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ムーアはこの着想を用いてチャールトンのキャラクターを登場させた企画書『Who Killed the Peacemaker』(『誰がピースメーカーを殺したか』)を作り上げ[7]、DCの編集長ディック・ジョルダーノにいきなり送り付けた[5]。ジョルダーノはこの企画を採用したが、チャールトンのキャラクターを使用するという案には反対した。ムーアは「金のかかったキャラクター達が、死んだり役立たずにされて終わってしまう事に、DCは気付いたんだ」と述べている。ジョルダーノはその代わりに、オリジナルキャラクターを使用して企画を作り直すようムーアを説得した[8]。最初のムーアはオリジナルのキャラクターでは読者の感動は引き起こせないと考えていたが、後に考えを改めた。ムーアは「結局、私が代用となるキャラクターを充分に描写すれば、彼らはある意味で見慣れた存在となり、彼らの外見はある種のスーパーヒーロー一般を思い起こさせる物となる事に気付いた。そして、それはうまくいった」と述べた[6]>。

過去の作品でムーアと組んだ経験のあるアーティストのデイブ・ギボンズは、ムーアがある読み切り作品の構想に取り組んでいる事を聞き付けた。自分も参加したいと述べたギボンズに、ムーアはストーリーの概略を送った[9]。ギボンズはジョルダーノにムーアが企画したシリーズの作画を手掛けたいと伝えた。ジョルダーノはギボンズにムーアの意向はどうかと尋ね、ギボンズがムーアも自分の作画を望んでいると答えた事で、ギボンズは参加することになった[10]。カラリストのジョン・ヒギンズの風変わりな作風を好んでいたギボンズは、ヒギンズをこの企画に誘い入れた。ヒギンズはギボンズの近所に住んでおり、2人は「(作画について)語り合ったり、海を越えて手紙を送りあうよりは親密な近所づきあいをしていた」[7]。ジョルダーノが監修者としての地位に留まる一方で、レン・ウェインが編集者として加わった。ウェインとジョルダーノの両者は企画から距離を置き、やがて企画を離れた。ジョルダーノは「そもそも、アラン・ムーアの校正ができる奴がいるかね?」と述べている[5]

企画の許可を得たムーアとギボンズは、ギボンズの自宅でキャラクターの創造と、物語内の詳細な社会環境の構築、着想の元となるアイデアについての議論を行った[8]。2人が特に影響を受けたのは、『MAD』誌における『スーパーマン』のパロディ『スーパーデューパーマン』である。ムーアは「我々はスーパーデューパーマンの180度反対を目指した――喜劇的ではなく、劇的な」と語った[8]。ムーアとギボンズは、「全く新しい世界で生きる、懐かしいお馴染みのスーパーヒーロー達」の物語を考え出した[11]。ムーアの意図したのは「ある程度の重厚さと密度を備えた何か。言わば、スーパーヒーロー版『白鯨』だ」と述べた[1]。ムーアは登場人物の名前と説明を思い付いたが、その外見の詳細はギボンズに任せた。ギボンズは敢えてその場でキャラクターのデザインはせず、代わりに「手の空いた時にそれをやった。(中略)おそらくスケッチだけで2、3週間は掛かった」[7]。ギボンズは彼のキャラクター達を描き易いようにデザインした。ロールシャッハが一番お気に入りのキャラクターだったとギボンズは語っている。その理由について「描かねばならないのは帽子だけだ。帽子さえ描ければ君にもロールシャッハは描ける。後はただ顔の輪郭を描いて黒インクの染みを何滴か垂らせば、それでロールシャッハの出来上がりだ」と述べた[12]

DCの読み切り作品『キャメロット3000』が原因で直面していた出版延期を避けようと、ムーアはすぐさま原作の執筆に着手した[13]。ムーアは第1話の原作を執筆していた時に「私は6話分のプロットしか考えていなかった。我々は12話の作品を契約していたというのに!」と述べた。ムーアが考えた解決策は、物語の本筋と登場人物の過去の出来事を、各話で交互に扱うという物であった[14]。ムーアはギボンズに対して非常に詳細な原作を執筆した。ギボンズは「『ウォッチメン』第1話の原作は、行間のぎっしり詰まったタイプ原稿で101ページはあったと思う。各コマの説明の間に空行はなくて、各ページの間にさえ空行がなかった」と回想している[15]。原作を受け取ると、ギボンズはすぐに原稿にページ数を書き込んだ。「もし床に原稿を落としたりしたら、正しい順番に並べなおすのに2日はかかるだろうからね」と語った。作中のセリフとキャプションや具体的な場面描写には、マーカーで印が付けられた。「マーカーで線を引く箇所を見極めるだけでも、ちょっとした一仕事だったよ」と語った[15]。ムーアは詳細な原作を渡していたが、各コマの説明はしばしば「これは君の作画には向かないかもしれない。一番上手くいくやり方でやってくれ」という注意書きで終わっていた。それにも関わらず、ギボンズはムーアの指示を忠実に実行した[16]。ギボンズは『ウォッチメン』世界の視覚化にあたって、ムーア自身も後になるまで気付かなかったような、背景の細かい描写を多数挿入した[1]。ムーアは調査中の疑問や各話に含まれる引用文について尋ねるため、時おり友人であるニール・ゲイマンと連絡を取った[14]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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