イルカ
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イルカの解剖図

カマイルカの骨格

体形は紡錘状で、背に鎌形あるいは三角形の背びれを有する種類が多いが、背びれがほとんどない種類もいる。尾側の最後部に尾びれを有し、尾びれを上下に動かして泳ぐ。前足に相当する部分に胸びれがあり、後ろ足は退化してわずかに骨のカケラとして体内に残る。2006年に腹びれのあるイルカが発見されたこともある[3]

メスとオスに分かれ、生殖行為を通して一定期間妊娠の後に出産する。生殖器は通常外見からはメスとオスの区別は困難であるが、交接時にはペニスが露出するため容易に鑑別できる。誕生からしばらくの間は母親の母乳によって育てられる。

多くは肉食であり、魚類頭足類などを捕食する。また、水分はあくまでも食料の魚類などから摂取する。水分として直接摂取するほか、脂肪を体内燃焼したときに生じる代謝水もある。海水からは摂取する割合はごく少量であり、意図的に摂取しているのではないと考えられている。海水を大量に摂取した場合、排尿が促進されて脱水症状に陥る点は人間と同じである。イルカの歯はおよそ80本あるが食べるときは丸飲みである。

肺呼吸であるので、他の哺乳類と同様に、咳をしたり、肺炎になったり、かぜをひく[4]。水族館などでは、日頃の行動観察や体温測定(肛門で測定する)、採血(通常尾ひれから採血を実施する)などで体調管理をする[4]。ただし、ショーへの参加を嫌がり仮病をつかうイルカもいるとされ、判断が難しい場合もある[4]

イルカは単独で行動するケースも見受けられるが、複数匹で群をなして行動することが多い。また複数の実験・観察結果を通して、噴気孔付近から出すクリック音を使って同種の個体同士でコミュニケーションする可能性が指摘されている。全般的に好奇心旺盛で人なつっこく、船に添って泳ぐなどしてその姿を人間に見せることが多い。人間は、このような性格を興行やアニマルセラピーとして利用している。
知性

イルカは体重に占める脳の割合(脳化指数)がヒトに次いで大きいことから、イルカの知性の潜在的可能性が古くから指摘されており、世界的にも数多くの研究者の研究対象になり、世間一般からも興味の対象とされてきた。ただし、イルカの脳はサイズは大きいものの、グリア細胞の割合が多く、ニューロン自体の密度はそれほど高くない。ただしニューロンの密度をもって知性が劣ると言い切れるのかは定かではない。従って、科学的根拠から脳のサイズのみから知性のレベルを判断するのは早計である。

イルカの脳はその生息環境及び形態に応じた適応を果たしており、仮にイルカがヒトに匹敵する密度のニューロンを持てば酸素要求量が増し、長時間の潜水は困難となる。また肺を肥大化させると運動能力が犠牲となるため、現在の脳に最適化されたと考えられている。

イルカが人間と同様の知性を持つ、あるいは人間以上の知性をもった存在として描かれる作品は多数存在するものの、いずれも科学的根拠に乏しいフィクションである。イルカのパルス音

また、イルカは高い周波数をもったパルス音を発して、物体に反射した音からその物体の特徴を知る能力を持つ。更にその特徴を他の個体にパルス音で伝えたりと、コミュニケーション能力は高く、人間のようないじめも行うこともわかっており、魚などを集団で噛み付き弱らせ弄んだ挙句食べずに捨てる、小さな同種のイルカや弱ったものを集団で噛み付くなどして、殺すなど集団的な暴行行為も行う。

イルカと言語の詳細は「ハンドウイルカ#感覚とコミュニケーション」項を参照のこと。

なお、脳科学者の池谷裕二は、イルカの脳は高性能だが、人のような四肢がないことで、脳が人間のように十分に活かされていないと主張している[5]

また、小アンティル諸島で、SOS信号の発受信による互助が観察された。群れから遠く離れた個体がサメに襲われた時、SOS信号を出し、その信号を受け取った群れのイルカが助けに駆けつけた。助けられたイルカは自力で浮上することが出来なかったが、仲間に介護され2週間後に回復したという[6]
クジラとの違い

分類学上は、「イルカ」に相当する系統群は存在しない。一般的にはハクジラ類に属する生物種のうち比較的小型の種類を総称して「イルカ」と呼ぶことが多いが、その境界や定義についてははっきりしておらず、個人や地域によっても異なる傾向がみられる。

同様にして、「クジラ」の定義もはっきりはしていない。これらは人為分類の1つであり、ヒトの伝統や文化によって成立しているため、生物学的な根拠は認められていない[1]

世界的にも日常語レベルではイルカとクジラは別のカテゴリーとして認識され、別の名で呼ばれることが多い。一方で、「イルカ」というグループは「クジラ」に含まれるサブグループとして扱われることもある[7]

日本語では、成体の体長でおよそ4mをクジラとイルカの境界と考えることが多い[1]。これは定義ではなく、実際に○○クジラ、○○イルカと呼ばれている種の体長から帰納した傾向に過ぎず、4 m基準に当てはまらない種もある。例えば、コマッコウゴンドウクジラのような4 mに達しないがクジラと見なされる種も多い。文献によっては、3 mという基準で分類しているものもある[8]

ゴンドウクジラは生物学的にはマイルカ科に属するため、まれにイルカとされることがある(ゴンドウクジラ#特徴も参照)。

イッカク科シロイルカは、和名に「イルカ」とついているが、成体は5 mに達するためクジラと見なされることもある。

ヒトが「可愛い」と感じる種を「イルカ」と呼ぶとする説もある[1]

このように、イルカとクジラの定義や分類は個人や地域によって差異が見られており、安易な区別は誤解や混乱を招く恐れがある。実際にはハクジラヒゲクジラとの差の方が生態的にも形態的にも違いが顕著であり、また遺伝的に見ても進化系統が独立している。そのため、学術論文や専門的な書籍などでは通常こちらの区別が用いられる。

英語での Dolphin と Whale の呼称の区別は、日本語の「イルカ」と「クジラ」の区別とほぼ共通する。例えば小型ハクジラ類のうちゴンドウクジラについては英語では Whale と呼びクジラとして扱う点で日本語と共通する。ただし、日本語で「イルカ」と呼ばれる種のうちネズミイルカ科のものは、英語では Porpoise と呼んでいて、 Dolphin とは区別している。

「クジラ」と「イルカ」が区別されるようになった原因としては、日本人が古来からクジラとイルカを呼び分け、全く異なる生き物と認識していたことに起因するとする説がある[9]。すなわち、昔の日本人は視覚的な印象から、海にすむ大きく雄大な生き物をクジラ、小さくて俊敏な生き物をイルカと呼び分けていた。その分類感覚が時代を経て広まった結果、標準和名の末尾にも「イルカ」「クジラ」という名前が付与され、現代においてもなおこれらのグループを区別して認識されているとしている。

この仮説が正しい場合、当時の日本人は体長を計測してこれらを呼び分けていたわけではないので、「成体の体長が4 m以下のものがイルカ」「クジラとイルカの違いは大きさのみ」といった解釈は正確ではない。またこの仮説においてシャチスナメリなど和名に「イルカ」も「クジラ」も含まれていない生物種については、どちらにも属さない独自の動物として認識されていたと考えられている。

以下に確認・分類されているイルカの名称をあげる。この中には身体全体が発見されていない種もいることから、将来的に新しい種が発見されたり、分類学上の基準が変わり、1つの種が複数の種に分かれたり、逆に複数の種が1つに統合されたりする可能性もある。

「イルカ」に厳密な定義はないが、ここでは和名に「イルカ」がある科(マクジラ科については亜科)に含まれる種を挙げる。これらは、通常「イルカ」と呼ばれる種に一致している。

これらの種は、スナメリを除き、和名に「イルカ」を含む。ただしこれらの他に、イッカク科のシロイルカ(ベルーガ)が和名にイルカがある他にマイルカ科のハナゴンドウにはマツバイルカという別名もあるが、これらの種はクジラに含められることが多い。

マイルカ上科

マイルカ科 ? 海棲。イルカ以外に、通常「クジラ」とされるゴンドウクジラ類とシャチを含む。

マイルカ亜科

マイルカ属 - マイルカハセイルカ

ウスイロイルカ属 - アフリカウスイロイルカシナウスイロイルカウスイロイルカ

ハンドウイルカ属 - ハンドウイルカ(バンドウイルカ) 、ミナミハンドウイルカ

スジイルカ属 - マダライルカタイセイヨウマダライルカ(カスリイルカ)、ハシナガイルカクライメンイルカスジイルカ

サラワクイルカ属 - サラワクイルカ


シワハイルカ亜科


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