本作の序曲は有名である[18]。詳細は「ウィリアム・テル序曲」を参照
序曲は四部構成で、それぞれ切れ目なく次の楽節に移る。構成は以下のとおり。 役柄声域1829年8月3日初演のキャスト
第1部(夜明け) - 5つのチェロのための楽句から始まる、ゆっくりとした楽節。
第2部(嵐) - フル・オーケストラで奏でられる、ダイナミックな楽節。
第3部(静寂) - イングリッシュホルンがメロディを奏でる。
第4部(スイス軍隊の行進) - 非常にダイナミックな、「騎兵隊突撃」のギャロップ。ホルンとトランペットで始まり、フル・オーケストラへと広がる。
役柄
(指揮者:
フランソワ・アブネック)
ギヨーム・テルバリトンアンリ=ベルナール・ダバディ
エドヴィージュ(テルの妻)メゾソプラノモリ嬢 (Mlle Mori)
ジェミ(テルの息子)ソプラノルイーズ=ズルマ・ダバディ
マティルド(ハプスブルク家の皇女)ソプラノロール・サンティ=ダモロー
オペラの冒頭以前の出来事として、スイスの指導者メルクタールの息子アルノールは、オーストリアのハプスブルク家の皇女マティルドが溺れそうなところを助けたことがあった。政治情勢にもかかわらず、アルノールとマティルドは身分の差を超えて愛し合う秘密の間柄となった。父のメルクタールはこのことを知らない。 ルツェルン湖 畔ルートルドを乗せて小舟を出すテル 5月、羊飼いの祭の日、 ルツェルン湖近くの弓の名人テルの家の前。長老のメルクタールは祝賀の場で3組の合同結婚式を伝統に基づいて執り行うことになっている。漁師のリュオディが愛の歌「早く僕の船においで!」(Accours dans ma nacelle)を歌っている。しかし、アルノール自身はその3組の中に入っていない。彼はオーストリアの守備隊員だが、故国に対する愛とマティルドに対する愛の間で板挟みになっているのである。メルクタールは結婚する素振りを全く見せない息子アルノールを嘆くのだった。一方、オーストリアによる圧制が強まっていることを憂慮するギヨーム・テルはおめでたな気分に浸ることができない。神聖ローマ帝国の影響が薄れて以来、オーストリアはスイスの伝統的儀式に対する弾圧を強めているのだった。テルがアルノールにスイス人の抵抗運動とその正当性を訴え、二重唱「どこへ行く? ああ、我が憧れの人」(Ou vas-tu? Ah! Mathilde, idole de mon ame!)となり、アルノールの内心の葛藤が明白になる。メルクタールが3組のカップルを祝福すると祝いの踊りが始まり「牧人よ!あなた方の声が一つになって」(Pasteurs, que nos accents s'unissent)が合唱される。弓術大会も行われ、テルの息子ジェミが優勝する。村人たちの結婚の祝宴はさらに続く。しかし、牧歌的光景は長く続かず、ホルンのファンファーレで祭りが中断され、オーストリア人総督ジェスレルの到着が告げられる。スイス人は彼を憎んでいる。次いで、ジェスレルの軍隊に追われた牧人のルートルドが助けを求めて駆け込んでくる。ルートルドはジェスレルの兵士の一人が、ルートルドの娘を襲おうとしたので、ルートルドは娘を守ろうとして兵士を殺してしまったのだ。彼の逃げ道は湖だけであった。船で反対岸に渡れば助かることは分かっているのだが、荒れ模様の天候に漁師たちは船を出す勇気がでないのだった。
第1幕