ウェストミンスター・システムの特徴はイギリス連邦諸国へと輸出された。また、アジアやアフリカ、カリブ海の旧イギリス植民地が独立する際にも、多く採用された[3]。 現在、ウェストミンスター・システムと呼べる政治制度を持っている国としては、イギリスのほか、オーストラリア、カナダ、インドなどがある。 過去にウェストミンスター・システムを採用していたが、現在は異なる特徴を持つ国も存在する。ニュージーランドは1996年の選挙から比例代表制を導入し、ウェストミンスター・システムとは言い難くなった[3]。そのほか、南アフリカ共和国、旧ローデシア共和国、ナイジェリアなどでも例が見られた。アメリカ合衆国の政治学者レイプハルトは2005年の著書で、イギリスの制度の影響を強く保持している国としてバルバドスをあげていた[3]が、2021年にバルバドスは君主制廃止し共和制に移行した。 またイギリスにおいても、2011年議会任期固定法により首相の下院解散時期決定権が制限されるなど、制度の変容がみられる(2022年議会解散・召集法の成立により廃止)。 日本では、完全なウェストミンスター・システムといえる制度は存在したことがないが、その概念は大正デモクラシー期にはじまる憲政の常道に大きな影響を与えたとされる。また1994年の小選挙区比例代表並立制導入の際にも、イギリスの二大政党制を手本とする議論が多く見られた。一方で、過剰な数値目標を伴うマニフェストを作成する政党が現れるなど、ウェストミンスター・システムへの誤解や行き過ぎも見られた[2]。
制度上院下院
政府の長(内閣総理大臣、略して首相とも呼ばれる)には議会で最大の議席数を有する政党の党首が任命され、行政の責任を負う。
政府の代表が率いる内閣は政党の幹部や議員で構成される。
国家元首の統治権は概ね名目上のものであり、首相などの助言者の判断に従って行使される。
ただし首相の任命は助言を要さない。議会多数派の指導者が定まらない場合は元首が自らの判断で任命することがある。
野党の存在が認められる複数政党制を採用する。
二院制の議会では、少なくとも一方(下院)、または一院制の議会は必ず議員を選挙によって選出する。
下院が予算案を否決、内閣不信任決議案を可決(内閣信任案を否決)された場合は、内閣は総辞職するか下院の総選挙を実施する。
首相は内閣への信任権のある議院の議員であることが望まれる。就任時に議席がない場合は次期総選挙で立候補することが例である。
下院はいつでも解散、総選挙が可能である。
議会の権利として、議会が適切と認めればいかなる問題も議論することができる。
議会における発言を記録する議事録を採用する。
実例
脚注[脚注の使い方]^ a b Richards, David; Smith, Martin (2002). Governance and Public Policy in the United Kingdom. Oxford University Press
^ a b 小堀眞裕『ウェストミンスター・モデルの変容』法律文化社、2012年。
^ a b c アレンド・レイプハルト 著、粕谷祐子 訳『民主主義対民主主義』勁草書房、2005年。
関連項目
アーレンド・レイプハルト
議院内閣制
表
話
編
歴
権力分立
三権分立
立法(議会・国会 (曖昧さ回避)・国会 (日本))
行政(大統領・内閣・内閣 (日本))
司法(裁判所・日本の裁判所)
追加的権力
憲法裁判所
最高監査機関(英語版)(政府業績監査(英語版)・INTOSAI(英語版)・政府監査機関(英語版、フランス語版、ドイツ語版、イタリア語版)・会計検査院)
公務員委員会(英語版)(人事院)
選挙委員会(英語版、フランス語版、中国語版)(選挙管理委員会)
オンブズマン(英語版、フランス語版、ドイツ語版、イタリア語版)
国内人権機関(英語版、スペイン語版、ドイツ語版)
検察(検察庁)
反汚職・反不正機関(英語版)
五権憲法(中国語版)(孫文・中華民国憲法)
各国
権力分立 (オーストラリア)(英語版)
権力分立 (連合王国)(英語版)
権力分立 (アメリカ合衆国)(英語版)
権力分立 (シンガポール)(英語版)
関連項目
権力融合(英語版、スペイン語版)
SoD (職務分離)(英語版、ドイツ語版)
司法の独立
違憲審査制
重複任務(英語版)
大統領制(半大統領制)
議院内閣制(ウェストミンスター・システム)
連邦
権限委譲 (地方分権)(英語版)(イギリスにおける権限委譲)
両院制