ウナギ
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日本では主にニホンウナギ蒲焼鰻丼などの調理方法が考案されて、古くから食文化に深い関わりを持つ魚である。漁業・養殖共に日本では広く行われてきたが、近年は国外からの輸入が増えている。

本項目では主に、ウナギの文化的側面について解説する。生物学的側面についてはウナギ科を参照のこと。
特徴詳細は「ウナギ科」を参照

泳ぎはさほど得意ではなく、遊泳速度は遅い。他の魚と異なり、ヘビのように体を横にくねらせて波打たせることで推進力を得る。このような遊泳方法は蛇行型と呼ばれ、ウツボハモアナゴなどウナギと似た体型の魚に見られる。

一般的に淡水魚として知られているが、海で産卵・孵化を行い、淡水にさかのぼってくる「降河回遊(こうかかいゆう)」という生活形態をとる。嗅覚は非常に優れておりイヌに匹敵する[5]

鱗はあるが、真皮の中に埋まった状態であり、体表は粘膜に覆われている。ウナギの生活史アメリカウナギ Anguilla rostrataの若魚
名称

属名 Anguilla はラテン語でウナギの意。

日本では奈良時代の『万葉集』に「武奈伎(むなぎ)」として見えるのが初出で、これがウナギの古称である。京都大学がデジタル公開している万葉集(尼崎本)では、万葉仮名の隣にかな書きがされており、「武奈伎」の箇所に「むなぎ」のかな書きが充てられている。院政期頃になって「ウナギ」という語形が登場し、その後定着した。

近畿地方の方言では「まむし」と呼ぶ。

薬缶」と題する江戸小咄では、「鵜が飲み込むのに難儀したから鵜難儀、うなんぎ、うなぎ」といった地口が語られている。また落語のマクラには、ウナギを食べる習慣がなかった頃、小料理屋のおかみがウナギ料理を出したところ案外美味だったので「お内儀もうひとつくれ、おないぎ、おなぎ、うなぎ」というものがある。
漁業におけるウナギ
漁法

ウナギは延縄や釣り、せん漁[注 1]業(後述うなぎ筒)などで漁獲されている。このうちウナギ延縄漁は河川湖沼で行われる底延縄漁である[6]

また、穴釣りは竿の先にミミズドジョウタニシ(地域によってはアユ)などの餌を付け、石垣や柵などに差し込んで釣り上げるものである[6]

このほかウナギに的を絞った伝統漁法が各地にある。
うなぎ掻き
うなぎ掻きという独特の漁具を用いる漁法(鉤引漁業の一種)で、泥中のウナギを引っ掛けて船上に引き上げる作業を繰り返す漁法である[6]。うなぎ掻きは鉤(カギ)と柄からなり、鉤は平鉄など、柄は竹などで作られている[6]
うなぎ塚
うなぎ塚漁のほか、うなぎ石漁やうなぎ石倉漁などとも呼ばれる[7]。川底に石を積み上げて(石倉などという)、その中に隠れたウナギを捕獲する漁法である[7][8]。川底に隙間を作るため、最初に川底をある程度掘る[7]、大きめの石を最初に積む[8]といった方法がとられる。ほとんどの場合は積んだ石を網で囲ってウナギを捕獲するが、紀南地方では網を用いずウナギ鋏(はさみ)という漁具が用いられている[8]。なお、石の代わりに木の束を用いる漁法がある。楢葉漬け(ナラッパヅケ)漁はナラの枝の束を川底に沈めておき、数日おいてから、引き上げて入っていたウナギを網ですくう漁法である[6]
うなぎ筒
せん漁業は筒状の漁具を用いるもので、ウナギの場合には、竹筒を用いたウナギ胴(ウナギド)漁、ウナギ刺胴漁、竹筒(タガッポ)漁などがある[6]多摩川ではウナギドウの筒には入口と内部にカエシが付いたものが用いられたが、福井県の三方湖ではウナギが入りにくくなるとして竹筒にカエシが付かないものが用いられた[9]

遊漁としての釣りにおいてはミミズカニ等を餌にした釣り方が一般的。ウナギは嗅覚に優れるため、一般的な集魚剤等、不自然な匂いのするものは食べない。よく釣れる時間帯は一般に日没から2時間前後だが、場所によっては日没から日の出まで釣れる。餌釣りでの方法としては、ブッコミ釣り(などのブッコミ仕掛けの変形、一本針が基本)、置き釣り(ウナギが通りそうな場所に針と糸が付いた竹杭を刺してしばらく置く)、穴釣り(昼間ウナギがいそうな穴に小魚等を付けるための先端にまっすぐな針を付けた竹の棒と、針と糸を持ち、直接入れて釣る)等があり、特に置き釣りと穴釣りはウナギ以外には見られない釣り方である。

また、河川ではなく、汽水域や外海に生息するウナギは青うなぎと呼ばれ、川魚特有の臭みもなく非常に珍重される。特に岡山県児島湾の青うなぎは有名である。
陸揚げ漁港

2002年度
宇佐漁港(高知県
土佐市

須佐漁港(山口県萩市

川越漁港(三重県川越町

広浦漁港(茨城県東茨城郡茨城町

長井漁港(神奈川県)

養殖

ウナギの養殖はまず、天然のシラスウナギを捕ることから始まる。黒潮に乗って日本沿岸にたどり着いたウナギの子供、シラスウナギを大量に漁獲してこれを育てるのである。養殖方法は、日本ではビニールハウスを利用した養殖が主流である。 台湾と中国南部の広東省では池を掘っただけの露地養殖。ハウス養殖は、ボイラーを焚いて水温を約30℃に保っており、成長を早めることができる。但し、養殖の過程で餌を由来としたサルモネラ菌の汚染が発生している[10]。現在商業化されている全ての「養殖ウナギ」は天然稚魚を育てたものであり、天然資源が枯渇すると養殖不可能となる。天然稚魚を必要としない受精卵からの養殖については、#完全養殖の項を参照のこと。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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