ウイングス
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1972年1月に新メンバーとしてジョー・コッカーのバックバンド、グリース・バンドのギタリストだったヘンリー・マカロックが参加した[3]ウイングスは、『ワイルド・ライフ』の発売から約2か月後の2月9日、イギリスのノッティンガム大学を皮切りに最初のツアーを開始した[9]。抜き打ちで選んだ大学に予告なく赴き、マッカートニー自らが大学と交渉して公演を行うというこのツアーは、新バンドのデモンストレーション的要素の強いものであった。同年7月からは、本国を除くヨーロッパを回る2度目のツアーを敢行した。ちなみに、これらのツアーではビートルズの楽曲は一切演奏されていない[10]

1972年にウイングスはシングル「アイルランドに平和を」「メアリーの子羊」「ハイ・ハイ・ハイ」「C・ムーン」を発表した。「アイルランドに平和を」は政治的な内容であるとして、「ハイ・ハイ・ハイ」は薬物を連想させ、性的な内容にも捉えられるとの理由によりラジオ等で放送禁止となったが、それでもチャート上ではヒットした。
音楽的全盛期:1973年 - 1976年

1973年になると、新アルバム『レッド・ローズ・スピードウェイ』の先行シングル「マイ・ラヴ」が大ヒットし[11]、その勢いでアルバムも前作を大きく上回る売上を記録しただけでなく、ウイングスにとってどちらも初の全米1位を記録した。このアルバムは、当初『ラム』制作時に録音された楽曲も収録し、2枚組アルバムとして制作されたものの、前作の売上不振を理由に所属レコード会社キャピトルの反対により1枚にまとめられた[12][注釈 5]。また同様の理由で以後の数枚のシングルやアルバムにおけるアーティスト名は、“ポール・マッカートニー&ウイングス”となっている[13]。映画の主題歌となったシングル「007 死ぬのは奴らだ[注釈 6]も同様に全米2位に到達するヒットを記録した。

ウイングスとしての活動を軌道に乗せたマッカートニーは英国ツアーを終えた後、新作アルバムをナイジェリアラゴスで制作することを決定する。しかし準備を終えてラゴスに向かう前日、マカロックとセイウェルがグループを脱退する[14][注釈 7]。結局、8月にマッカートニー夫妻とレインの3人でナイジェリアに渡り、1か月半に及ぶラゴスでの録音に臨んだが、デモテープの盗難などの問題が続々と発生した。マッカートニーはベースやギターだけでなくキーボードやドラムなども演奏し、一人で数役を担っていた。録音された作品は最終的にイギリスでの仕上げ作業を経て、その年の暮れに『バンド・オン・ザ・ラン』として発売された。このアルバムは全世界で600万枚以上の売上を記録し、ビートルズ解散後のマッカートニーのアルバムとしては最大級の成功を収めた[注釈 8]。またシングル「愛しのヘレン」「ジェット」「バンド・オン・ザ・ラン」もヒットした[18]。なお、これらのシングルやこのアルバムの他の収録曲の一部は、2010年以降もマッカートニーの公演での定番のレパートリーとなっている。

1974年、マッカートニーは公演活動の再開を思案する。新たなメンバーを必要としたマッカートニーは選考を行い、最終的にギター担当の元ストーン・ザ・クロウズジミー・マカロック、ドラマーとしてジェフ・ブリトンを採用した[注釈 9]。この2人を加えた新たな編成により、テネシー州ナッシュビルロンドンなどで録音を行い、シングル「ジュニアズ・ファーム」を発表した。1975年1月にはルイジアナ州ニューオーリンズに渡って本格的なアルバムの制作に取り掛かる。しかしその矢先にブリトンが脱退[注釈 10]。代わってジョー・イングリッシュがドラマーとして加入し、完成したアルバムは『ヴィーナス・アンド・マース』として同年5月に発売された。このアルバムは、前作の成功が追い風となり、アメリカでは発売前の予約枚数だけで200万枚に達する高い売上を記録し、先行シングル「あの娘におせっかい」とともに全米1位を達成した。ジミー・マカロック(左)とポール・マッカートニー(1976年)デニー・レイン(1976年)

『ヴィーナス・アンド・マース』には、ポール以外のメンバーがリード・ヴォーカルをとる楽曲が2曲収録されている。その一つ「メディシン・ジャー」はジミー・マカロック自身による作曲であったが、こういった楽曲を収録する背景には、「あくまでポール・マッカートニーのバックバンドにすぎない」という世間のウイングスに対する一般的なイメージを払拭したいとする彼の狙いがあった。なお、アーティスト名もこのアルバムからウイングス名義に戻っている。

1975年9月より、ウイングスは12ヶ国で64回公演の大規模なツアーを開始する。その最中に制作されたのが、1976年に発売された『スピード・オブ・サウンド』である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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