インタラクティブ・ライブ(Interactive Live)とは、日本のマルチメディア・コンサートである。 日本のミュージシャン・平沢進が主宰を務め、1994年より支援者の協力を得て「ストーリー仕立ての観客参加型ライブ」として開催されている[1]。 2002年に行われた「デジタルコンテンツグランプリ2001」にて、『インタラクティブ・ライブ・ショウ2000「賢者のプロペラ」』が最高賞である経済産業大臣賞、並びにエンターテイメント部門最優秀賞を受賞した[2][3]。 映像作品として、1995年以降の毎公演はDVDが販売されている[4]。2021年11月には、1996年に開催された「SIREN - 架空のソプラノ」のライブ音源が各種音楽サービスで配信された[5]。 ライブのサポートメンバーとしてゲストミュージシャンを呼ぶ事もあり、過去には戸川純やP-MODELの元メンバーも参加している。 1980年代の終わり頃からデジタル技術が著しく発達し、ミュージシャンが「個人」でできる範囲も広がり始め、インターネットの普及を予見した平沢は、新たなパフォーマンスの形態としての利用を考えていた[6]。 平沢は当時の心境として、「音楽制作から流通に至るまでのプロセスにおける最後の部分、つまり「情報発信」とダウンロードを含めた「流通」の部分が、インターネットによって完全に網羅されると思ったんです。」「デジタル系のアーティストが『ライブをやることの必然性』を探りたかった」と回顧している[6]。また、「コンピューターで演奏する姿は全然肉体的じゃないわけで、つまりコンピューターでそのようなショーにする為には、コンピューターそのもののメディア的な性格を最大限に引き出す事が、ライブに望む意味ではないかと考えたんです。」と答えている[7]。 そして「せっかく手中に収めたインターネットというメディアを、自分の音楽のなかにどう取り込んでいくか」という実験の意味もあったと語っている[6]。 オーディエンス(観客)はロールプレイングゲーム(RPG)のように、そのステージ上に設置された巨大スクリーンに投影される文字情報や映像によって表現されるストーリーの分岐を、声などのレスポンスにより選択していく[1]。 また、通常のミュージシャンが行うライブでは、ミュージシャンが事前に設定した曲目を順に披露していくが、「インタラクティブ・ライブ」では、オーディエンスのリアクションによって、演奏される楽曲も変わっていく[8]。物語にはいくつかの分岐点(ホット・ポイント)に加え、「グッドエンド」や「バッドエンド」等、数種類の結末が用意されており、観客は「グッドエンド」へ向けての選択をしていく[8]。 1998年からは演者と観客の双方向性を重視したパフォーマンスとなっており、インターネットを通じて現地の様子を生配信し、併せて特設サイトに提示された課題を解くことで、会場に足を運ばなかったリスナーも「在宅オーディエンス」としてライブの進行に影響を及ぼせるという仕組みも導入された[8]。 これらのストーリーの準備には約1年程準備が必要となり、分岐で演奏楽曲が変化されるため、ライブ二つ分の準備作業が必要となっている[7]。 2000年初頭まではAMIGAコンピュータを使って行われていたが、当時はコンピューターのスペックの問題が多く、些細なミスで上手く動かなくなることがあった[9]。1998年のインタラクティブ・ライブではエラーが発生し、40分程度ライブが中断してしまったことがあった[9]。これらのリスクについては、「オーディエンスのその場の反応や判断、リアルタイムのインターネットからのアクセスでストーリーが分岐・展開するからこそインタラクティヴなわけで、演出だけを取り繕って決められたストーリーが展開するのでは、意味が全くない。そのために背負うリスクは確かに大きいのだけれど、どのようなストーリーに展開していくか、本番では我々もスタッフももの凄い緊張感と達成感が得られるんです。」としていた[9]。 AMIGAで制作していた時代のライブの運用方法については、1994年10月に発売されたVHS「making of tokyo paranesian」にて平沢自身が詳しく解説している[10]。 公演を収録した映像作品については「平沢進の作品#ライブ映像作品」を参照。 年回タイトル会場サポートメンバー 3月10日 大阪郵便貯金会館 3月11日 CLUB DIAMOND HALL 3月21日 渋谷公会堂戸川純:Cho、"マザー・オブ・ナバホ"役 6月13日 日清パワーステーション 6月14日 日清パワーステーション 12月2日 難波W'OHOLTAKA:Key、"電気ッTAKA"役 上領亘:アルゴリズム高橋BOB:Ba、"IOラスタ"役 12月13日 LIQUIDROOM上領亘:アルゴリズム 9月1日 スカラエスパシオ 9月4日 大阪郵便貯金会館 9月6日 渋谷公会堂Miss-N:Cho 9月2日 大阪郵便貯金会館 9月4日 東京郵便貯金会館 9月5日 東京郵便貯金会館Miss-N:Cho Miss-Aeh:Cho 10月21日 中野サンプラザ 10月27日 松下IMPホール福間創:System 11月11日 BIG CAT 11月12日 BIG CAT 12月6日 東京郵便貯金会館 12月18日 東京郵便貯金会館MIRAI:System、"スペース・ナッカドー"役 小西健司:System、"アイアン・ナッカドー"役 4月28日 なんばHatch 4月29日 なんばHatch 5月4日 東京郵便貯金会館 5月5日 東京郵便貯金会館(ソロ) 5月1日 なんばHatch 5月3日 日本青年館 5月4日 日本青年館 4月16日 江戸川区総合文化センター 4月17日 江戸川区総合文化センター 4月18日 江戸川区総合文化センターA-sai:パフォーマンス、"Naangfaa 1"役 Fiat:パフォーマンス、"Naangfaa 2"役Rang:パフォーマンス、"Astro-Hue!"役 1月24日 渋谷公会堂 1月25日 渋谷公会堂 1月26日 渋谷公会堂折茂昌美:Vo、ナレーション、"サンミア"役 野田隼平:"Amputeeガーベラ"役PEVO1号:折茂のエスコート 11月27日 TOKYO DOME CITY HALL 11月28日 TOKYO DOME CITY HALL 11月29日 TOKYO DOME CITY HALLPEVO1号:Gt、Laser Harp、村正 折茂昌美:"火事場のサリー"役(声のみ)Rang:"Astro-Hue!"役(映像のみ) 3月26日 東京ガーデンシアター[1st] 3月26日 東京ガーデンシアター[2nd]オリモマサミ:"シトリン"役 ナカムラルビイ:"ルビイ"役 会人SSHO 、会人TAZZ、在宅オーディエンス:"天候技師"役 会場オーディエンス:"改訂評議会員"役
概要
開催にいたるきっかけ
パフォーマンス形式
公演
1994年1AURORA TOUR 1994 INTERACTIVE LIVE オーロラ伝説全3公演
2TOKYOパラネシアン全3公演
3I3 DAYS '94「Adios Jay」全1公演
1995年4INTERACTIVE LIVE SHOW SIM CITY TOUR全3公演
1996年5INTERACTIVE LIVE SHOW Vol.5 SIREN全3公演
1998年6INTERACTIVE LIVE SHOW "WORLD CELL"全2公演
2000年7INTERACTIVE LIVE SHOW 2000 賢者のプロペラ全4公演
2003年8Interactive Live Show 2003 LIMBO-54全4公演
2006年9INTERACTIVE LIVE SHOW 2006 「LIVE 白虎野」全3公演
2009年10INTERACTIVE LIVE SHOW 2009 「点呼する惑星」全3公演
2013年11INTERACTIVE LIVE SHOW 2013 「ノモノスとイミューム」全3公演
2015年12INTERACTIVE LIVE SHOW 2015 「WORLD CELL 2015」全3公演
2022年13INTERACTIVE LIVE SHOW 2022 「ZCON」全3公演3月25日 東京ガーデンシアター
参考文献
奇才・平沢が提唱する“真”のインタラクティヴ(2000年11月29日)
インターネットのパイオニア、核P-MODEL・平沢進インタビュー (2018年12月17日)
平沢進が提示した「思考のためのライブ」。『INTERACTIVE LIVE SHOW 2022「ZCON」』濃密ライブレポート(2022年3月30日)