ウォルター・シッカート
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そのため、彼の作品は1894年1895年にはオーブリー・ビアズリーが美術担当編集主任を務める「イエロー・ブック」にも寄稿された[2]
カムデン・タウンJack the Ripper's Bedroomシッカート作カムデン・タウンの殺人(1908年)

シッカートは1899年に離婚し、ソーホー (ロンドン)に戻った。その後、1905年に自身のアトリエをカムデン・タウン (現カムデン・ロンドン特別区内) におき、創作活動を続ける。

1907年9月11日、カムデン・タウンでエミリー・ディモック(英:Emily Dimmock)という売春婦が彼女のアパートで殺害される事件が発生する。犯人は性交後、眠っている彼女のを切り裂くという残忍な手口で彼女を殺害した。この事件は「カムデン・タウン殺人事件」としてセンセーショナルに扱われることになる。

シッカートは数年前より裸婦が鉄のベッドに横臥している題材を多く絵画にしていた[4]が、1908年にシッカートが発表した「カムデン・タウンの殺人」は、裸の婦人が横臥したベッドの横に男性が座り、絶望したようにうつむく姿が描写され、この事件を彷彿とさせ、論争の的になった。
切り裂きジャック

また、現代ではウォルター・シッカートの名は「切り裂きジャックの真犯人ではないか?」ということでも有名である。いわゆる『切り裂きジャック(Jack The Ripper)』によるとされる一連の猟奇殺人事件については、真犯人が捕まっていないため、また世界初のシリアルキラーということもあり、多くの歴史家犯罪学者小説家・研究家などによって事件の推理がされている。それら仮説のうち、推理小説のベストセラー作家であるパトリシア・コーンウェルは、自ら巨額の私費を投じて独自に綿密な調査を行い「ウォルター・シッカートが真犯人である」と確信するに至り、著書『真相 -"切り裂きジャック"は誰なのか?-(原題:Portrait Of A Killer:Jack The Ripper Case Closed)』を2002年に発表して彼こそが切り裂きジャックの真犯人であると名指ししている。[5]

コーンウェルは2001年スコットランドヤードへたまたま見学に行った時に切り裂きジャック事件の犯行現場を案内してもらう機会があった。その時に、この事件について科学的な捜査手法DNA鑑定筆跡鑑定プロファイリングなど)を試みた人がいないことを知り、自身でそれを試みてみようと決心し、この事件の調査にのめり込むようになっていく。また、その時に容疑者の一人としてウォルター・シッカートの存在を知り、彼の絵画や性格を研究し、現存する切り裂きジャックからとされる手紙211通を調査し、いくつかの状況証拠を積み重ねたのち彼が真犯人だと確信するに至る。なお、コーンウェルはこの調査の過程でデッサンも含めるとシッカートの作品を100点以上自費で購入したという[6][7]
パトリシア・コーンウェルによる推理

もともと100年以上前の事件であり、保存状態の良い物証が少なく捜査情報も現代と比べるとずさんなものだが、それらの中から状況証拠を何点か指摘している[5]
手紙に関する考察

ミトコンドリアDNAの一致
コーンウェルは切り裂きジャックの手紙の切手に残された唾液とシッカートの私信の唾液、および彼のカバーオールなどの所持品とのDNA鑑定を行い、ミトコンドリアDNAの一致を確認した。(ただしミトコンドリアDNA塩基配列の一致では、人口の99%は排除できるものの同一人物とは断定できない。)

使用便箋と筆跡の一致
シッカートが使用していた便箋と、切り裂きジャックの名前で警察署に送られた便箋の透かしが同一メーカー (A・ピリー&サンズ社) の同一デザインで、さらには同じロット(24枚セット)から切り取ったものであった。また、筆跡も非常に似通っており、筆跡の専門家からも「同一人物の可能性が高い」との鑑定が出ている。
プロファイリング

切り裂きジャックへの執着
シッカートは生前切り裂きジャックについて関心が極めて深かったことが多くの証言として残っている。また、カムデン・タウンの彼のアトリエ(モーニントン・クレッセント6番地)について彼自身は「かつて切り裂きジャックが住んでいた」と考えていた。

コンプレックス
一連の残虐な殺害手口から女性に対する激しい憎しみが感じられ、犯人の女性に対するコンプレックスが憎しみになっているとプロファイリングし、シッカートが幼少時期に男性器瘻孔[8]を患い三回手術をしていることから性的なコンプレックスを抱いていたのではないか、と推測している。
絵画に関する考察

現場写真等との類似性
コーンウェルはシッカートを疑いだしたきっかけは、彼の名を聞き彼の画集を見たときから、と述べており、彼のゾッとするような絵にシッカートの病的な凶暴性、女性への憎しみが表れている、と表現している
[5]。調べていくうちにシッカートのデッサンエッチングに、切り裂きジャックの事件現場の写真や被害者の写真との類似性があることも指摘している。また、1908年制作の「切り裂きジャックの寝室」と題する油彩作品[9]マンチェスター市立美術館に現存している。
真犯人説への反論

パトリシア・コーンウェルが著書の中で指摘しているシッカート=真犯人説については、物証に乏しい[10]ため反論も多く出された[11]

コーンウェルが精査した切り裂きジャックが警察や新聞社へ送りつけたとされる手紙は、そもそも真犯人からのものかどうか確定できていないし、大部分はイタズラの類と考えられている[11]

シッカートが自身の性的な問題からコンプレックスを抱えていた、とする説は推測の域をでておらず、隠し子がいるという噂さえもある[11]

事件の起こった1888年の8月、10月にはシッカートはフランスにいたと考えられ、アリバイが成立すると思われている[11]

美術界の反応

また美術界からは、シッカートがイギリス美術界に与えた影響を評価し、推測に基づいてシッカートと切り裂きジャックを結びつけたこの著書自体に対する不快感を表明する意見もある[12]
脚注^ “【切り裂きジャック】画家が犯人説!?未解決事件を絵画から読み解け!【ウォルター・シッカート】”. 山田五郎 オトナの教養講座. 山田五郎. 2023年5月16日閲覧。
^ a b c WetCanvas ⇒Walter Sickert
^ a b Baron, Wendy. Sickert Paintings. Shone, Richard. Yale University Press. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 0-300-05373-8 


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