはほぼ全てインバータ制御を内蔵した機種になっている(ただし、窓型エアコンについては非インバータのものが大半を占めている)。インバータエアコンは1981年に当時の東京芝浦電気(現・東芝)が世界で初めて発売した[14]。当初は、圧縮機には誘導電動機を用いていたが、1990年代に高効率なブラシレスDCモータを採用してPAM制御により電圧を細かく制御し[15]、現在では、日本で発売される家庭用エアコンに搭載される圧縮機用・ファン用のモータは、ほぼ全てがブラシレスDCモータになっている。日本ではインバータエアコンが主流であるが、世界的に見れば一定速である非インバータエアコンがまだまだ主流である。

また、非インバータエアコンでは商用電源周波数による能力の差があり、50Hz地域では60Hz地域より1 - 2割能力が落ちるが、インバータエアコンではそれがない。そのため、非インバータが主流であった当時のエアコンのカタログは50Hz・60Hz地域で別々に作成していた。現在では、非インバータの窓型エアコンのカタログで、50Hz・60Hzそれぞれの場合の能力が併記されているのが見受けられる。能力の違いは圧縮機に用いる誘導電動機の回転数が電源周波数に依存するためである。なお日本での窓用エアコンでのインバータ採用例は松下電器産業(現・パナソニック)のCW-G18系が空前にして絶後になった。同機種は年毎の僅かなマイナーチェンジのみで20年以上発売され続けた。窓用インバータエアコンは森田電工(現・ユーイング)からも発売されていたが、現在同社はエアコン事業から撤退している。

差別化機能としてマイナスイオンの発生、フィルタの自動清掃、空気清浄機換気加湿赤外線センサによる温度監視、人工知能による解析、HA JEMA標準端子-A、インターネットによるデータ取得など、様々機能が開発されている[16][17]。韓国ではミセモンジ(粒子状物質)対策として空気清浄機能付きが多い[12]

家庭用での暖房では、「すぐに温風がふき出して欲しい」という需要が高い。そのため、外気温が低い場合は、停止中でも機器を予熱をする機能を持つ機種がある。また、冷媒寝込みを防ぐためのヒーターを持つ機種もある。このような機種では冬場の待機電力は多い。省エネと快適性を両立させるため、気象予報などのデータから室温の変化を予測して先回りで制御する機種もある。

また、寒冷地など暖房時に外気温が低すぎる場合は、屋外で燃焼をした熱をヒートポンプする「石油エアコンディショナー」がある。


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