ウォッチメン
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ロールシャッハはブレイクの正体が政府に所属するスーパーヒーロー・コメディアンだと知り、「この事件はヒーロー狩りである」という仮説を立て、引退した元相棒の二代目ナイトオウル/ダン・ドライバーグ、超人的な能力を持つが人間性を失いつつあるDr.マンハッタン/ジョン・オスターマンと彼の恋人である二代目シルクスペクター/ローリー・ジュスペクツィク、成功した実業家であるオジマンディアス/エイドリアン・ヴェイトらかつて「クライムバスターズ」として共に戦った仲間たちに警告を発するも、彼の警告を真に受ける者は少なかった。

コメディアンの葬儀後、テレビの討論番組に出演したDr.マンハッタンは、記者のダグ・ロスから自身の身体から発せられる放射線が友人や同僚の癌の原因となっていることを指摘される。Dr.マンハッタン自身もその指摘に困惑する中、アメリカ政府がこれを事実と認めてしまったことで、Dr.マンハッタンは地球を離れることを選び火星にテレポートする。Dr.マンハッタンはアメリカ最大の兵器でもあったため、彼の失踪を好機と見たソビエトはアフガニスタンに侵攻、世界情勢は悪化の一途を辿る。さらにオジマンディアスの暗殺未遂事件がおこり、ロールシャッハの懸念が現実味を帯び始める。ロールシャッハはかつてのスーパーヴィランであるモーロック・ザ・ミスティック/エドガー・ジャコビへ接触するなど秘密裏に調査を進めるが、自身も罠にかけられモーロック殺害容疑で投獄されてしまうのだった。

Dr.マンハッタンの失踪により政府の給料を受け取る事が出来なくなったシルクスペクターは、ナイトオウルの家に身を寄せる。成り行きで恋に落ちた2人はコスチュームを身につけて自警団活動を再開する。その中でロールシャッハの説を信じ始めていたナイトオウルはシルクスペクターを説得してロールシャッハの脱獄を手助けする。チームとして本格的にヒーロー活動を始めようとしていた3人だったが、火星の旅を経て自分の人生を振り返ったDr.マンハッタンが現れ、シルクスペクターに対して彼女が人類の運命を握っていると詰め寄り、彼女を伴って再び火星にテレポートする。2人の口論がやがて人間の価値についての議論に発展する中、コメディアンがシルクスペクターの母親であるサリー・ジュピター(初代シルクスペクター)に対するレイプ未遂事件を起こした数年後、合意の下で性行為を行ったこと、コメディアンはシルクスペクターの生物学的な父親であるという事実が明らかになる。人間の感情や人間関係の複雑さ、そして人間の誕生の奇跡性を反映したこの発見は、Dr.マンハッタンに人間への関心を再燃させ再び地球に戻ることを決意する。

地球に取り残されたナイトオウルとロールシャッハは調査を続け、Dr.マンハッタンの「犠牲」になった人物が全員、かつて「次元開発社」に勤めていたこと、殺し屋にオジマンディアス暗殺の依頼の仲介をしたのは「ピラミッド宅配会社」だという事を突き止める。これらの関係を調べ上げるためオジマンディアスの力を借りようとヴェイト社へ向かう2人だったが、そこには誰もいない。仕方なくヴェイト社のデータベースにアクセスすると、次元開発社とピラミッド宅配会社はいずれもヴェイト社の子会社であることが判明する。オジマンディアスこそが黒幕である可能性に辿り着いた2人は、南極にあるオジマンディアスの秘密基地「カルナック」の存在も暴き、真実を知るため南極へ向かう準備を進める。この時点でロールシャッハは、それまでの調査記録の全てをまとめた日記を地元の右翼系新聞『ニュー・フロンティアズマン』誌に郵送する。

ナイトオウルとロールシャッハは「カルナック」に到着し、遂にオジマンディアスと対峙する。2人の攻撃を難なく躱したオジマンディアスは自身の計画について語り始める。核戦争による世界の滅亡を憂いていたオジマンディアスは、「地球外からの侵略者」という人類にとっての共通の敵を作る事で敵対する国家同士を結びつけることを画策、自ら巨大なエイリアンを創造し「エイリアンの侵略によりニューヨーク市民の半分が殺された」と偽装するという計画を企てていたのだった。そして、その実現のために強大かつ予測不能なDr.マンハッタンを「放射線による癌」のうわさを流布させて排除し、ロールシャッハによる計画の妨害を警戒して、自らの暗殺未遂を偽装して「ヒーロー狩り」の誤った仮説を補強し、モーロック殺害の罪を着せて逮捕させた。コメディアンは彼の計画に近づき過ぎたため、オジマンディアスによって殺害されたのだった。真実を知り「ともかく、大惨事の前に阻止できて良かった」と安堵の表情を浮かべるナイトオウルに対し、オジマンディアスは「私は昔の漫画本の悪役ではないんだ。妨害される可能性が少しでもあるなら、計画を明かすと思うかね?」「35分前に実行したよ」と言い放つ。

Dr.マンハッタンとシルクスペクターが地球に戻ると、ニューヨークでは悪夢のような大惨事が起こっていた。人々が大量死し、街は崩壊、そして街の真ん中には遺伝子操作によって生み出されたクトゥルフのような巨大な怪物の死骸が横たわる。Dr.マンハッタンは自身の能力が制限されている事に気付き、南極から発せられるタキオンを辿って2人はテレポートする。オジマンディアスは南極に集まった一同に「宇宙から侵略の脅威に直面したアメリカとソビエトは戦争を中止し、共通の脅威に対抗するために電撃的な和解を行った」とのニュース放送を見せ、「やったぞ!」と歓喜の涙を流す。ほとんどの者が世界の平和を守るためにオジマンディアスの陰謀を国民から隠蔽することに同意したが、唯一ロールシャッハのみは「笑わせるな」「世界が滅んでも絶対に妥協はしない」と同意を拒絶する。ロールシャッハはDr.マンハッタンに止められるも「止めたいなら自分を殺すしかない」と言い放ち、Dr.マンハッタンは彼を気化させて殺害する。

オジマンディアスはDr.マンハッタンに「最後には私のしたことは正しかったんだよな?」と聞くが、Dr.マンハッタンは「最後など存在しない」と言い残し、新たに価値を見出した生命を創造するために永久に地球を去る。ナイトオウルとシルクスペクターは新たな身分を手に入れ、恋愛を続ける。

ニューヨークでは『ニュー・フロンティアズマン』誌の編集長が、新しい政治情勢のためソビエトに対する批判的な記事が書けず、記事に2ページ分の穴が空いてしまった事を嘆く。彼は助手に適当な記事を作るよう命令し、助手はクランク・ファイルから記事を見つくろい始める。編集者から「悲惨な人生の中で、せめて一度ぐらい責任を持って意味のある仕事をしてみろ!」と叱責された助手の手が山積みになったクランク・ファイルの頂上にあるロールシャッハの日誌に近づいて物語は終わる。

そして、最終ページでは12時を示した核戦争までの『残り時間』がゼロになった、あるいは核戦争の『可能性』がゼロになった世界終末時計が象徴的に描かれる。
登場人物
クライムバスターズ
ロールシャッハ/ウォルター・ジョゼフ・コバックス(Rorschach/Walter Joseph Kovacs

本作の狂言回し。違法に活動を続けている唯一のヒーロー。超能力こそ持たないものの、かつて体操競技やアマチュア・ボクシングに才能を見せた身体能力を武器とする。また、己の正義感に異常なまでに忠実であり、その在り方はニーチェの提唱した精神的「超人」に近い。その行動は暴力的であり、少なくとも2件の殺人容疑が掛けられており、正当防衛の殺人が5件はある。1977年にキーン条例が制定された時は、連続強姦魔の死体に「断る!」というメッセージを添えて警察署の前に放置した。フェドーラの帽子、灰色のスカーフ、茶色のトレンチコート、同様の色の革手袋、紫色のストライプ、全く磨かれていないエレベーターシューズ、そしてロールシャッハ・テストを思わせる意匠のマスクをコスチュームとしている。マスクは白色の生地に挟まれた黒い液体が圧力や熱に反応して流動して模様が変わる「インクブロットマスク」。その他、ガス圧でフックを発射するワイヤーガン[注 1]と日記を携帯しており、捜査状況や自警活動の内容を記録している[注 2]。正体は身長167cm、体重64kgの赤毛で無表情な男性として示される[注 3]。無職であり、普段は「The End is Nigh(終末は近い)」と書かれた看板を持って街中を徘徊している。彼は自身の醜い顔の代わりに、覆面を「本当の顔」だとしている[注 4]。風呂に入らず、洗濯もせず、部屋も掃除しないため、非常に不潔(本人は全く改善する気はない。)。また、激しい右翼主義者であり、幼少期の経験から女性や性行為に嫌悪感を抱いている。幼少期を貧しい母子家庭で育ち、売春で生計を立てていた母親からは虐待を受けていた。その後自身が起こした暴力沙汰がきっかけで児童養護施設に引き取られることとなり、そこで様々な分野で才能を見せるとともに社会性の回復も認められ、出所後は縫製工場に勤務する。1964年3月、かつて顧客であった女性(キティ・ジェノヴィーズ)が殺害されたこと、大声で助けを求める彼女を誰も助けようとしなかったことを知ったことで人間の本性は無関心で破廉恥なクズだと悟り、キティのドレスの残骸[注 5]でマスクを作成、ヒーローとして活動を開始する。


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