伝統的には屈折語に分類される[128]。古い印欧語と比較すると、母音の長短の区別、文法性、双数がなくなっている。さらに屈折の型が一定化に進んでいる、格の融合現象が見られる、動詞の叙法・時制組織が大きく単純化されているなど多様な単純化が起こっている[129]。岸田は現代アルメニア語の形態について膠着的な面が強まってとしている[120]。
アルメニア語の研究を行った言語学者のアントワーヌ・メイエによる『史的言語学における比較の方法』によってアルメニア語の基数詞が大きく変化しながらも印欧祖語に由来するものだと立証されている[130]。
系統の試み
分布と起源クルガン仮説に基づく印欧語族の拡散モデル印欧語族の拡散と文化(図にいくつかミスがあるので注意。 @TohariansとWusunは逆 AAfanasevoとSintashtaのスペル)印欧語族の拡散「印欧祖語」および「クルガン仮説」も参照
所属は遺伝的関係によって決定され、すべてのメンバーが印欧祖語を共通の祖先に持つと推定される。インド・ヨーロッパ語族の下の語群・語派・分枝への所属を考えるときも遺伝は基準となるが、この場合にはインド・ヨーロッパ語族の他の語群から分化し共通の祖先を持つと考えられる言語内での共用イノベーションが定義の要素となる。たとえば、ゲルマン語派がインド・ヨーロッパ語族の分枝といえるのは、その構造と音韻論が、語派全体に適用できるルールの下で記述しうるためである。
インド・ヨーロッパ語族に属する諸言語の起源は印欧祖語であると考えられている。印欧祖語の分化と使用地域の拡散が始まったのは6,000年前とも8,000年前とも言われている。その祖地は5,000?6,000年前の黒海・カスピ海北方(現在のウクライナ)とするクルガン仮説と、8000?9500年前のアナトリア(現在のトルコ)とするアナトリア仮説があるが、言語的資料が増えた紀元前後の時代には、既にヨーロッパからアジアまで広く分布していた。
この広大な分布に加えてその歴史をみると、前18世紀ごろから興隆した小アジアのヒッタイト帝国の残したヒッタイト語楔形文字(楔形文字の一種)で書かれたヒッタイト語(アナトリア語派)の粘土板文書、驚くほど正確な伝承を誇るヴェーダ語(インド語派)による『リグ・ヴェーダ』、そして戦後解読された紀元前1400年‐紀元前1200年ごろのものと推定される線文字Bで綴られたミケーネ・ギリシャ語(ギリシア語派)のミュケナイ文書など、紀元前1000年をはるかに遡る資料から始まって、現在の英独仏露語などの、およそ3,500年ほどの長い伝統を有する。これほど地理的・歴史的に豊かな、しかも変化に富む資料をもつ語族はない。この恵まれた条件のもとに初めて19世紀に言語の系統を決める方法論が確立され、語族という概念が成立した。
インド・ヨーロッパ諸語は理論的に再建することのできる、一つのインド・ヨーロッパ共通基語もしくは印欧祖語と呼ばれる共通の祖先から分化したと考えられている。現在では互いに別個の言語であるが、歴史的にみれば互いに親族の関係にあり、それらは一族をなすと考えることができる。
これは言語学的な仮定である。一つの言語が先史時代にいくつもの語派に分化していったのか、その実際の過程を文献的に実証することはできない。資料的に見る限り、インド・ヨーロッパ語の各語派は歴史の始まりから、すでに歴史上に見られる位置にあって、それ以前の歴史への記憶はほとんど失われている。したがって共通基語から歴史の始まりに至る過程は、言語史的に推定するしか方法はない。
またギリシア北部からブルガリアに属する古代のトラキアにも若干の資料があるが、固有名詞以外にはその言語の内容は明らかでない。またイタリア半島にも、かつてはラテン語に代表されるイタリック語派の言語以外に、アドリア海沿いで別の言語が話されていた。中でも南部のメッサピア語碑文は、地名などの固有名詞とともにイタリック語派とは認められず、かつてはここにイリュリア語派の名でよばれる一語派が想定されていた。しかし現在ではこの語派の独立性は積極的には認められない。 ニュージーランド・オークランド大学のラッセル・グレー
系統樹と年代
グレーとアトキンスンは、この語族の87言語の基本単語2,449語について、相互間に共通語源を持つものがどれほどあるかを調べ、言語間の近縁関係を数値化し、言語の系統樹を作成した。この系統樹によれば、まずヒッタイトの言語が登場、その後、7,000年前までにギリシャ語を含むグループ、アルメニア語を含むグループが分かれ、5,000年前までに英語、ドイツ語、フランス語などにつながるグループができたという。
Gray & Atkinson 2003[131]による、系統樹と、祖語の年代を以下に示す。年代の単位はBP(年前)。( ) 内はブートストラップ値(グループの確実さ)で、不確実な分岐も図示されていることに注意。とくにいくつかのブートストラップ値は50未満という低い数字となっており、系統分岐の仕方そのものが正しくない可能性を示している。また、死語のほとんど(トカラ語派とヒッタイト語以外)と一部の現存言語グループ(ダルド語派、カーフィル語派)が解析対象となっていない。また、この方法では2つ以上の言語の融合(例:プロト・スラヴ語ないしプロト・バルト=スラヴ語の、インド・イラン語派の諸言語の影響によるサテム語化)は正しく解析されない。そのため、ブートストラップ値次第では語派の祖語の年代は図の年代よりさらに古くも新しくもなりうる。.mw-parser-output table.clade{border-spacing:0;margin:0;font-size:100%;line-height:100%;border-collapse:separate;width:auto}.mw-parser-output table.clade table.clade{width:100%}.mw-parser-output table.clade td.clade-label{width:0.7em;padding:0 0.15em;vertical-align:bottom;text-align:center;border-left:1px solid;border-bottom:1px solid;white-space:nowrap}.mw-parser-output table.clade td.clade-fixed-width{overflow:hidden;text-overflow:ellipsis}.mw-parser-output table.clade td.clade-fixed-width:hover{overflow:visible}.mw-parser-output table.clade td.clade-label.first{border-left:none;border-right:none}.mw-parser-output table.clade td.clade-label.reverse{border-left:none;border-right:1px solid}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel{padding:0 0.15em;vertical-align:top;text-align:center;border-left:1px solid;white-space:nowrap}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel:hover{overflow:visible}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel.last{border-left:none;border-right:none}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel.reverse{border-left:none;border-right:1px solid}.mw-parser-output table.clade td.clade-bar{vertical-align:middle;text-align:left;padding:0 0.5em;position:relative}.mw-parser-output table.clade td.clade-bar.reverse{text-align:right;position:relative}.mw-parser-output table.clade td.clade-leaf{border:0;padding:0;text-align:left}.mw-parser-output table.clade td.clade-leafR{border:0;padding:0;text-align:right}.mw-parser-output table.clade td.clade-leaf.reverse{text-align:right}.mw-parser-output table.clade:hover span.linkA{background-color:yellow}.mw-parser-output table.clade:hover span.linkB{background-color:green}
インド・ヨーロッパ語族 8,700
(100)7,900
(96)7,300
(84)6,900
(44)6,500
(67)6,100
ケルト語派(100)2,900
(46)5,500
イタリック語派(100)1,700
ゲルマン語派(100)1,750
バルト・スラヴ語派(100)3,400
バルト語派(100)
スラヴ語派(100)1,300
(36)
インド・イラン語派(100)4,600
インド語派(100)2,900
イラン語派(100)2,500