このように、イルカとクジラの定義や分類は個人や地域によって差異が見られており、安易な区別は誤解や混乱を招く恐れがある。実際にはハクジラとヒゲクジラとの差の方が生態的にも形態的にも違いが顕著であり、また遺伝的に見ても進化系統が独立している。そのため、学術論文や専門的な書籍などでは通常こちらの区別が用いられる。
英語での Dolphin と Whale の呼称の区別は、日本語の「イルカ」と「クジラ」の区別とほぼ共通する。例えば小型ハクジラ類のうちゴンドウクジラについては英語では Whale と呼びクジラとして扱う点で日本語と共通する。ただし、日本語で「イルカ」と呼ばれる種のうちネズミイルカ科のものは、英語では Porpoise と呼んでいて、 Dolphin とは区別している。
「クジラ」と「イルカ」が区別されるようになった原因としては、日本人が古来からクジラとイルカを呼び分け、全く異なる生き物と認識していたことに起因するとする説がある[9]。すなわち、昔の日本人は視覚的な印象から、海にすむ大きく雄大な生き物をクジラ、小さくて俊敏な生き物をイルカと呼び分けていた。その分類感覚が時代を経て広まった結果、標準和名の末尾にも「イルカ」「クジラ」という名前が付与され、現代においてもなおこれらのグループを区別して認識されているとしている。
この仮説が正しい場合、当時の日本人は体長を計測してこれらを呼び分けていたわけではないので、「成体の体長が4 m以下のものがイルカ」「クジラとイルカの違いは大きさのみ」といった解釈は正確ではない。またこの仮説においてシャチやスナメリなど和名に「イルカ」も「クジラ」も含まれていない生物種については、どちらにも属さない独自の動物として認識されていたと考えられている。 以下に確認・分類されているイルカの名称をあげる。この中には身体全体が発見されていない種もいることから、将来的に新しい種が発見されたり、分類学上の基準が変わり、1つの種が複数の種に分かれたり、逆に複数の種が1つに統合されたりする可能性もある。 「イルカ」に厳密な定義はないが、ここでは和名に「イルカ」がある科(マクジラ科については亜科)に含まれる種を挙げる。これらは、通常「イルカ」と呼ばれる種に一致している。 これらの種は、スナメリを除き、和名に「イルカ」を含む。ただしこれらの他に、イッカク科のシロイルカ(ベルーガ)が和名にイルカがある他にマイルカ科のハナゴンドウにはマツバイルカという別名もあるが、これらの種はクジラに含められることが多い。
種
マイルカ上科
マイルカ科 ? 海棲。イルカ以外に、通常「クジラ」とされるゴンドウクジラ類とシャチを含む。
マイルカ亜科
マイルカ属 - マイルカ、ハセイルカ
ウスイロイルカ属 - アフリカウスイロイルカ、シナウスイロイルカ、ウスイロイルカ
ハンドウイルカ属 - ハンドウイルカ(バンドウイルカ) 、ミナミハンドウイルカ
スジイルカ属 - マダライルカ、タイセイヨウマダライルカ(カスリイルカ)、ハシナガイルカ、クライメンイルカ、スジイルカ
サラワクイルカ属 - サラワクイルカ
シワハイルカ亜科
シワハイルカ属 - シワハイルカ
コビトイルカ属 - コビトイルカ
セミイルカ亜科
セミイルカ属 - セミイルカ、シロハラセミイルカ
イロワケイルカ属 - イロワケイルカ(パンダイルカ)、ハラジロイルカ、コシャチイルカ、セッパリイルカ
カマイルカ属 - ハナジロカマイルカ、タイセイヨウカマイルカ、カマイルカ、ハラジロカマイルカ、ミナミカマイルカ、ダンダラカマイルカ
ネズミイルカ科 ? 海棲。マイルカ科に比べると小型の種類が多い。
ネズミイルカ属 - ネズミイルカ、コガシラネズミイルカ、メガネイルカ、コハリイルカ