ウイッカ
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有角神、ことにパンまたはファウヌスに関係した神々は、母なる神ほどには一般的でなかったが、それでもなお重要であった[14][注 4]。母なる神と有角神という二つの考えは当時、アカデミックな文献でも一般の印刷物でも広く受け入れられていた[16]。ガードナーはこれらのコンセプトを用いてウイッカの基盤となる教義を形成し、発展させたのであると考えることもできるが、ガードナーの弟子であったヴァリアンテや、多くのガードナー派魔女たち(彼らの中にはアカデミックな立場で活動する者もいる)は、ガードナー派の実践の中には既存の出版物などには見られない独自の要素が含まれていると主張する。つまりガードナーは少なくとも部分的にはクラッターバックから何かの伝統を受け継いだと考える。どちらにせよ、ルーツを完全に解き明かすのは難しい。そしてルーツに関係なく、ウイッカは多くの人々にアピールし続けている。
ウイッカと魔女“ウイッカの母”ドリーン・ヴァリアンテが所有していた有角神と地母神の祭壇

古英語: wiccaは「魔術師」の意味であった。現代英語: witch(ウイッチ)[注 5]はこの言葉をひいている。また、古英語: wic には「曲がる」「ウィット」「賢さ」という意味がある。

ウイッチクラフト(: Witchcraft、魔女術と和訳される)は、宗教としてのものもあれば、宗教と関係のない単なる魔術的な技術の意味で使われることもある。前者の場合はウイッカと同類であるが、後者の場合、ウイッカとは多少異なる。前者は宗教、後者は宗教と関係のない呪術的技術の意味である。事実、宗教に関係なく実践できる。ウイッカは、魔女技術という意味でのウイッチクラフトを含む宗教である。

同様にウイッカはペイガニズムの一形態であり、多くのウイッカンは自分はペイガンであると考えているが、ペイガニズムはウイッカやウイッチクラフトと無関係な諸伝統も含むものである。

ウイッカンは女神を主神として崇拝する。また、ほとんどの場合、女神の子どもであり配偶者になる男神も崇拝の対象となる。ウイッカンは年に8回開かれる季節の祝祭であるサバトと、エスバト(英語版)(Esbat、通常は満月の集会)によって神々を讃える。ガードナー派のウイッカでは、豊饒儀礼としてハイプリースト(司祭長)とハイプリーステス(女司祭長)による性的交わりが行われる[注 6](cf. ヒエロス・ガモス)。ウイッカンには倫理規定がある。ウイッチクラフトはネガティブな印象を持たされてしまった語であるが、スペル(まじない)やハーブ(薬草)の使用といった実践的な技術なのであって、目的の善悪とは直接関係するものではない。ウイッカンはウイッチクラフトの利用を建設的で善なるものと心得ており、いわゆる黒魔術(ウイッカンはこの用語を認めないが)はウイッカンの信条と倫理に悖ると見ている。
信条と実践英国のエイブベリーで2005年のベルテインに行われたハンドファスティング(handfasting、ペイガンの結婚式)一年の車輪

ウイッカ信仰はさまざまで、信条を一般化するのは難しい。多くの場合、二柱の神(女神と男神 - 時には有角神)を崇拝する。フェミニスト流派であるダイアナ派(Dianic Wicca、ディアーナ派のウイッカ)では女神を主に信仰する。この場合男神の役割は皆無かあっても少ない。二柱の神を主神に崇拝するとはいえ、実際は世界中の多くの神々の存在を認め、それらを崇拝することも多い。特に、イギリスのペイガニズムのルーツであるケルト神話ゲルマン神話に言及されることが多い。

(訳注: ケルトでは、春分夏至秋分冬至の quarter day(=四季の分け目になる)の中間に クロスクォータデイ cross-quarter day(=季節の盛りになる)をおき、春分と夏至の中間を Beltane、それ以降同様に Lammas、Samhain、Imbolc と呼ぶ)

典型的なウイッカンは、満月(場合によっては新月)をエスバトと名付けて、魔法の作業を行う際に重要視する。また、サバトと呼ばれる年8回の祭日を祝う(詳細は一年の車輪(英語版)参照)。その内重要な方の4つ(大サバト)は、クロスクォータデイにあたり、古代ケルトの火祭に相応したものである。ハロウィーン の原型である10月31日のサーオィン(Samhain)[注 7]五月祭の前夜(May Eve)である4月30日のベルティーン(Beltane)[注 8]、7月31日の収穫祭(Lammas)またはルーナサ(Lughnasad)、聖燭節(Candlemas)の原型である2月2日のイモーク(Imbolc, Imborg, Oimelc)[注 9]。残りの4つ(小サバト)は夏至[注 10]冬至ユール Yule)、春分オスターラ Ostara、Eostar、Eostre)と秋分(メイボン、マボン Mabon)である。

ウイッカンはカヴンと呼ばれる実践グループで儀式を行い、先輩からの指導を受ける。カヴンに属さず単独で行動するウイッカンもいて、ソロのウイッカン(Solitary Wiccan)と呼ばれる。ソロのウイッカンというのは実践グループに入っていないだけで、親睦のための集会や、既存のグループの儀式集会に不定期に参加したりすることもある。

伝統的に13人のカヴンが理想とされるが、実際はもっと少ない。これを超えてカヴンが育った場合は、複数のカヴンに分離 [注 11]する。
日本における現代魔女

日本において、ウイッカは「現代魔女」や「魔女宗」という形で受容されている。嚆矢は1980年代に魔女を名乗った占い師のヘイズ中村である。2020年にはエコロジー思想アナキズムフェミニズム現代美術などに重きを置いたアメリカ西海岸の魔女文化に触れた円香などが活動している[18]

河西瑛里子は日本において魔女と名乗る人々は、女性性的マイノリティとしての自認、代替療法であるハーブ、占いや魔術といった「非科学」的な事柄に関心が強く、「オルタナティヴ」な生き方を、それぞれの方法で示してくれる先駆者のように思える[19]としている。


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