第3幕でのマンリーコのカバレッタ「見よ、恐ろしい炎を」で、テノールは楽譜に書かれていない高音ハイCを挿入することが慣例になっている。通説ではこれはロンドン初演時のテノール、エンリコ・タンベルリックがヴェルディの許可を得て創始したとされており、以来テノールのアリアとして最大の難曲の一つに数えられている。
しかし、このハイCを失敗することはテノールにとっての恥辱とも考えられ、しばしば歌手は失敗をおそれて半音下げて歌っている(オーケストラのピッチを半音下げて演奏させる)。指揮者のリッカルド・ムーティはスカラ座での上演に際して「常に作曲者の書いたままを演奏すべし」との原典主義に基づき、ヴェルディの楽譜通りに演奏させて賛否両論を巻き起こした。 オペラを題材に、2005年に宝塚歌劇団宙組にて『炎にくちづけを?イル・トロヴァトーレ?』(脚本・演出:木村信司)が上演された。
派生
映画に登場した「イル・トロヴァトーレ」
『オペラは踊る』(A Night at the Opera, 1935年) - 後半部では舞台上で展開する『イル・トロヴァトーレ』と、公演を台無し寸前にまでしてしまうマルクス兄弟のドタバタで綴られる。
Moonlight Murder(1936年) - 『イル・トロヴァトーレ』に出演中のテノールが舞台上で殺された事件を巡るミステリー映画。
『夏の嵐』(Senso, 1954年) - ルキノ・ヴィスコンティ監督作品。1866年、オーストリア帝国支配下のヴェネツィアのフェニーチェ劇場で「見よ、恐ろしい炎を」が歌われた際、観客がその歌にイタリア独立・統一へのメッセージを読み取り暴動が発生する、というシーンが描かれている。
『耳に残るは君の歌声』(The Man Who Cried, 2000年) - サリー・ポッター監督作品。第二次世界大戦直前のロンドン、パリでのユダヤ人女性の人生を描くこの作品で、熱烈なファシストであるイタリア人テノールが「見よ、恐ろしい炎を」を歌うさまが効果的に用いられている。なおテノールの声は有名になる直前のサルヴァトーレ・リチートラである。
宝塚歌劇団での上演
参考文献
Julian Budden, "The Operas of Verdi (Volume 2)", Cassell, (ISBN 0-304-31059-X)
永竹由幸『ヴェルディのオペラ―全作品の魅力を探る』 音楽之友社 (ISBN 4-2762-1046-1)
外部リンク
イル・トロヴァトーレの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
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