ウェールズ語は、古代ケルト系ブリトン人によって話されていたケルト系言語である共通ブリソン語から発展した。島嶼ケルト語に分類されるこのブリソン語はおそらく青銅器時代または鉄器時代(英語版)にブリテンへ到着し、おそらくブリテン島のフォース湾以南の全域で話されていた[26]。中世前期には、共通ブリソン語は方言の差異が大きくなったことでばらばらになり始め、ウェールズ語やその他のブリソン諸語へと発展した。ウェールズ語がいつはっきりと別言語となってかは明らかではない[21][27][28]。
言語学者のケネス・H・ジャクソンは、音節構造と音様式における進化は西暦550年ごろまでに完了したことを示唆し、この時から西暦800年ごろまでの期間を「原始ウェールズ語」と分類した[29]。この原始ウェールズ語は、ウェールズとヘーン・オグレッズ(英語版)(Hen Ogledd、古い北部; 現在はイングランド北部およびスコットランド南部のかつてのブリソン語圏)の両方で話されていたかもしれず、したがってウェールズ語と同様にカンブリア語の祖先だったかもしれない。しかしながら、ジャクソンは、これらの2つの変種はその頃までには既にはっきりと異なる言語であったと考えた[21]。最も初期のウェールズ語の詩(Cynfeirdd(英語版)〔草創期の詩人たち〕の作品)は一般的に原始ウェールズ語期に遡ると考えられいてる。しかしながら、この詩の多くはヘーン・オグレッズで詠まれたと考えられており、元々詠まれていた素材や言語の年代についてさらに疑問が生じている[21]。この個人的考えは、カンブリア語がヘーン・オグレッズで使用された言語であると広く信じられていたという事実が原因である。8世紀のタウイン(英語版)の碑文は、カンブリア語では既に名詞の転置で屈折がなくなっていたことを示している[30]。
ジャネット・デイヴィーズは、ウェールズ語の起源がかなりはっきりしていないと提案した。『The Welsh Language: A History』の中で、デイヴィーズは、ウェールズ語は西暦600年よりもさらに前に存在したかもしれないと提案した。これは、ブリソン語からの最終音節の脱落が証拠となっている。*bardos(詩人)はbarddとなり、*abona(川)はafanとなった[27]。デイヴィーズとジャクソンは共に音節構造と音における小さな変化を古ウェールズ語の誕生の証拠として挙げているものの、デイヴィーズはこの派生言語を全く新しい言語として特徴付けるのではなく、Lingua Britannicaと呼ぶのがより適切かもしれないと示唆した。 「原始ウェールズ語」の時代がいつからいつまでかについては広く議論されており、歴史家によっては何百年もの差がある。 次の主な時代が古ウェールズ語(Hen Gymraeg、9世紀から11世紀)である。ウェールズとスコットランドの詩はこの言語形式で保存されてきた。ゲルマン人
原始ウェールズ語
古ウェールズ語詳細は「古ウェールズ語」を参照
中期ウェールズ語詳細は「中期ウェールズ語」を参照
中期ウェールズ語(Cymraeg Canol)は12世紀から13世紀のウェールズ語に付けられた分類名である。ほぼ全てが現存する初期の写本『マビノギオン』の言語であるが、それらの物語それ自身は確実にさらに古い。また、現存するウェールズ法(英語版)写本の言語でもある。中期ウェールズ語は現代のウェールズ語話者にとってはそれなりに理解できる。 聖書のウェールズ語への翻訳は日常生活においてウェールズ語の使用の維持に役立った。新約聖書は1567年にウィリアム・セイルズベリー
ウェールズの言語、1750年 - 1900年
1750年
1800年
1850年
1900年
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近代ウェールズ語
近代ウェールズ語は初期近代ウェールズ語と後期近代ウェールズ語にさらに分割される[33]。初期近代ウェールズ語は15世紀から16世紀の終わりまで続き[34]、後期近代ウェールズ語期は大体16世紀以降である。現代のウェールズ語は16世紀のウェールズ語とは大きく異なってはいるが、流暢なウェールズ語話者が理解するのに苦労することがほとんどない程十分似ている。近代ウェールズ語期には、ウェールズ語人口が減少した。ウェールズ語話者の数は言語の絶滅が懸念されるほどに減少した。ウェールズ政府の措置や法律制定は、例えば教育を通じて、ウェールズ語話者の増加に努めてきた。
地理的分布
ウェールズ「ア・ヴロー・ガムラーイグ」を参照2011年国勢調査でウェールズ語話すことができると答えた回答者の地域毎の割合
ウェールズ語は記録された歴史を通してウェールズにおいて継続的に話されてきたが、1911年までには少数派言語(人口の43.5%がウェールズ語話者)となっていた[35]。
この減少はその後の数十年間にわたって続いたが、ウェールズ語は死に絶えなかった。21世紀の始まりまでには話者数はもう一度増加し始めた。これは少なくとも部分的には、ウェールズ語による教育が増加した結果による[36][37]。
2004年ウェールズ言語使用調査では、ウェールズの人口の21.7%がウェールズ語を話すことが示された[38]。この割合は1991年の18.5%、2001年の20.8%から増加傾向にあった。しかしながら、2011年の国勢調査では、話者数は56万2000人(人口の19.2%)へとわずかに減少した[39]。2011年の調査では、ケレディジョンとカーマーゼンシャーで話者の割合が初めて50%を下回るなど、ウェールズ語地域の中心地において話者数が大きく減少していることも示された[40]。しかしながら、2013?15年のウェールズ言語使用調査によれば、3歳以上の人口の24%がウェールズ語を話すことができた[41]。
イギリス国家統計局による年次人口調査では、2020年3月の年度終わりで、85万5200人(3歳以上の人口の28.3%)がウェールズ語を話すことができた、推計された。これは、2011年の国勢調査以降にウェールズ語話者数が増加した可能性を暗に示している。