イルカ
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クジラが北欧や日本などの海産国で貴重な資源としてあまねく利用されるのとは異なり、現在ではイルカを中心にした産業が成立しているケースは世界的に見ても少なく、フェロー諸島[11]南太平洋の島国や日本の一部の地域、カナダイヌイット地域などで肉が食用に供されているに過ぎない。もっとも、捕鯨技術発達の初期段階では、イルカが捕獲対象となることは多かった。また、ビスケー湾周辺では中世まで盛んに捕獲が行われ、鯨油の原料や食肉として利用された。イングランド宮廷では17世紀頃までイルカが食卓に供されていた。(詳細は鯨肉#日本での食文化の歴史参照)
食用イルカ市場

日本の場合、戦前や戦後の食糧難の時代、クジラと同じくイルカも、貴重な蛋白源であった。今でも、比較的イルカがよく観察されるところでは食用にする習慣が残っているところもあり、各都道府県知事許可漁業の「いるか突きん棒漁業」「いるか追い込み漁業」として認可を受けて操業しているところもある(突きん棒漁業とは銛を打ち込んで漁獲する漁法である)。(食用の詳細は鯨肉#昭和以前の需要供給、流通参照)。

例えば静岡県の東部地域や、駿河湾で水揚げされた魚貝類が流通する内陸部の山梨県では明治初期からイルカ食が行われ、山梨県富士川町鰍沢河岸からはマグロなどの大型魚類とともにイルカの骨が出土している。あるいは和歌山県でもイルカ食文化があり、この漁法で仕留めたイルカの肉を町中の魚屋やスーパーマーケットなどで日常的に販売している。最大の産地は岩手県である。沖縄の名護の名物はヒートゥー(イルカ)料理である。イルカの漁獲量は一般の漁業と異なり、重量ではなく頭数管理とされている。なお、定置網で混獲されたイルカが食用とされる場合もある[12]。2009年にイルカ追い込み漁を批判する映画「ザ・コーヴ」が製作され、日本での公開の際に話題を呼んだ。(捕獲の詳細は捕鯨参照)いるかすまし

血抜きをされていないイルカ肉は鉄分が酸化し黒っぽい色をしている。また、魚を主食とするイルカの肉独特の臭みは脂身の脂にある。よって、イルカ肉を美味しく調理するには、肉の血抜きと脂身の脂抜きの下処理がポイントとなる。脂の臭みが肉に移らないように、脂身を取り除くか、肉と脂身を別にして、調理するのが理に適っている。調理法としては一般的には肉を削ぎ切りにし、塩漬け・塩抜きし、もしくは、醤油とみりんと砂糖で作ったタレに漬けてゴマをふり、天日干しにし(こうしたイルカの干物は「イルカのタレ」と呼ばれる)、焼いて食べる。また燻製にもする。イルカの「背びれ・尾びれ」(表皮と皮下脂肪)は、薄く切って、1?2日ほど水に晒して、30?40分ほど茹でて、塩をした、「イルカ(の)すまし」(鯨ベーコンに近い)となり、酒のつまみとして、ポン酢・わさび醤油・酢味噌などで食べる。山形の郷土料理の「イルカ汁」は、「塩クジラ」(鯨の皮と皮下脂肪の塩漬け)と野菜の味噌汁であるが、その名称は、かつてはイルカ肉の塩漬けを使用していた名残である。イルカ肉はその臭みから、塩クジラに取って代わられたとされる。イルカの刺身

生肉は冬が旬の食材で、販売時には肉と脂皮の角切りが一緒にパックされていることも多い。煮物にする場合は、水に晒して血抜きをし(流水で1時間ほど。水が血でにごらなくなり表面が白っぽくなったくらいが目安)、4?5時間ほど下茹でして(茹で汁は何回か交換するとよい)アク抜きをして、臭みを除いてから、ショウガ・ゴボウ・ニンジン・大根・こんにゃくなどとともに味噌煮にすることが多い。静岡県東部地方ではこれが冬の郷土料理である。また新鮮な生肉(生食用・刺身用)もしくは解凍した冷凍肉(生食用・刺身用)を、水に晒して血抜きをし(刺身の場合は必ずしも血抜きをしなくてもよい)、硬い表皮を除き、肉と脂肪層を数mmの薄切りにして刺身にし、好みで大葉や刻みネギやオニオンスライスなどの薬味を添え、おろしショウガ醤油・おろしニンニク醤油(他にワサビ醤油・塩ゴマ油・ニンニク味噌などもよし)などで食べる。イルカ肉は、加熱すると固くなり臭みが出るが、生だと柔らかく臭みがほとんどない。ゆえに、イルカ料理の中ではイルカの刺身が一番美味い、脂ののった馬刺しに近い、との意見も多い。また、生肉もしくは解凍した冷凍肉を、水に晒して血抜きをし、硬い表皮と脂肪層を除いた肉の部分のみを、大和煮唐揚げ竜田揚げステーキにする。イルカのすき焼きにする地方もある。また動物性油脂を天ぷら油として使用する一部の地域では、豚の脂身(ラード)の代わりにイルカの脂肪を使用することもあるようである。

近年になって大型のクジラの捕獲量に制限が加えられ、流通に支障が出てくるようになると、単に「鯨肉」と称してイルカの肉(イルカも鯨類ではある)が市場に出回るケースもあるようである。大型鯨類のほとんどはヒゲクジラの仲間であり、それと誤認させるような表記は問題だが、マイルカ科の歯クジラでもゴンドウクジラなどの肉は元々鯨として流通していた。もっとも、現在のJAS法上はそのような表示は不適法とされており、それぞれ「ミンククジラ」「イシイルカ」などの鯨種別表示が必要である。

なお、日本の厚生労働省は2005年、イルカを含むハクジラ類の肉にはマグロキンメダイなどの一部の魚介類と並んでメチル水銀などの人体に有害な有機水銀類が含まれるとして、妊娠時の女性に対して摂取を控えるように警告した。具体的には種類により異なるが、全体に魚類に比べて厳格な基準が設けられ、最も厳格な基準のバンドウイルカについては1回約80gとして妊婦は2ヶ月に1回以下とするように推奨している。ただし、妊婦以外の一般人の摂取に関しては、幼児の場合なども含めて特に制限が必要とはされていない。[13][14]

イルカやクジラなど海生哺乳類(種により異なる)は、アニサキスの主な最終宿主で、成虫はその腸管に棲息する。
その他の利用水族館でのイルカ
観光での利用

アニマルセラピー(動物療法)として、イルカと触れ合うことで心が休まることなど、精神的な疾病の治療にも利用されることもある。水族館での生活に適応できた個体は長生きし繁殖まで行うことが出来、一部の施設では飼育下五世の繁殖も成功もしている。(新江ノ島水族館

船でイルカと併走しながら泳ぐ様を観賞するドルフィンウォッチング(ホエールウォッチング)が開催されている。

バンドウイルカなど一部のイルカは水族館において展示飼育されることも多い。訓練されたアクション(海面上へのジャンプや立ち泳ぎ等)によるイルカショーなどに使用される。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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