ウルトラマンA
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男女の合体によるヒーローの誕生は、性差を越えた完全な超人の誕生という理念を元にした設定だった[1]。これらの新設定は、『仮面ライダー』などのヒーロー番組が相次いで制作される中、他の番組との差別化を図る必要があったために試みられた。第1話でエース本人が語った銀河連邦とは、円谷プロが制作していた『ミラーマン』など他のヒーロー番組を1つの世界観でまとめるために構想されたが、明確には打ち出されなかった[2]

また、『仮面ライダー』との差別化が図られる一方、逆に同作品と同様のプロットが新機軸として導入されることにもなった。たとえば、ウルトラシリーズではヤプールのようなレギュラーの敵組織という試みは初めてのことだった[注釈 7]
タイトル

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当初のタイトルは『ウルトラA』と予定されていた[注釈 8]が、玩具メーカーのマルサンから『怪傑透明ウルトラエース』というSF玩具がすでに発売されていたことから、3月初旬に商標の問題を考慮して『ウルトラマンA』に改題された[出典 3][注釈 9]

本作品以降、ウルトラヒーローは「ウルトラマン?」というネーミングが主体となってイメージが定着した。このため、『ウルトラセブン』の名称が誤って「ウルトラマンセブン」と呼ばれる事態にも繋がっている[注釈 10]
超獣の概念

それまでのウルトラシリーズは、宇宙人以外は怪獣が主な敵役だったのに対し、本作品に登場する敵は「超獣」[注釈 11]と呼ばれている[注釈 6]。超獣が怪獣より強力であることを示すための演出として[注釈 12]、第8話では超獣ドラゴリーが前作『帰ってきたウルトラマン』にも登場した怪獣ムルチ(二代目)を惨殺する展開が織り込まれている。企画時の製作メモでは、子供たちに親しみのある生物をモチーフとしていることや、他作品の怪獣・宇宙人との区別が明確になる点などがメリットとして挙げられている[1]

当初は、ヤプールが地球上の生物と宇宙怪獣を超獣製造機で融合させて生み出した合成生物兵器という位置付けだった。だが、第23話でヤプールが全滅[注釈 13]して以降は、自然発生的に出現したり(例:ハンザギラン)、他の宇宙人の配下になっている(例:シグナリオン)など、ヤプールとの関係が不明な個体が登場するため、当初の定義に該当しない超獣も多くなっていった。ただ、設定上はAと戦って敗れた際に砕け散った巨大ヤプールの細胞が「復讐の怨念」[16]となり、動物や器物、果ては霊的な存在などさまざまな対象から超獣を生み出しているとされ、劇中ではヤプールが滅亡した後も製造済みの超獣は生き残っていることを暗示する台詞がある。ヤプールの残党は第52話まで断続的に登場し、超獣は次作『ウルトラマンタロウ』の第1話にて登場する[注釈 14]。この時は『ウルトラマンタロウ』の「怪獣より強い超獣より強い怪獣」の強さを演出するのに利用されている。

ウルトラマンメビウス』に登場する超獣も、復活したヤプールの配下である。だが、『ウルトラマンダイナ』や映画『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』(1999年)、『電光超人グリッドマン』(1993年)に登場する「超獣」は本作品とは無関係の存在である。
合体変身と南夕子の降板

本作品で設定された男女合体変身は、それまでのヒーロー番組でほとんど例のない新機軸であり、メインライターの市川森一が原案で当初から設定していたことからも、本作品のテーマの軸をなす設定だったといえる。

物語前半はこの設定が生かされたエピソードが見られたものの、いくつかの要因で南夕子の設定を生かし切ることが難しくなってきた。「男女合体変身だとヒーローとして弱々しい」や「合体変身を子供がまねることが難しい[3]」などの番組の評判としての意見もさることながら、ストーリーを展開するうえで北斗と夕子のドラマをそれぞれ語る必要があるなど、脚本側の要求があったとも言われている[注釈 15]。最終的に第28話で夕子は番組から降板することとなった[注釈 16][注釈 17][注釈 18]

オープニングの歌詞には「北斗と南」というフレーズが含まれているが、夕子の降板後もそのまま用いられた。
設定の紆余曲折

番組開始に際して様々に盛り込まれた新機軸は作品の自由度を制限する面も多く、十二分に生かされたとは言えなかった。

当初はメインライターを市川が担当し、彼が提起した事象を田口と上原が整理したり、広げるという方向で進み始めるという、3人でのローテーション体制であったが、人間の描写に一貫性を確保することが難しく、ドラマツルギーのキモの部分も三人三様であり、さまざまな点で不統一な設定になってしまうこともあった。また、あくまでも市川が観念として捉えていたヤプールも、なかなかそのイメージが貫徹されていなかった[8]。そのため、市川は『シルバー仮面』で「ウルトラ」的な題材で戦い尽くした状態となり、内的終焉に至ったとして第14話を最後に第48話まで脚本を書かなくなった[8]

第2クール終盤でヤプールが全滅した後に夕子も地球を去り、その後は地球人の少年・梅津ダンをウルトラ6番目の弟として登場させ、北斗とダンの交流を軸に物語が展開されたが、梅津姉弟は第43話を最後に、特に説明もなく姿を消している[注釈 19]

また、銀河連邦もドラマに登場することはなく、『トリプルファイター』の副主題歌やいくつかの商品展開に使用されたのみで終わった[注釈 20]

たび重なる路線変更は裏番組だった『変身忍者 嵐』との視聴率競争によるものとされており、『嵐』でも本作品を意識したテコ入れがたびたびあった[出典 4]


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