本作はヒーローコミックであると同時に、スーパーヒーローが実在するアメリカの社会を想定した歴史改変SFでもある。1938年に初めてスーパーヒーローが姿を現したことで分岐点が発生し、作中では世界が彼らの存在により以下のような劇的な影響を受けていることが示される。
科学技術が大幅に発展、電気自動車や飛行船が一般的な乗り物として普及している。
1971年、ベトナム戦争でアメリカ合衆国が勝利。
ウォーターゲート事件は発覚することなく、リチャード・ニクソンが1985年10月まで大統領を務める。
ソビエト連邦のアフガニスタン侵攻が現実の約6年後に発生する。
物語の舞台となる1985年には、アメリカとソビエトは第三次世界大戦に向け危機的な状況にある。
物語の開始時点では、1977年に「キーン条例」と呼ばれる法律が制定されてスーパーヒーローによる自警団活動が非合法となったことを背景に、スーパーヒーローという存在は既に警察や民間人から敵対されるようになっている。そのため、ヒーローの多くは引退しているが、「Dr.マンハッタン」と「コメディアン」とはアメリカ政府が認可したエージェントとして活動している。特にDr.マンハッタンの存在はアメリカにソビエトを上回る戦略的優位性を与えており、両国間の緊張を高めている。物語はコメディアンが何者かによって殺害される場面から始まる。
本作は12の章から構成され、第1章は矢印のような血痕が付着したスマイリーフェイスマークのバッジの極端なクローズアップから始まる。この血痕の形のイメージは物語を通じて何度も繰り返され、第2章以降は11時49分から始まり深夜0時0分に至る世界終末時計を彷彿とさせる黄色い時計の文字盤から始まる。各章のタイトルは章の終りで示される引用文からの抜粋であり、この引用文ではその章での出来事が暗示される。最終章を除く各章末には、キャラクターの背景設定や彼らによって世界が受けた影響を様々な側面から記述する架空の文書が含まれている。これらの作中内資料は引退したスーパーヒーローの自伝や新聞記事、雑誌のインタビュー記事、警察資料、精神科医の報告書などからの抜粋という形式をとっており、『ウォッチメン』の世界を知るのに有効であると共に世界観にリアリティを与えている。
タイトル及びテーマは、ユウェナリスの『風刺詩集(英語版)』第6篇「女性への警告」からの抜粋に由来する[2]。
ラテン語(原語)
noui consilia et ueteres quaecumque monetis amici,
"pone seram, cohibe".
sed quis custodiet ipsos custodes
cauta est et ab illis incipit uxor ? Iuvenalis、Saturae VI l.346-349[3]
英訳
I hear always the admonishment of my friends:
"Bolt her in, and constrain her!"
But who will watch the watchmen?
The wife arranges accordingly, and begins with them ? Juvenal、Satires 6 l.346-349[4]
日本語訳
私は我が友の忠告を常に聞く。
「彼女に閂を掛け、拘束せよ!」 1985年、DCコミックスはチャールトン・コミックから一連のキャラクターの権利を取得した[5]。当時ムーアは、かつて1980年代初頭に『ミラクルマン』シリーズで行ったように、自らの手で改革可能なキャラクターを登場させたストーリーの執筆を考えていた。アーチー・コミックの前身MLJコミックのマイティ・クルセイダー
しかし、誰が見張りを見張るのか?
妻は手筈を整えて、彼らと事を始める ? ユウェナリス、『風刺詩集(英語版)』 第6篇 l.346-349
制作背景