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ムーアは調査中の疑問や各話に含まれる引用文について尋ねるため、時おり友人であるニール・ゲイマンと連絡を取った[14]

その意思にも関わらず、1986年11月に、ムーアは制作の遅れを認めざるを得なくなった。第5話がニューススタンドに並んでいる時に、ムーアはまだ第9話の原作を書いていた[15]。ギボンズは制作の遅れの最大の原因は、彼がムーアの原稿を受け取る時の「細切れの受け取り方」だったと述べている。ギボンズによれば制作チームのペースは第4話あたりから遅れがちになり、これ以降、徐々にギボンズはムーアから、「一度に数ページ分の原作しか渡されなくなった。3ページ分の原作をアランから受け取って作画し、それが終わりかけると、アランに電話して言う。『エサをくれ!』するとアランが次の2?3ページ分か、ひょっとしたら1ページ分、時によっては6ページ分の原作を送ってくる」[17]。締め切りが迫ると、ムーアはタクシーで50マイルを飛ばしてギボンズに原稿を届けた。後半の各話では、ギボンズは時間の節約のために妻と息子にワク線を引くのを手伝わせた[14]。オジマンディアスがロールシャッハの奇襲を防ぐ場面では、ギボンズがセリフを1ページに収め切れなかったため、ムーアはやむなくオジマンディアスによるナレーションを削った[18]

制作が終りに近付いた頃に、ムーアはこの作品がテレビドラマ『アウター・リミッツ』の一エピソード「ゆがめられた世界統一」(原題:The Architects of Fear)に似通った物となりつつある事に気付いた[14]。ムーアとウェインは結末の変更について論争し、ムーアが勝利を収めたものの、最終話ではこのドラマが作中に登場するテレビの中で放送されているコマがあり、本作が影響を受けた事を、さりげなく認めている[16]
あらすじ

1985年10月、ニューヨーク市警はエドワード・ブレイクという男が殺された事件を調査していた。警察は解決をあきらめたものの、条例に反して今もなおヒーロー活動を続けているロールシャッハ/ウォルター・コバックスはさらに調査を継続することにした。ロールシャッハはブレイクの正体が政府に所属するスーパーヒーロー・コメディアンだと知り、「この事件はヒーロー狩りである」という仮説を立て、引退した元相棒の二代目ナイトオウル/ダン・ドライバーグ、超人的な能力を持つが人間性を失いつつあるDr.マンハッタン/ジョン・オスターマンと彼の恋人である二代目シルクスペクター/ローリー・ジュスペクツィク、成功した実業家であるオジマンディアス/エイドリアン・ヴェイトらかつて「クライムバスターズ」として共に戦った仲間たちに警告を発するも、彼の警告を真に受ける者は少なかった。

コメディアンの葬儀後、テレビの討論番組に出演したDr.マンハッタンは、記者のダグ・ロスから自身の身体から発せられる放射線が友人や同僚の癌の原因となっていることを指摘される。Dr.マンハッタン自身もその指摘に困惑する中、アメリカ政府がこれを事実と認めてしまったことで、Dr.マンハッタンは地球を離れることを選び火星にテレポートする。Dr.マンハッタンはアメリカ最大の兵器でもあったため、彼の失踪を好機と見たソビエトはアフガニスタンに侵攻、世界情勢は悪化の一途を辿る。さらにオジマンディアスの暗殺未遂事件がおこり、ロールシャッハの懸念が現実味を帯び始める。ロールシャッハはかつてのスーパーヴィランであるモーロック・ザ・ミスティック/エドガー・ジャコビへ接触するなど秘密裏に調査を進めるが、自身も罠にかけられモーロック殺害容疑で投獄されてしまうのだった。

Dr.マンハッタンの失踪により政府の給料を受け取る事が出来なくなったシルクスペクターは、ナイトオウルの家に身を寄せる。成り行きで恋に落ちた2人はコスチュームを身につけて自警団活動を再開する。その中でロールシャッハの説を信じ始めていたナイトオウルはシルクスペクターを説得してロールシャッハの脱獄を手助けする。チームとして本格的にヒーロー活動を始めようとしていた3人だったが、火星の旅を経て自分の人生を振り返ったDr.マンハッタンが現れ、シルクスペクターに対して彼女が人類の運命を握っていると詰め寄り、彼女を伴って再び火星にテレポートする。2人の口論がやがて人間の価値についての議論に発展する中、コメディアンがシルクスペクターの母親であるサリー・ジュピター(初代シルクスペクター)に対するレイプ未遂事件を起こした数年後、合意の下で性行為を行ったこと、コメディアンはシルクスペクターの生物学的な父親であるという事実が明らかになる。人間の感情や人間関係の複雑さ、そして人間の誕生の奇跡性を反映したこの発見は、Dr.マンハッタンに人間への関心を再燃させ再び地球に戻ることを決意する。

地球に取り残されたナイトオウルとロールシャッハは調査を続け、Dr.マンハッタンの「犠牲」になった人物が全員、かつて「次元開発社」に勤めていたこと、殺し屋にオジマンディアス暗殺の依頼の仲介をしたのは「ピラミッド宅配会社」だという事を突き止める。これらの関係を調べ上げるためオジマンディアスの力を借りようとヴェイト社へ向かう2人だったが、そこには誰もいない。仕方なくヴェイト社のデータベースにアクセスすると、次元開発社とピラミッド宅配会社はいずれもヴェイト社の子会社であることが判明する。オジマンディアスこそが黒幕である可能性に辿り着いた2人は、南極にあるオジマンディアスの秘密基地「カルナック」の存在も暴き、真実を知るため南極へ向かう準備を進める。この時点でロールシャッハは、それまでの調査記録の全てをまとめた日記を地元の右翼系新聞『ニュー・フロンティアズマン』誌に郵送する。

ナイトオウルとロールシャッハは「カルナック」に到着し、遂にオジマンディアスと対峙する。2人の攻撃を難なく躱したオジマンディアスは自身の計画について語り始める。核戦争による世界の滅亡を憂いていたオジマンディアスは、「地球外からの侵略者」という人類にとっての共通の敵を作る事で敵対する国家同士を結びつけることを画策、自ら巨大なエイリアンを創造し「エイリアンの侵略によりニューヨーク市民の半分が殺された」と偽装するという計画を企てていたのだった。そして、その実現のために強大かつ予測不能なDr.マンハッタンを「放射線による癌」のうわさを流布させて排除し、ロールシャッハによる計画の妨害を警戒して、自らの暗殺未遂を偽装して「ヒーロー狩り」の誤った仮説を補強し、モーロック殺害の罪を着せて逮捕させた。コメディアンは彼の計画に近づき過ぎたため、オジマンディアスによって殺害されたのだった。真実を知り「ともかく、大惨事の前に阻止できて良かった」と安堵の表情を浮かべるナイトオウルに対し、オジマンディアスは「私は昔の漫画本の悪役ではないんだ。妨害される可能性が少しでもあるなら、計画を明かすと思うかね?」「35分前に実行したよ」と言い放つ。

Dr.マンハッタンとシルクスペクターが地球に戻ると、ニューヨークでは悪夢のような大惨事が起こっていた。人々が大量死し、街は崩壊、そして街の真ん中には遺伝子操作によって生み出されたクトゥルフのような巨大な怪物の死骸が横たわる。


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