楽器あるいは音具の名前である「ゴング (gong) 」[2]は、英語でも同じように表記されるが、その語源は当時の交易用語として共通語化していたマレー語であるとの指摘もある。後述するガムランをはじめとする伝統音楽や、王宮の伝統儀礼などにおいて欠かすことのできない楽器となっている。
ガムラン(GAMELAN)詳細は「ガムラン」を参照
ガムランとは、青銅製の大小の銅鑼、鉄琴などのアンサンブルである。インドネシア国内ではジャワ島・バリ島のものが特に有名であるが、類似のアンサンブルは東南アジア全域に分布している。
インドネシアの伝統音楽としてのガムラン音楽は、国内における観光資源としての価値も高く、また著名なガムラン楽団が海外で公演を行なうなど、海外での知名度も非常に高い。
インドネシアのガムラン音楽、およびゴング演奏は、以下に列挙するように、まず地域ごとに大きく分けられ、それぞれの地域でさらに複数の様式がある。
西ジャワのガムラン -- ジャワ島西部をスンダ地方と呼ぶことから、スンダ・ガムランと称されている。以下の2つの様式がある。
ガムラン・ドゥグン
ガムラン・スレンドロ
中部ジャワのガムラン -- 一般的にはジャワ・ガムランの代名詞となっている。中部ジャワにはかつて2つの王都、スラカルタ(旧名ソロ)とジョグジャカルタがあり、さらに、あわせて4つの王家があった。この4王家がそれぞれ競いあいながら独自の文化を発達させた。
スラカルタ(ソロ)様式 -- パク・ブウォノ家とマンクヌガラン家
ジョグジャカルタ様式 -- ハマンク・ブウォノ家とパク・アラマン家
東部ジャワのガムラン -- 中部ジャワのガムランに含まれることもある。
バリ島のガムラン -- 「ジャワ・ガムラン」と並び、世界的にもよく知られている。多くの観光客を集めるバリ島では、以下のような演奏がおこなわれている。
グンデル・ワヤン
ゴン・グデ
ガムラン・ガンブー -- 単に「ガンブー」ともいわれる。
スマル・プグリンガン
ゴン・クビャール -- バリ島の観光施設で演奏されているのは、ほとんどこのタイプである。
大衆音楽
クロンチョン(KRONCONG)詳細は「クロンチョン」を参照
クロンチョンは、16世紀頃のポルトガル人の来航時にまでその起源がさかのぼると考えられている大衆音楽である。代表曲である「ブンガワン・ソロ (Bengawan Solo)」は日本でも有名である[3]。
ダンドゥット(DANGDUT)詳細は「ダンドゥット」を参照
歌手のロマ・イラマがスタイルを確立し、1970年代初頭から、おもに都市部の若者を中心にして人気を博すようになった大衆音楽である。マレーシアのムラユー音楽や、インド、アラブの音楽、ビートルズを始めとするロックンロールなどの影響を吸収し、演奏にはクンダン、竹笛、スリン、タブラなどの伝統楽器とともにエレキ楽器が導入され、強烈なビートを生んでいる。ダンス音楽として若者たちに愛好され、初期においては反体制的な音楽と見られていたが、徐々に市民権を得てポップミュージックの代表的なスタイルとみなされるようになった。ダンドゥットがハウスミュージックと融合した、テンポが非常に速いダンスミュージックはファンコットと呼ばれる。 クロンチョン、ダンドゥットがおもにインドネシア語で歌われるのに対して、各地方の言語で歌われる歌謡曲がある。ジャワ語で歌われる「ポップ・ジャワ」、スンダ語で歌われる「ポップ・スンダ」、ミナン語 留学歴のあるパウル・グタマ・スギジョ
地方語ポップス
西洋芸術音楽
脚注^ 田村史「ゴング」、石井米雄監修、土屋健治・加藤剛・深見純夫編 『インドネシアの事典』、同朋舎出版、1991年、179頁。
^ 語尾はいわゆる「ング」発音で、「ゴング」も「ゴン」と発音されているように聞える。
^ 日本でもよく知られる「ブンガワン・ソロ」は、「作曲者不詳のジャワ民謡」といわれてきたが、戦後、グサン・マルトハルトノ作曲であることが確認された。
関連項目
ガムラン
ワヤン・クリ
クロンチョン
Campursari
インドネシアの歴史
イスマイル・マルズキ
関連文献
宮崎恒二・山下晋司・伊藤眞(編)『暮らしがわかるアジア読本 インドネシア』、河出書房新社、1993年