元々のインチは、男性の親指(爪の付け根部分)の幅に由来する身体尺だったと考えられている。古代ローマにおいて、フィートと関連づけられてその12等分した長さが1インチとされた。
インチ (inch) という言葉の語源は、ラテン語で「12分の1」を意味する uncia であり、質量の単位であるオンスと同一語源である。長さのインチのもとは uncia pes (pes は足、英語のフート)であり、質量のオンスのもとは uncia libra (libraが英語のポンドにあたる)である[11]。古英語の ynce(ユンチェ)を経て、inch となった。
また、親指の幅であることから「親指幅」とも呼ばれた。現在でも、多くの言語でこの単位は「親指」という言葉に似た、または同じ名称で呼ばれている。
言語インチ親指
フランス語poucepouce
イタリア語pollicepollice
スペイン語pulgadapulgar
ポルトガル語polegadapolegar
スウェーデン語tumtumme
オランダ語duimduim
1150年ごろにスコットランド王デイヴィッド1世は、体格の異なる3人の人間の親指の爪の付け根の部分の幅を測り、その平均を1インチとしたと伝えられる[12]。1300年ごろにイングランド王エドワード1世は鉄製のアルナ(ulna、ラテン語で尺骨を意味し、ヤードに相当)原器を作り、その1⁄36をインチとしたが、それと同時にオオムギ3粒の長さをインチと定めている[13][14]。14世紀のエドワード2世は、オオムギの粒の長さをバーリーコーン (barleycorn) と呼び、その3倍を1インチと定義した[12][13]。
1588年にエリザベス1世が新しいヤードの標準 (Exchequer Standards
) を定め[14]、この基準が19世紀に帝国単位が制定されるまで続いた。19世紀、スウェーデンではメートル法への移行が行われた。まず、1855年から1863年までの間で、インチが、フィートの1⁄10である十進インチ(約0.03 m)に置き換えられた。十進法を導入することで計算が単純化されるとして導入されたが、他国で使用されていた1⁄12フィートのインチと1⁄10フィートのインチの2種類があることで余計に複雑になってしまったことから、1878年から1889年にかけてメートル法の単位が導入されることになった。 イギリスとイギリス連邦諸国は、「帝国ヤード標準原器」の12分の1の長さ、約 25.3998 mm(いわゆる「イギリスインチ」)としていた。
イギリスインチとアメリカインチ
いくつかの国では、1959年以前に行われた測量の結果の互換性のために、1959年以降も、以前に測量のために使われていた各国ばらばらのフィートの定義を保持している。これを測量フィート (survey foot
) という。たとえば、2022年12月末まではアメリカ合衆国測量フィート (U.S. survey foot) としてアメリカフィートが使われていた。ただし、このような制度はフィートのみに適用されるのであり、アメリカインチが合衆国内の測量に使われることはない。日本においては、インチというヤード・ポンド法の計量単位を使用することは、特別の場合(ヤード・ポンド法#日本における使用)以外は計量法上、禁止されている。したがって、以下の製品のサイズ表記は、- 型と表記されるか、表記寸法が単に 25.4 mm の倍数となっているが、「インチ表記」ということではない[15]。
インチ規格部品と、ISO規格部品が混在し、製造上問題になるのは、パーソナルコンピュータなどの電子機器である。メートル法を使う国々でも、このような、アメリカやイギリスを起源とする商品は、互換性の維持のため、製造設備の設計上の理由、または商慣行上、現在もインチ単位を基準に設計・製造されることがある。
半導体、コンピュータ関連 - インチを基準とするアメリカが主導的な役割となっているため多く使われている。
IC、LSI、関連電子部品(特に端子間隔)
筐体のサイズ - 19インチラックなど
構成部品のサイズ - パソコンではアメリカのユニファイねじが多く用いられる。現在は、直径4 mm 以上では、ISOねじと互換性がある。
媒体のサイズ - フロッピーディスクやハードディスクドライブの直径
音楽・放送
楽器 - ドラムの直径など
音響・放送機器 - 19インチラックに合わせたサイズが多い。
テレビ受像機・ディスプレイモニタ - ブラウン管の対角寸法、FPDでは表示部の対角寸法
磁気テープ - 媒体幅。なお、長さの単位としてはフィートを使う。
フォーンプラグ - 標準は1/4インチ(6.3 mm)である。
土木・建築
ねじ - インチ系列であるウィットワースねじ(British Standard Whitworth
この節は、全部または一部が他の記事や節と重複しています。 具体的にはねじ#標準規格との重複です。記事のノートページで議論し、
重複箇所を重複先記事へのリンクと要約文にする(ウィキペディアの要約スタイル参照)か
重複記事同士を統合する(ページの分割と統合参照)か
重複部分を削除して残りを新たな記事としてください。
(2022年9月)
インチねじは、ねじ山のピッチがISOミリねじ規格より粗く、直径とピッチがインチ単位で作られている。インチねじにはいくつかの規格があるが、主に使われるのはユニファイねじとBSWである。日本国内で生産される商品としては、3.5インチハードディスクドライブの固定用ねじや、カメラの固定ねじ等に用いられている。これら精密機械に使われる小径ねじはユニファイであることが多い。BSWは建築関係で用いられる太い径のものが多い。
分量単位1⁄32インチ目盛りのメジャー
インチより細かい長さは2の冪 (2, 4, 8, 16, 32, 64。128は細か過ぎて実用的でないので使われない)を分母とする分数で表すことが比較的多い。
サウ詳細は「サウ」を参照
工学分野では、サウ (thou) またはミル (mil) という単位が国際インチの1000分の1 (25.4 μm) の意味で用いられることがある。今日では、サウやミルは用いず、SI単位を使用すべきとされている[誰?]。
ライン「ライン (単位)」および「リーニュ (単位)」も参照
1⁄12 インチ = 2.117 mm をラインと呼び、単位記号「‴」(トリプルプライム)で表す。
パイカ「パイカ」も参照
印刷などではパイカ(現在のDTPでは1⁄6インチ、約 4.233 mm)およびポイント(パイカの1⁄12、約 0.353 mm)を使用する。 1⁄8 in (= 3.175 mm) は尺貫法における1分(= 0.1寸 = 約3.03 mm)に近いため、日本では「1⁄8 in ≒ 1分」とみなして、インチ規格を分や、さらにその1⁄10の厘(= 0.01寸 = 0.1分)で表すことがある[16]。大工や機械工などの間で使われる。これらは「1フィート≒1尺」とみなすことに相当する。 主に使われるのは表の呼び名になる。 分インチmm 記号UnicodeJIS X 0213文字参照名称
分・厘
6分3⁄4 in19.0500 mm
5分5⁄8 in15.8750 mm
4分1⁄2 in12.7000 mm
3分3⁄8 in09.5250 mm
2分1⁄4 in06.3500 mm
1分1⁄8 in03.1750 mm
5厘1⁄16 in01.5875 mm
組立単位
平方インチ
立方インチ
符号位置
㏌U+33CC-㏌
㏌SQUARE IN
出典[脚注の使い方]^ ISO 31-1:1992(翻訳は、 ⇒JIS Z 8202-1:2000 量及び単位?第1部:空間及び時間) 付属書A(参考)フート、ポンド及び秒を基本とする単位及びその他の単位 (なお、「これらの単位は、用いない方がよい。」との記述があることに注意)
^ 計量単位規則 別表第6
^ Style Manual, An official guide to the form and style of Federal Government publishing, 2016
^ ⇒8.5 Weights and Measures The en:MHRA Style Guide